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スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園

http://www.danganronpa.com/2/

『ロンパ』続編。一見すると設定や世界観を引き継いだだけのキャラクタが変わった新規作品に見えるが、本当に「続編」だった。で、感想を述べるなら、完成度としては前作より劣っているものの前作より気に入ったところもあった――というか狛枝凪斗というキャラクタの存在だけでクオリティにしろ好みにしろ一点突破してくれたので、どちらかを選ぶならこっちかなあ。なんだかんだで好きな作品にはなった。

前作との違いを挙げると、まずは議論によって犯人や犯行経緯が明らかになって行く点。前作では開廷前に犯人もトリックも読めてしまうものが多かったのに対し、本作ではそれらがはっきりしないまま裁判に雪崩れ込むことが多く、だからこそみんなとの議論を経て真相に到達していく感覚を味わえた。更に今回は反論と同意が出来るようになったために丁々発止な論争の臨場感も高まった……が、反論に関しては一長一短で、特に反論ショーダウンは面倒だなと言う印象が勝った。斬るのはいいけど適切なコトノハをリロードする余裕がもうちょい欲しかった。一方でロジカルダイブはウルトラ楽しかった。ノーマルでプレイしたけど、私には最終章のロジカルダイブくらいの難度がちょうど良かったらしく夢中になった。前作から引き続き採用されている閃きアナグラム(改)とパニックトークアクションは若干変わってはいるものの、面倒になっただけのよーな? それと舞台が南国の無人島になったことで開放感のある空気が漂っており、フィールドも広いし行ける場所だって徐々に増えていくのだけど、事件の舞台となるスポットは限られているので返って狭い印象を受けた。ドッキリハウスなんて窮屈でしんどかったもんなあ。それとオシオキも何故かヌルくなってて物足りなかった。『ダンガンロンパ』という作品の持ち味である徹底した露悪趣味をマイルドにさせちゃったのは何なんだ……。ラスボスへのオシオキもないのが残念。これならつまらないと感じた前作のオシオキのほうが面白かった。電子ペットは触っていない。なのでマップ移動も楽だった。

肝心のシナリオは、才能主義の欠点への言及、希望と絶望から過去と未来に繋がっていくテーマは好きだったし響くものもあったけど、CHAPTER.5 以外はそれほど私の中では盛り上がらなかった。が、CHAPTER.5 が素晴らしかった。何から何までが秀逸な出来で、隠された真意に気付いた時は比喩でなく震えたなあ。この章と狛枝の存在だけで、私は前作より今作のほうが好きだと言えてしまう。それ以外のシナリオの不満点については、まず殺す動機が強引と言うかモノクマの介入が雑な点。モノクマに「支配する者」としての愉悦を感じられない。じわじわと日向たちを追い詰めていくのではなく、お膳立てをしておいたからさっさと殺し合っとけよ、と言わんばかりに動機を押し付けていく。これには最終章で理由が語られるんだけど、理由を知っても萎えた。下ネタも前作に比べて生々しさがパワーアップしていて鬱陶しく感じる時もあるが、これは『ダンガンロンパ』になくてはならないものだとも思うのでまあ許容範囲内かな。パロネタも同様に。

シナリオにおける最大の不満点は、一番盛り上がるべき最終章がつまらなかった点。ただでさえ目がチカチカする場所を探索させられてうんざりするし、真相を勝手に延々と説明されるだけなのでダレた。CHAPTER.5 が凄まじすぎて余計に直後の最終章がしょっぱく感じられるし、黒幕の正体もやはり狛枝に色んな意味で迫力負けしている。江ノ島は好きなキャラなんだけど、この最終章の演出や設定はちょっとな……。それと最終章まで生き残れたメンツに、前作の霧切さんや十神のような魅力的なキャラクタがいないのも痛い。CHAPTER.5 で魅力的なキャラクタの双璧が二人とも退場してしまったからなあ……。雑魚雑魚言われてたけど、それも強くは否定できないのが何とも言えず。

