Antipyretic

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ゴア・スクリーミング・ショウ

http://www.cyc-soft.com/b-cyc-pro/gss/gss_Frame.htm

うーんなんか中途半端。ワクワクしたのはゴアの言動を新鮮に楽しめた序盤だけで、それ以降は闇子ルートまで低空飛行、紫ルートで失速。終盤はプレイがやや苦痛だった。ゴアや石など語られないままの謎もいくつかあるし、紫の言動や動機に説得力がなく物語の屋台骨が頼りない印象を受けたのが響いた。ゴアもそこまで必要な存在だったかと言われると疑問が……。グロシーンも強引に入れてるな、と感じた。

信号機ルートは紫やゴアの正体など肝心なところは伏せられたまま終わるが、伏せられたままでも楽しめた。三人はそれぞれ暗い内面を抱えているけどそれは人間なら誰もが持ってたり感じたりしたことのあるもので、でもまだ幼い少女たちの中では割り切れず厄介なものになっていて持て余している。ゴアがそれを人形劇で再現することで指摘して、ヒロインたちを弄んで行くのはなかなかに悪趣味で結構面白かった。ただ闇子ルートはともかく、一番重要な紫ルートで恭司と紫の気持ちの変化の描写が雑なまま進んでいくのがどうにも……。BAD ED に気合が入っているのは嬉しいけど、内容がわざわざ猟奇的展開にする必要を感じないグロシーンばっかだったのも気になった。

文章は読みやすいけど肝心のシナリオにパワーがない。絵は独特だけど好きな絵柄で、特に希衣佳が可愛かった。ちなみにフィルタは一切なしでプレイしたけど、グロシーンはモザイクが活躍してくれるのでさほどグロくもない。テキストでは結構緻密に書かれてるんだけど、グロは視覚情報に依るところが大きいんだなということを実感した。音楽は OP「Distorted Pain」が良かった。一気に引き込まれた。デンカレはいいっすね。

システムは Vista 対応版だからか基本的なものは揃ってて過不足なし。面白かったのは正解選択肢を選んだ時に選択肢の上に出現するハートマーク。オトメイトの愛キャッチのようなものなんだけど、えぐい内容なのにそこだけ可愛い演出だったので笑った。

というわけであまり楽しめずに終了。この作者は『神学校』が面白かったし評判もいいので期待してたんだけど期待しすぎたらしい。「つまらない」と一言で切り捨てるほどでもないんだけど、がっかりさせられたところが大きかったし多かった。

仁野恭司

無駄に熱くキレやすく煽り耐性も低く、悪い意味で子供っぽさが目立つ。こういうタイプは苦手。「子供」として描かれているので仕方ないんだけど、終盤まで成長を感じられなかったのも好きになれない要因になっている。紫ルートは特に感情移入出来なかった。最初は紫にキツい態度を取っていたのに、一度紫を許してからはセックスでグズグズになって紫のことだけを考えるようになり、周囲に迷惑をかけるからイライラさせられた。

一柳あかね (CV:木村あやか)

あかねは幼馴染みキャラだけど、周囲の人間によるいじめの一環で恭司に強姦されそうになった過去があり、簡単にはくっつかないんだろうと思いきやあっさりくっつく。これは描写が雑というよりも王道的展開を交えつつテンポ良く進んだからで、悪くはなくむしろ楽しんだ。よく考えたら貞島さんが結果的に二人の恋のキューピッドの役割を果たしたともいえるのが泣ける。ただそれ以降は微妙なシナリオになっていく。

強姦未遂事件は二人が恋人になったのであればそのうちわだかまりも解けるだろうし、紫とゴアが言及したあかねの「優越感を得るためのお節介」も普通の人なら持っていてもおかしくはない感情で、掘り下げも葵ルートのほうで行われている。じゃああかねルート後半は何を描写しているのかというとセックスばっか。あかねの肉体に憑依した紫が恭司を誘惑して延々やっているだけ。なのにやたら長いので虚ろな目で強制スキップした。ここらへんの紫が取り憑いてからの展開はもーちょい削って欲しかったなあ。

結末はあかねが触手に体を引き裂かれる「誤った判断」ED が一番印象に残ったかな、という程度。「春は来る」ED は普通のハッピーエンドだし(でも最後のエロシーンでトランクスを穿いた生足を曝け出すあかねは可愛いなあと思った)、「黒い幸福」ED は恭司が不甲斐ないしエロの多さに辟易していたのでどうでもいい。

