野々村病院の人々
http://www.dmm.co.jp/dc/pcgame/elf/nonomura_html/=/ch_navi=/
ミステリにカテゴライズされてるっぽいけど、私はサスペンスとして楽しんだ。事件は単純明快で真相に到達するのも難しくないが、病院独特の異様な雰囲気の中、幾重にも重なった色んな人間の思惑が次々と暴かれていくのが面白い。怪しい登場人物の反応や伏線を上手く配置して盛り上げつつ、型破りな主人公の言動でふっと力を抜いて笑えるシーンも差し込まれるので程よいテンションを維持したままプレイ出来た。
文章も読みやすく絵は安定感があり、特にエルフ塗りは今見ても美しい。気合いの入った尻のアップ絵が出てくると「あーエルフのゲームやってんなあ」と実感させられる。パンチラも多い。エロシーンでは絵が動くが、これがまたいやらしい。動きはチープだけどいやらしく見せる動き方のツボはきちんと抑えてある。琢磨呂と加奈がぶつかってもつれ合うようにして転び、加奈の股間に琢磨呂が顔を突っ込ませるというお馴染みの展開があるんだけど、琢磨呂が息をしようと口をモガモガ動かすのがエロかった。
シナリオは短いけど選択肢は多い。私は最初から攻略を見ながらプレイしたけど、それでもフローチャートの複雑さは伺えてこういうシビアなところはいかにも古い作品だなあと実感。ちなみに BAD ED に到達してもキャラクタが親切にもヒントを教えてくれる仕様。ただ残念なのは分岐がかなり複雑なのに、シナリオは一本道といっていい構成になっている点。ルートが分かれても違いはあまりなく、攻略できるヒロインは三人いるものの個別ルートと呼べるようなものもなく、各ヒロインとの ED すら展開や会話をコピペしたかのよーな有様で達成感はない。まーでもミステリは整合性が破綻してしまうとお話にならないし、ルートの扱いはこれでいいのかなという気も。ただ ED はもーちょい頑張ってほしかった。せっかく三人ともステレオタイプながらも個性的な子なのに、その個性が活かされないのではもったいなく感じる。でも昔のゲームってこんなもんかな。しかし彼氏持ちだったり元彼がいたという設定の女の子が多かったのは面白かった。
今までプレイして来た ADV の中で一番古い作品になるんだろうけど、古典だろうと名作はいつプレイしても面白いのだと実感した。他の蛭田作品も機会があればやるかなー。
海原琢磨呂
強烈な個性を持っているし好きなキャラクタではあるが、ツボにはハマらなかった。絵が一切用意されてないからかも。せいぜいシルエットくらいだもんなあ。
牧野梨恵 (CV:非公開)
真面目で優しいが、最初の印象は「口の軽いナース」。初対面の患者に自分から事件のことを話してくれるので驚いた。そのくせ途中で気付いて「院長夫人に口止めされてるのでこれ以上は言えない」とか言い出すから思わず笑ってしまった。でもそういうところも含めて可愛いと思えるし、ヒロインの中では一番好きかもしれない。野々村病院の医療ミスで両親が死んだ可能性があり、双子で色々調べているのでどこか影があるが、それ以外は普通の女の子なので普段ならスルーするけど梨恵は結構好きだなあ。単にビジュアルが好きだから、というだけかもしれないけど。色仕掛けは突然で驚いた。
野際美保 (CV:非公開)
言葉遣いが乱暴で不良っぽいけど、実は子供が大好きな優しいヒロイン。ってなんか懐かしいタイプのヒロインだ。この子は素で雨の中の子犬を拾って帰るんだろう。今じゃさっぱり見ないタイプだ。日野との過去から察するに一途なところがあるのも可愛い。
伊藤涼子 (CV:非公開)
発売当時の時代の空気を漂わせる格好をしているのが印象的。琢磨呂が野々村病院に入院するきっかけを作ったりその後病院で再会したり、ライバル同士いがみ合ったり探偵としての誇りを示す琢磨呂に惹かれていったり最後には手を組んで相棒みたいな存在になったりと、何気にメインヒロインになれそーな要素は大量に詰め込んである。数年前の私なら涼子が一番好きなヒロインになっていた気がする。