とにかくキャラクタに関しては、最初に書いたように狛枝無双だった。トリックスターでありジョーカーでもあるが、共感は難しくても狛枝の主張に納得は出来たし、狛枝の言動は最後まで一切ブレずに見事にぶっちぎってくれていてそれはもう清々しいほど。シナリオにおいても裁判においても、狛枝が日向のみならず読者である私をも引っ張ってくれていた。ただ狛枝にインパクトが一極集中していて、他のキャラクタの印象は薄い。というか今回のメンバーは「普通にいい子」が多く、あまり尖った部分がないんだよな。一見個性的なキャラクタが揃っているように見えて中身はけっこー薄い。前作のキャラクタはみんな結構ドロドロしている部分が描写されていたけど、今作ではそういうところがあまりないから「綺麗な子たちだなー」という印象を受ける。オシオキの際にも覚悟を決めていることが多いし、オシオキが物足りなくなったのはそうした影響もありそう。

おまけはやたらと充実していて、恋愛ゲーぽい要素を含んだアイテム作成 SLG「だんがんアイランド どきどき修学旅行で大パニック?」は通信簿を埋めやすくなったのでありがたかった。と言いつつ50日もやるのがしんどくて一周もクリアしてないけども。あれ面倒なんだよなあ……。モノミがモノケモノを倒していく ACT「魔法少女ラクル★モノミ」はちょっとしかやってないけど地味に面白い。成田良悟氏によるノベル「ダンガンロンパ IF 希望の脱出装置と絶望の残念無双」はむくろの残姉感がしっかり表現されていたし、前作の本編で活躍できなかったキャラクタがここぞとばかりに動き回っていたのも美味しい。モノクマの台詞や発言に違和感はあったが、それを除けば普通に面白かった。

色々書いたけど、とにかく「狛枝凪斗が素晴らしかった」の一言に尽きる。

日向創 (CV:高山みなみ)

名前がはじめちゃんで声がコナン、と名探偵キャラを何かと彷彿させるけど実は凡人だったらしい(手術でチートになっていたという過去はあるが)。下手に絶大な才能を持ってしまうと楽な生き方も出来ないんだろうな、てのは前作の江ノ島を見ていて感じていたので(今作では狛枝や超高校級の詐欺師がそこを表現するキャラクタになっているが)、日向が凡人として主人公に据えられるのも納得しちゃったな。でもなんだかんだで主人公補正はあるよね彼。特にコミュニケーション能力。狛枝も言ってたけど、狛枝みたいなウルトラ厄介な人物に自分から声をかけるあたりはやはり凡人とは言えないのかもしれない。CHAPTER.5 での「狛枝の持つ悪意への信頼」もコミュニケーション能力によって日向の中で培われたものなんだろうし、だとするとやっぱ凡人ではなさそーな……。

ところでカムクライズルの髪は鬱陶しくないんですか? 強制シャットダウン後の日向にカムクライズルとしての思想と能力がどれだけ残っているかも気になる。島に残留したことからも、修学旅行の時の記憶はある程度は残っているぽいけど。

狛枝凪斗 (CV:緒方恵美)

希望厨。希望に執着しており、より一層強い希望が見たいからみんな諦めないで! とか言い出すあたりは、それだけ切り取って見ると主人公に見えなくもない。実際には主人公には到底なれないタイプで、そこが徹底されていて良かった。読者が狛枝にどんな印象を持とうと、一切の容赦仮借なしに狛枝というキャラクタをあらゆる面で印象付けてくるほどに。狛枝は自分自身は大したことがない存在だと思っているらしいけど、彼はとても明晰で頭もそうだけど口も回転が速く、極端な才能によって出来上がってしまった確固たる価値観があり、常人のものはかけ離れた理念に則って行動する上に、その行動にも躊躇がないし実行も早く、また実行できるだけの能力も兼ね備えているとゆー。そして自分の価値観が歪んでいることも客観視できているのがまた厄介な……。