双木葵 (CV:柴田蕗)

一見仲のいい友達に見えるけど、可哀想な子に構うことで優越感に浸るあかねとそんなあかねに気づいていて内心では鬱陶しく思っている葵のドロドロした関係が面白かった。私としては優越感に浸ってようがなんだろうが葵があかねに助けられたところはあるだろうしそれでいいんじゃないかと思うんだけど、あかねのそうした暗い喜びに気付いてしまうと鬱陶しく思う気持ちも理解できる。特に葵のような人間には我慢がならないんだろう。そして葵のあかねを疎ましく思う気持ちが、あかねの自業自得もあるとはいえあかねに危機をもたらすことになる。つまり貞島にレイプされそうになる件なんだけど、葵ルートはあかねの優越感と葵の劣等感が連動して取り返しのつかない展開に向かっていくのが自然で面白い。ただ二人の歪んだ友情は、あかねがここで舞台から一旦退場することで脇に追いやられてしまうのが勿体ない。紫やゴアよりこっちを掘り下げて欲しかった。

その後はエプロンドレスを着せられて悦に入った葵が恭司に迫って人の家でセックスしたり、ゴアに自分の後ろ暗いところを指摘された葵が自己嫌悪から『鏡の国のアリス』をなぞるように鏡の向こうに逃げたりと色々あるんだけど、特に葵が消えてうろたえる恭司の周囲で紫とゴアが手を繋いでぐるぐる回るシーンが悪趣味でとてもいい。その後はやっぱり由規が助けてくれるんだけど、ギターを教えてもらう約束をしたところで「なんてあからさまな死亡フラグなんだ」と感心した直後に由規が死んで吹いた。こんなに早い死亡フラグ回収は初めて見た。一分もかからなかった。まるでシュールギャグのようだった。

「逃避からの帰還」ED は恭司と葵が二人で紫を刺して罪を互いに背負っていく結末で、罪が二人を引き離すことがなくなったとも言えるのが暗い永遠を感じさせて好み。一方あかねとは殴り合ったことで本当の友達になれるかも、というありがちではあるけど無難なところに着地していて良かったんじゃないでしょーか。「鏡の国の葵」ED はあっちの世界にいった葵が貞島さんに輪姦され、四方から迫ってきた鏡に潰されて圧死。ちなみにこの光景を紫とゴアが眺めているが、自分が嫌いで消えたいと思っているのは紫も葵と同じなので、紫にとっては何かしら思うところのある結末だったんじゃないかなあ。「ラストコール」ED はドリルを尻から突っ込まれてそのまま引き裂かれる結末で、強烈ではあるけど『フラテルニテ』を経たせいか案外平気だった。

深園希衣佳 (CV:風音)

希衣佳はとにかくビジュアルがツボだったので、シナリオはどうということもないけど希衣佳の可愛さだけでプレイモチベーションが保たれていた。可愛いは正義。

希衣佳の自分の性へのコンプレックス問題は母親の教育に原因があることがはっきりしているが、その母親をどうこうするのではなく闇子が希衣佳に正しい性知識を教えることで解決。ただ紫とゴアが悪戯に煽るから、希衣佳がクラスメイトの前でも自慰に耽ってしまう羽目になるのが見ていて少し可哀想だった。早由海と似てるというだけで紫の憎悪も他の二人に比べると強く、えぐい死に方をする結末も多い。なんつー理不尽。でも「復讐者のレクイエム」ED は面白い結末だった。尻にホースを突っ込まれて脱糞し、そのまま体内に水を注がれて破裂した希衣佳の死に方はえぐいけど、だからこそ紫への復讐を誓ってそれだけのために生きていく恭司の姿には説得力もあるし、由規の生き方をそっくりそのまま踏襲しているのが何ともいえず仄暗い余韻が味わえた。更に希衣佳が早由海と同じ死に方をしていたらしいところも悪趣味でいい。他には浣腸によるスカトロを描きたかったらしい「悪夢の果て」ED もあったけど、こちらはあまり印象に残らない結末。「海の向こう」ED は最後の CG の希衣佳が可愛かったな、とだけ。