間宮千里 (CV:非公開)
自分に後がないとわかると軽く錯乱して縋ってきたり、桃子のことで質問すれば焦ったりと千里は結構わかりやすかった。というかそんなにタフな子でもないんだろう。黒幕ではあるけど特に優れた頭脳を持っているわけでもなく、本当は普通の若い女性なんじゃないか。しかし動機はちょっと浅い。確かに院長夫人のやってることは酷いが、少なくても作中で語られた内容だけでは千里の殺意は真に迫ってこない。まあそこは心理描写を密にするタイプの作品じゃなかったからだろうと納得できなくもないが、浅い動機で何も知らない桃子を殺人に巻き込んだのがタチが悪い。最後には自首して自分がすべてやったことだと自供して桃子を庇うが、桃子は知らなかったとはいえ自分が何をしてしまったのかを理解しており、だからこそ琢磨呂に「王子様からの手紙」を送ったわけで、だとすると桃子は償う機会すら与えられなかった殺人罪にこれから一生苛まれるんじゃないか。
樹桃子 (CV:非公開)
不憫すぎる。院長から性的虐待が習慣化しており、その辛い習慣と王子様の存在に憧れる気持ちを利用され、何も知らされないまま殺人に関与させられてしまったんだから。指示したのは千里だし注射を打ったのも院長本人だが、だからといって自分に罪がないとは桃子も思えないだろう。
ところで琢磨呂がやけに桃子を気にしているので、この二人の間には運命的な何かがあるのかと最初は思っていた。実際桃子は琢磨呂に淡い恋を抱いていた気配はあるけど、もーちょい年齢が上なら琢磨呂と恋人関係になれる未来もあったんじゃないかな。
島木加奈 (CV:非公開)
この子にまで彼氏がいるとは思わなかった。いい子だし可愛いんだけど、いなくても問題ないよーな……ああでも「学校の友達に明かせない秘密を抱えている」という桃子の葛藤を表現するためには必要なのか。納得。
野々村作治 (CV:非公開)
第一印象通りの変態院長。言葉で一言祝ってくれるだけとはいえ、フルコンプの御褒美担当が彼だったことに一番驚いた。というか吹いた。
野々村亜希子 (CV:非公開)
本作が面白くなったのは亜希子の存在が大きい。院長を殺そうとしていたし日野の件や看護婦を弄ぶ件など真っ黒な面がありつつも、院長を殺害したのは亜希子ではないから、如何にも怪しいのに決定的な証拠がないという状況が生まれて良いスパイスになっていた。しかし千里が院長は二十代後半に見えるとか言ってたけどそう……か？
藤木栄作 (CV:非公開)
「美しい悪女」という幻想を亜希子に見出して愛し、仕える男。だからその幻想が崩れ去ろうとすると自分の手で殺してしまう。琢磨呂も言ってたけどそれは身勝手な愛でしかなく、千里が殺人を犯したと知っても一途に彼女の元に通い続ける譲治とは対照的。
西条貴文 (CV:非公開)
主人公探偵が真実に到達した瞬間に、ライバルのダメ探偵が「犯人がわかったから俺が推理を披露してやろう！」と言い出す展開になるのはもうお約束。彼は嫌な男ではあるが、キャラクタがはっきりしているしそんなに嫌いでもなかった。むしろ可愛い。
御子柴太郎 (CV:非公開)
堂々と家賃を払わない姿勢を見せる琢磨呂は論外だが、御子柴も妻子を持つ身で美保にアプローチをかけているのがアレ。しかも単純に「とにかく美保とヤりたい」という気持ちが強いよーでそこはまあなんというかエロゲだなあと。
川崎勉造 (CV:非公開)
探偵には警察か記者の知り合いが必要不可欠になるが、勉造がまさにそれ。特に今作は琢磨呂が怪我をしていて病院の外には出られないので、フットワークの軽い勉造の存在が貴重。終盤、彼が警察を呼んでくれなきゃゲームオーバーだしな。
漆原譲治 (CV:非公開)
琢磨呂との軽快なやり取りが楽しかった。事件の関係者ではないけど、地味に出番があるせいか妙に印象に残る。ED 後の千里がどうなるのかはわからないけれど、彼はそれでも一途に千里を思い続けるんだろうなあ。いい男ですよ。