CHAPTER.5 はそんな狛枝のキャラクタと才能でなければ出来ない超絶技巧と言ってもいいトリックが見られるんだけど、これがもう芸術的で震えた。裏切り者の炙り出しを狙いつつ絶望に属する自分を含めた日向たちを粛清するための悪意だけで己を殺せるだけでもすごいのに、あの悪魔的なトリックを思い付く思考能力と実行に移せる行動力が並外れている。犯人にすら自覚のない殺人を引き起こすという学級裁判のルールの隙を突いているのも、彼が学級裁判と言うえげつないシステムを冷静に理解できてるからなんだろうな。ここまで命をかけた狂気と悪意の表現はなかなかお目にかかれないんじゃないか。そして日向が狛枝ならこの程度で済むはずがない、あいつの悪意はもっとおぞましいものであるはずだと狛枝を信じているからこそ真実に辿り着けるところも震えたし、狛枝もみんななら自分の真意に辿り着いてくれるはずだと信じて自殺しているところも震えた。この、ある種の絶大で歪んだ信頼を浮き彫りにして裁判が進んでいくのがたまらん。そして終盤には、希望の踏み台になることを躊躇いもしなかった狛枝が、本当は英雄になることを望んでいたことがわかった時はぐっと来た。彼は江ノ島ほど才能に壊されきることもなく、かといって才能を無視することも出来ない生き方をしてきたのか、と気づいてその壮絶さに絶句した。それでも自分の「ゴミみたいな才能」に縋るしかなかったんだなあ……。

幸運を持つキャラクタってのは苗木や狛枝に限らず別段珍しくもなく、特に主人公に多い設定でそういうキャラクタが出るたびに設定に頼り切る展開になることをいつも不安視してしまうんだけど、狛枝というキャラクタはそうした設定へのアンチテーゼも込められているのかな。そして強運設定だからこそなし得た残酷な物語に打ちひしがれた。

江ノ島とは真逆の考えではあるけどどこか似ていて、だからこそ狛枝は江ノ島に惹かれるところはあったのかな。彼が江ノ島の軍門に下ったとは考えにくいんだけど、狛枝が江ノ島に惹かれていた、という前提であれば納得出来た。余命云々は単なる嘘?

花村輝々 (CV:福山潤)

女子も男子もいけるマルチな変態シェフ……なんだけど、花村はファッション変態っぽいんだよなあ。変態であることが彼にとってのステイタスになっているからそう振る舞っているだけというか。変態担当(?)の割にはあまり印象に残ってないのもそのことが大きいと思うし、最初の犯人として呆気なく退場してしまうせいでもあるんだろうな。裁判で追い詰められた時の逆ギレ方言無双(これは中の人の演技も素晴らしい)はモノミによる通訳のテンポの良さも相俟って確かに面白くはあったけど、それよりも本性を露わにする狛枝のインパクトが大きすぎた。自分は大したことない人間だから希望の象徴であるみんなの礎になりたいと願う狛枝自身が、希望の象徴の一人であるはずの花村の存在感を完全に食らい潰していた。それと「変態」という表現に一番近いのは実は狛枝じゃないのかなあ。変態ってのは性的なものとは限らないのだし。

ところで彼は序盤に現実じゃないだとかリアリティがないだとか言って現実逃避していたけど、それが真実だったのはまた何とも言えないなあ。

小泉真昼 (CV:小林ゆう)

「ちょっと男子ー」とか言っちゃうような委員長系なんだけど、CHAPTER.1 の写真撮影でしか活躍らしい活躍がない。それでも監禁された狛枝を気遣ったり喧嘩しがちなみんなを諫めたり西園寺の世話をしたりと、さり気ないところでみんなの支えになれるところが可愛くて好きだったので、CHAPTER.2 でこの子が殺されてしまった時は悲しかった。

印象に残っているのは九頭龍に向けた台詞。

「他人の罪を裁くなんて…そんな権利なんて誰にもないんだよ!」

これは学級裁判を行っている自分を含むみんなや、モノクマに向けての言葉でもあったのかなと思うとちょっと刺さるものがある。彼女は無自覚で言ってそうだけども。

ちなみに「トワイライトシンドローム殺人事件」は心底からつまらなかった。これを動機に殺人事件を発生させるにしても弱くて拍子抜け。まあ実際発生してしまうんだけど、それも展開が強引。あの怪しいモノクマの作ったゲームを、写真だけで「実際に起きたことだ」と誰も覚えちゃいない事件を鵜呑みにしてしまうのもなんだかなあと。それと「砂利を水着に入れて凶器にした」なんて展開はちょっとどうかと思ったな。