ところで希衣佳ルートは希衣佳の自慰を含めてエロシーンがやたら多いんだけど、その中でも目を引いた文章があった。

淫乱とか、そういうのではなく、恋人同士であれば、Hなのは変なことじゃないだろう。

まったくだ。セックスですぐ「淫乱」とか言いたがる攻め役は全員この言葉を胸に刻んでください。まあ希衣佳は本当に素質があるっぽいけども。

それと森で雨宿り中、希衣佳のすぐそばにいた紫に恭司が気付く瞬間はゾッとした。本作でホラーと言えるのはあのシーンだけじゃないかなあ。

さいたま闇子 (CV:北都南)

まさかの重要人物で驚いた。闇子ルートは信号機の三人をクリアしてからプレイすることになるせいか、これまでの序盤の内容がダイジェストで描かれるので展開が早い早い。同じ内容をまた読まされても苦痛なんでそこはありがたかったけど、由規にツンツンしていた恭司が由規のギター演奏一回で懐いたのは吹いた。爆速にもほどがある。

由規はさておき闇子ルートは中盤以降もサクサク進んだ印象があって、それは闇子さんを「大人」として描いているからだろう。紫のしたことに対して闇子が叱る場面があり、虐めに加担した本人が言うなという気持ちも抱かないではなかったし実際紫も言うが、それでも正論には変わりない。悪いことをした子供を叱るのは大人の義務だから、闇子さんが紫を叱るのは当然。それに紫に叱ることが出来る大人はもう闇子しかいない。由規は紫に妻を殺されて復讐しか考えてないし、紫の両親も死んでるんだから。闇子は過去の虐めについて紫に謝罪したし、そうした上で大人としての義務を果たした。貞島さんも闇子さんに叱られてしおらしくなる場面があったし、やっぱり闇子さんは「叱る大人」の役割なんだなこのルートでは。この作品はまだ子供の恭司や信号機の三人と子供のままでいるしかなかった紫に対し、闇子や由規のような大人の存在も毎回絡めてくるので「子供と大人」がテーマの一つになっているんだろう。とはいえ罪を軽く見ている印象も受けるし、闇子が叱るのはいいとしても紫の中の憎悪はもっと根が深いように見えたのにすぐ浄化されたのでそこは納得がいっていない。もうちょっとじっくり描いて欲しかった。

ちなみに恭司は何もしなかった。闇子さん無双。このルートを読むと石を上手く使って紫の屋敷に近づきさえしなけりゃどのルートでも平和でいられたのでは、という気がする。

音無紫 (CV:みる)

井戸の底に閉じ込める虐めは確かに酷いんだけど、紫が世界を憎むようになる動機としては弱い。自分を閉じ込めた桃音たちを紫が憎むのは理解出来るけど、世界を憎むようなスケールの大きな話になると大袈裟に感じて来る。暗闇の中に一人で閉じ込められてその中には虫も大量にいるし当時の紫には知識がなかった初潮も始まるし、更に変な石が自分の体に入り込んだんだから紫の恐怖を想像することは出来なくもないけど、何日も閉じ込められたわけでもなく数時間で助け出されたっぽい(ここは明確な描写がなかったけどそういう印象を受けた)のでピンと来ない。もしかしたら井戸から助け出されて成長の止まった紫を家族が真白の時のように幽閉し、家族からの愛を与えられなくなった紫が絶望していった、とかならまだわからなくもないんだけど、そこが一切描写されないから井戸の件だけで紫が世界を憎んでしまったように見える。

紫が一度会っただけの恭司に執着するのは自分とゴアを肯定してくれた唯一の存在だからなんだろうけど、恭司が紫に惹かれて行くのはよくわからなかった。紫とセックスを延々繰り返して性に溺れただけにしか見えない。そして紫が後半には自分が犯した罪の重さを自覚するようになった経緯がちゃんと描かれていないのが最大の不満。そこが一番重要なんじゃないのか。このままでは紫があっさり改心したようにしか見えない。全体的に駆け足で進むので、メインヒロインの紫ルートが一番面白くなかったのは残念。由規があっさり紫を見逃すのも萎えた。それまでに何度も語られた凄まじい復讐心は何だったんだ。多数の人間を食い殺させた紫の罪についての言及が軽いのも不満。