九頭龍冬彦 (CV:岸尾だいすけ)

成長を一番感じさせたキャラクタであり、だからこその生存者でもあったのかな。ただ、ペコを失った後は特に活躍もなく、切腹くらいしか印象に残ってないあたりが……。でもそれは彼の性根が真っ当であることの証拠なのかも。

澪田唯吹 (CV:小清水亜美)

超高校級の『けいおん!』。ぶっ飛んだ言動やリアクションやセンスを眺めているのが楽しかったので、澪田が殺されてからは一気に寂しくなった。バリエーション豊かな朝の挨拶とか地味に楽しみにしてたんだけどなあ……。殺された動機も不運としか言いようがないし、モノクマの与えたよくわからない絶望病とやらで正気を失わされた状態で回復することもないまま退場してしまったのが悲しい。呆気なかった。それにしても病院の廊下に突っ立ってる澪田の姿はちょっとしたホラーだ。背筋が凍った。

七海千秋 (CV:花澤香菜)

NPC 設定はさすがに予想出来なかった……裏切者かなとは思ってたけども。CHAPTER.5 はヒロインだから死なないだろうと思っていた七海どころか狛枝をも失い、優秀な二人が一気に退場したことで絶望しか見えなかった。日向たちが今後を乗り越えられるのか、という不安もあったけど、それ以上に私が魅力を見い出せていたキャラクタが主にこの二人だけだったので今後がつまらなくなるのでは、というモチベーションの維持という意味においても不安を通り越して絶望を感じていた。狛枝の話ばかりしてきたけど、狛枝とは違うポジションから捜査や裁判などで貢献してくれる心強い存在だった七海もかなり好きなキャラクタだった。外見も猫耳フードもはなざーさんの声も可愛すぎる。

AI が心を持つ展開はよくあるパターンだけど、それでも熱かったのは狛枝の無茶苦茶な自殺がまず凄かったからで、そのとてつもない幸運を持つ狛枝の狙いを崩したのは、七海が自分の意志で日向たちを助けたいと思ったという奇跡が起きたから、と考えると熱い。奇跡なんて書き方をすると安っぽくなるけど、それ以外に表しようがない。

ただ最終章の七海の説得はちょっと弱かったかな。というかここらへんは完全に江ノ島の言い分のほうに説得力を感じていて苦笑いしか出てこなかった。苗木は日向を説得できてないし、霧切さんも事実を述べるだけで有益な発言は特にしておらず、十神に至っては強制シャットダウンをしろと連呼するばかりだった。七海も綺麗事しか言ってないように思えていまひとつだったけど、まあこれだけ露悪的なダンガンロンパワールドで最後くらいは綺麗事が罷り通ったっていいじゃないか、ってことなのかねえ。

通信簿を埋めていくと父親の話をされるけど、クリアした今になってようやく把握した。父親は千尋かー。名前が千秋ってのも千尋に絡めてあるのかな。

弐大猫丸 (CV:安元洋貴)

花村も下ネタ担当だったけど弐大の下ネタは単純に下品で、それも執拗であまりいい印象はなかった。ロボになってしまった時はロボになってしまった切なさやそれでも生きていてくれた喜びよりも、ああもうこの人は死ぬのだな、というフラグにしか思えなくてあまり感動も出来なかった。そして実際にすぐ死ぬのがまた。CHAPTER.4 はメカ弐大の胸の正確な時計とか伏線が露骨すぎたのもマイナスになっている。終里との絡みが多かったけど、私は終里が好きではないせいもあって更に興味が持てなかった。悪い人ではない、というよりめちゃくちゃいい人なんだろうけども。

終里赤音 (CV:朴路美)

オレっ娘の時点で地雷。生存組なのに印象は薄い。モノクマに勝負を仕掛けるわ負けるわ弐大を失うわで、彼女の行動でいい方向に動いたことがなかった。弐大を失ってからは成長するのかと思いきやそれもなく、考えなしの短慮な言動が目立ったのが残念。通信簿を埋めれば印象も変わるのかもしれないけど、今のところ埋めようという気が起きない。

辺古山ペコ (CV:三石琴乃)

九頭龍との関係は最初は唐突に感じたけど、見返すと何気にこの二人は最初から絡んでるのな……。さり気ないものばかりだったのでまったく気付かなかった。

CHAPTER.2 ではクロだったけど、道具に徹していなければならないはずのペコが感情を持っていたからこそ起きてしまった悲劇で、でも九頭龍が求めているのは道具ではなく感情を持つ一人の人間としてのペコだったことをちゃんと伝えていれば回避できた事件でもあり、そこは皮肉が絡み合っているようで面白かった。キラキラちゃん云々は盛大に萎えたが、学級裁判の投票システムを利用したペコの誘導、坊ちゃんへの想い、坊ちゃんのペコへの想いは伝わって来た。オシオキは九頭龍を巻き込んでの処刑になったが、ペコが命を賭して九頭龍を守りきったのが彼女らしい最期だったなあと。あーあと裁判中の反論は何気に苦戦した。初めて苦戦したのはペコの反論だったかもしれない。

西園寺日寄子 (CV:三森すずこ)

乱暴な言葉遣いをする女の子は苦手だし、西園寺はそれが理不尽なレベルで酷いので最後まで好きになれなかった。ただ、九頭龍が小泉を殺そうとしていたのは事実だし、そんな彼を仲間がなあなあで許そうとしたのを反発する気持ちは理解できる。それでも小泉が死んでからは西園寺も西園寺なりに変わろうとしていたし、その最中に罪木の犯行現場に偶然居合わせてしまっただけで殺されてしまったのは可哀想だと思うけど、一人で帯が結べないって設定は正直どうかと思うなあ……。

ソニア・ネヴァーマインド (CV:荒川美穂)

クロだと思わせるような言動が多く、何度ソニアを疑ったのか。西園寺にライブハウスの鏡のことを教えたり、火事の時に消火弾の存在を口にしたり、水着ではなくウェットスーツで登場したりと、とにかくスタッフによる意地悪なミスリードが多かった。黒幕じゃないかと思ったこともあったなあ。黒幕じゃなくても腹黒い一面を見せてくるんじゃないかと予想もしていたんだけど、普通にいい人だったから驚いた。

左右田に対する態度は酷いところもあるけど、自国では王女であることを強いられているからせめて日本では普通の少女でいたいのに左右田が王女としてのソニアしか見てないからウザいんだろうな、てのはわからなくもない。仲間をひたすら信じたいソニアに対し、すぐ他人を疑ってかかる左右田の態度にもイライラしているのかもしれない。

左右田和一 (CV:細谷佳正)

前作の葉隠を思い出すが、左右田は幼稚で臆病なだけでまともだった。基本はツッコミ要員だけど、機械に強い点を活かした地味な活躍はある。ソニアが好きなのに冷たくあしらわれる左右田を気の毒に思うこともあったけど、最終的には M に目覚めたようなのでもうそれでいいのかもしれない。この子も下ネタ会話に加わることはあるけど、意外にも自分から下ネタを振ることは少なく、他人の下ネタに乗っかることが多かったような?

田中眼蛇夢 (CV:杉田智和)