一方、恭司がゴアと同化する「閉ざされた世界」ED は面白かった。大量の人間を犠牲にしたまま二人だけの世界でラブラブな触手エロを楽しんでハッピーエンド。

紫のことで印象的だったのはあかねルートのゴアの授業での回答。

「この世の50.78%は怒りで出来ています。残りの44.2%は憎しみで出来ていて、さらにその残り4.493%は糞尿です」

「そしてさらに、0.246%が反吐、0.182%が空腹で出来ています」

クリアした今ならこの台詞は紫そのものだとわかる。

ゴア・スクリーミング・ショウ (CV:黒木大)

最初にプレイしたあかねルート中盤までは登場シーンのインパクトも相俟ってゴアが出てくるたびにワクワク出来たが、ゴアのキャラクタに慣れてからは喋り方が独特なだけだと気付いて拍子抜けした部分が大きかった。人形劇にしろ数々の BAD ED の仕打ちにしろ、とにかくグロく演出するためだけのキャラにしか思えず出落ち感が否めなかったし、そもそもグロシーンを無理に入れているように感じるので、それに連動してゴアの存在も少し強引に感じてしまう。あとぶっちゃけあまり役に立ってないよーな? 未熟な紫の忠実な人形だからゴアも上手く立ち回れないんだろうけど、タイトルになるくらいの存在なんだからもうちょっと派手な動きが欲しかったなあ。

ただ、葵ルートで石を持つ恭司と葵を食べろと紫に命令されて一瞬渋り、それでも結局紫のために襲いかかる場面はぐっと来た。

ところで序盤に女の子を食べたのは何か理由があったのか。恭司が帰ってくるちょっと前から行方不明者が出ていたのはゴアの仕業なんだろうけど、紫の時間が止まってから事件が起きるまでゴアは何もしなかったのか。それなら何故あのタイミングで殺害に及んだのか。井戸の事件からもう結構な時間が経っているのに。わからん。

牧真太 (CV:芦久比剥巳)

紫ルートでゴアに殺されかけて恐怖し、恭司と距離を取ろうとする場面が一番印象に残ったというか見せ場はそこしかないんだけど、普段はエロゲにありがちなよくいる親友キャラをやっているだけに真太の気持ちがよくわかって遣る瀬無かった。

貞島富巳哉 (CV:赤紫青)

思ったより出番が少なかったのは残念だったけど、なんだかんだで作中で一番の萌えキャラだった。公式のキャラクタ紹介でも見られるこっちを指さしてる立ち絵ポーズとか味わい深くて最高ですよもう。恭司と穴兄弟になったことで嫌そうな顔をしたり海にまでわざわざやってきて恭司の嫌がることをしたり、あかねを数人の手下たちとレイプするぞーという時に股間を蹴られて情けなく悶えている最中に逃げられたり、とにかくゲスなのにどこか間抜けな空気が漂う貞島さん超萌ええぇぇえー。

八瀬由規 (CV:黒木大)

由規は徹底して「選択を誤った恭司の未来の姿」として描かれており、つまり「かつての主人公だった男」なので恭司との対比もあって面白かった。そしてかつての主人公だったからこそ由規が主人公以上に活躍するのも当然だし、主人公ではなくなってしまったからこそほとんどのルートで途中退場するのもわかる。しかし由規の復讐が成る展開が「時果てる夢」 ED だけっぽいのが何かを象徴しているようで切ない。

印象的だったのはやっぱり似合わないエプロンを身につけて登場するシーン。サイズが明らかに合ってなかったけど、もしかしてお子様用のエプロンだったんじゃないのか。何気に闇子の着ているシャツとロゴがお揃いなのも笑った。

音無桃音 (CV:青柳うみ)

なんでああいう外見になったのかはとうとう語られなかったなあ。本人の精神的疲弊も影響してるんだろうけど、やっぱり紫とゴアが何かしたん?

九重真白 (CV:夕城粧子)

「眞なる皇国への扉」ED は蛇足としか思えず……いや真白とのエロシーンよりむしろ信号機ズとの乱交がメインなのか。それよりもゴアや石、光の柱、儀式などの説明が入るんだろう思っていたので、簡易儀式で終わってしまったのが不満。というかそもそもの元凶は儀式にあるっぽいのに儀式の説明が断片しか与えられないのではちょっと……。