破壊神暗黒四天王を愛でる眼蛇夢は可愛いし、最近増えてきた厨二系キャラクタも私自身が厨二ジャンルを好むこともあって微笑ましく眺めていられた。ただ、CHAPTER.4 はあまり楽しめなかった。まずメカ弐大の胸時計やモノクマアナウンス廃止の時点で露骨すぎたし、そもそも「誰かを殺さないと餓死に至る状況」をモノクマが作り上げたことが気に入らない。CHAPTER.3 の時も思ったけどちょっと介入が過ぎる。ドッキリハウスが厄介な仕組みになっており、建物の構造に話題が及ぶと会話内容を咀嚼するだけでも時間がかかったし、オクタゴンのスポット選択では何度めげそうになったか……。いちいち律儀に突っ込んでくれる七海がちょっと憎らしく思えたほど。けどあのギミック自体は面白かったし、それよりも気になったのは眼蛇夢が弐大殺害に至った動機。全員で諦めて餓死するくらいなら殺してでも生きる、という主張はわかる。しかしそれで眼蛇夢が仲間のために敢えてやってくれたんだ……みたいな空気が出来上がっていたのが耐えられなかった。眼蛇夢は自分が生きたいがために弐大を殺したのであって、みんなに生への執念を思い出させるといった崇高な理由はなかったんじゃないのか。彼は用意周到に殺人を計画し、自分の犯行を糊塗しようとしていたんだから。なのに眼蛇夢に感動するみんなが気持ち悪かった。最後まで足掻くことなく投票を受け入れていたのは格好良かったし、これなら「自分の信念と、自分のためだけに殺害に及んだ」キャラクタとして徹底して欲しかったな。

でも一番インパクトがあったのはやはりトリックスターの狛枝で、行き来できる場所が分断されてしまった(ように見えた)ことで一時的に狛枝を操作できるようになり、最初は舞い上がった。でも思ったよりはつまらなくて、彼は狛枝本人視点よりも狛枝以外の人物の視点から見ているほうがずっと面白いのだと、そう思っていたところのファイナルデッドルームでの脱出ゲームのロシアンルーレットで一気に引き込まれた。

超高校級の詐欺師 (CV:石田彰)

最初は十神のあまりの変貌ぶりに驚いたけど、結局は別人ですか。しかし演じているだけとはいえ十神になり切っていたんだから、この人は元々有能な人なんだろうな。無能な人が有能な人を真似ても有能でいられるとは限らないし、こういう状況にこそ人の真価が問われることを考えてもかなり出来た人だったんじゃないか。詐欺師とはいえ自分に対しても周囲に対しても誠実であろうとしていたし、まとまらないメンバーを纏め上げようとしてくれていたところは頼もしかった。今にして思えば、彼が最初の犠牲者になってしまったことが日向たちにとっても痛かったんだよなあ……。

罪木蜜柑 (CV:茅野愛衣)

一番好きな女子キャラクタは、と言われたら断然罪木。通信簿も早いうちに埋めたくらいには。見た目が好きだったし、最初はモヤモヤしたものが残った殺人の動機もクリアすると納得できるようになっているし、絶望側の人間に戻った罪木による江ノ島のためだけに捧げた殺人という形の愛が歪でツボ。あざといくらいのエロ無双、「許してください」と連呼する痛々しさ、超高校級の保健委員というポジションに収まっているのも「自分が保健委員だと病人という存在が無条件に自分を求めてくれるから」という危うい理由であるところ、学級裁判で追い詰められた時の豹変ぶり、どれも好きだなあ。気軽に好きだと言えないくらいに重い設定を持っている子だけど、それでも「可愛かった」と言うし「最高だった」と言っておく。しかし検死担当の罪木はいつか殺人を犯して誤魔化すだろうなと思っていたから、モノクマファイルで死因が書かれていないことに気づいた時点ですぐに犯人の正体に至ってしまったのは惜しかったな。もうちょっと「誰が犯人だかわからない状態」と「罪木が犯人だったという衝撃」を味わいたかった。しかしいつも飄々としているように見える狛枝に初めて精神的なダメージを与えることになるのが、まさか罪木だとは思わなかった。どちらも自分の存在価値を自分で見い出せてないからだろうけど。

CHAPTER.3 のトリックは面白かった。よくあるネタではあるけど、学級裁判で殺害までの流れをみんなとあーだこーだ言いながら真実に至っていくのはワクワクした。不満は絶望病の存在。罪木のキャラクタは好きだしトリック自体は面白かったけど、絶望病なんていうよくわからないお膳立てをしてまでして起こさせたコロシアイなんて見ていて楽しいのかモノクマは。私なら萎えるけどなあ。ここはモノクマが必死すぎる。

モノクマ (CV:大山のぶ代)

モノクマは相変わらずで正直書くことはあまりない。モノクマ劇場が今回やけに胸に響くことが多かったのと、モノミとコミカルなバトルを繰り広げていた印象が強い。

モノミ (CV:貴家堂子)

黒幕だろうと疑ってたら全然違った……。未来機関について触れることも出来ないので怪しく見える場面もあったけど、ふつーにいい人、っていうかウサギだった。作中はモノクマと漫才をしたりどつきあったりしていたイメージしかないけど、CHAPTER.5 での処刑前の台詞は良かった。日向を通して私の胸にも響いた。

「英雄になる必要なんてないんでちゅよ。無理に誰かに認められなくてもいいんだからね。そんなことで自分を責めたり他人を責めたり…そんで誰かに嫉妬したり…でもね…そうじゃないんでちゅ。他人に認められなくても、自分に胸を張れる自分になればいいんでちゅ! だって…自分自身こそが、自分の最大の応援者なんでちゅから! そうやって自分を好きになれば…その "愛" は一生自分を応援し続けてくれまちゅよ。らーぶ…らーぶ……」

モノミが言っていたように、本当に「先生らしい」台詞でぐっと来た。

苗木誠 (CV:緒方恵美)

同じ超高校級の幸運で中の人が一緒でも狛枝とはやっぱり全然違うもんだな、とは苗木の登場でしみじみ思った。まあ苗木は苗木で異常な精神の持ち主だとは思うけど。処分すべき絶望の子たちを改心させようと庇ったり、現実に戻れるかもわからないし罠だとわかりきっているのにプログラムに介入してきたりと、やっぱり彼は彼でヤバい。日向が凡人だから尚更苗木の恐ろしさがよくわかる。ただ、ラストの裁判ではあまり説得力のある言葉が見当たらなかったのは何なのか。江ノ島の言い分のほうが納得できるから笑った。

霧切響子 (CV:日笠陽子)

前作でほぼ無双状態だったせいか今回は大人しい。もはや人数を埋めるための要員と化していたけど、ラストシーンで見れるスーツ姿は格好良かった。

十神白夜 (CV:石田彰)

本物が現れた時は安堵。偽十神のほうがかっこいいんだけど、例えかませでもやはり本物の十神のほうが好きだな私は。人間、どこか抜けてるほうが魅力的に見えるものです。それに罠であることを承知の上でプログラムに介入してきたあたり、やはりなんだかんだで優しいよなあ。苗木を見捨てられないんだろう。しかし自分の偽物を見て彼が何を思ったかは気になる。そして腐川には相変わらず好かれているようで何より。

江ノ島盾子 (CV:豊口めぐみ)

私は江ノ島が大好きなので彼女と再会できたのは嬉しかった……が、今回のラスボスは別のキャラクタであって欲しかった。もしもの時のために自分のアルターエゴを残しておいた、というオチにはズコーてなったもんな。小物オーラが漂っていたのも泣ける。つーか狛枝が凄まじかった分、江ノ島がしょっぱく見えてしまった。CHAPTER.6 は完全に種明かしパートだったせいもあってつまらなかったところに、一番盛り上がるべきのラスボスの正体が巨大化した江ノ島アルターエゴだとわかった日にはもーアレ。しかし今回は全体的にクロの動機もオシオキもいい加減な印象を受けてそこも萎えていたんだけど、江ノ島にとって今回のコロシアイが未来機関のメンバーをおびき寄せるための餌でしかなかったからなのか、と最後になってようやく納得はしたけども。ていうかこの江ノ島は一度苗木に完敗したからか苗木に恋しちゃってないですか? そんな気がするんだけど。

戦刃むくろ (CV:豊口めぐみ)

if ノベルの主人公。妹がむくろを散々残念残念言ってたけど、確かにこれは残姉ちゃんと呼ばれるのも納得がいく。「残念な子」ってのは表現が難しいと思うんだけど、江ノ島姉妹のお姉ちゃんとして上手い具合に残念さが表現されていたのが良かった。あとこの物語だと前作では速攻で退場してしまった桑田に見せ場があったのもグッド。