Antipyretic

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絶対服従命令

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タイトルや公式から受ける印象とは違っていた。主人公たちがターゲットを鬼畜なプレイで落としていくのかと思いきやそーではなく、キアもルイーズもターゲットを屈服させたいとは思っているけど酷いことはしない。むしろ大事にする。ただ恋愛感情がそこにはないだけで。

じゃあ何を楽しむゲームなのかというと二人の魅力的な主人公のキャラクタ。例えターゲットに興味が持てなくても、主人公二人の言動を見ているだけで楽しい。二人とも相手を組み敷いてセックスすることしか考えてないが、そうした即物的な思考回路も好み。要するにこれは主人公に攻略されるターゲットとのやり取りを楽しむ作品ではなく、ターゲットを攻略していく主人公を眺めて楽しむ作品。だからこの作品の最終地点がキア×ルイーズ×キアだったことは、私には美味しいご褒美だった。依頼に応じてターゲットを攻略している時もドライに接しつつもなんだかんだで二人が互いを気遣うシーンが入っており、そのたびに萌えていたから尚更。ただ、肝心の主役二人がカップリングになる最後のシナリオはどちらもつまらなかった。期待していたから落胆も大きかった。それだけが本当に惜しい。

ターゲットに関してはオムニバス形式の短い物語を連続で見せられる仕様で、攻略対象が多いせいか一つ一つのエピソードは短いし心理描写は雑だし展開も早いものの、短いなりに楽しめるシナリオもあるしバラエティに富んでいるので飽きは来なかったなあ。好きになれた攻略対象や面白く読んだエピソードもちらほらあった。

ただ、最悪なのはキア or ルイーズ視点とターゲット視点が明確な区切りもなく混在し、選択肢もどちらかに固定されず、急な視点の切り替えを要求させられるテキスト。作者は自分のテキストを読み直して一度でもおかしいと思わなかったのか。正直、文章はお世辞にもいいとは言えない。せめて視点は固定して欲しかった。絵は由良氏が担当しているだけあって華やかなんだけど、立ち絵が全員一種類しかないのが寂しい。キャラクタ人数が多いし、その分フェイスウィンドウでは表情差分が何枚か用意されているが、せめてキアとルイーズの立ち絵差分はもーちょい欲しかった。それとキアの立ち絵が犬を抱えている絵で、場面にそぐわないことが多かったのもマイナス。

「攻め×攻め」が楽しめるゲームというコンセプトに期待していたら思っていたものとは違って困惑したが、最後までやってみると確かに「攻め×攻め」ではあった。ただ釈然としないのも確かでそこらへんはどうにも気になる。けどこうした不満はあれど、それらを凌駕するほどに萌えたし楽しかったのでもうそれで満足した。結局このゲームはキアとルイーズの話だから、魅力的な二人に萌えられた私には楽しめた作品になった。

キア・ウェルベーナ (CV:織田優成)

何をやらせても男前。受けでも男前。ルイーズとのコンビも抜群で、私好みの見ていて楽しいキャラクタだった。ぶっきらぼうでやんちゃなところもあるんだけど、頭はいいし優しいところもある。相手が強気であればあるほど屈服のさせ甲斐がある、と燃えるところもいい。でも受けだとギャグテイストになっちゃうのよな何故か。

キアの母親の身勝手さはともかく、秘密の依頼のキア×ルイーズ版は微妙な出来だった。キアの言動が唐突すぎるのとルイーズが完全に受けキャラと化しており、「攻め×攻め」を楽しむどころか「攻め×受け」になっていてせっかくの魅力的な主人公同士の絡みなのに旨味がなくなった。キアのバングルとルイーズのチョーカーがお揃いだったことが判明したり、キアが嫉妬のあまりルイーズを一瞬本気で殺そうとする場面があったりと美味しい箇所もあったけど、やっぱりシナリオを俯瞰すると微妙なのが惜しい。

キアとルイーズはどちらが攻めで受けでも構わないしむしろ攻め役の椅子取りゲームでお互いギラギラし合っているくらいがいいんだけど、安易に恋人関係にはならないで欲しいなあ、という勝手な希望がある。二人とも一番大事なのはお互いで愛し合っていることにも気づいているんだけど、恋愛とはまた違っていてそれでも大切で、だからセックスも簡単には出来ない関係であって欲しい。それだと最高に萌えたんだけどな。

ルイーズ・ハルトヴィック (CV:村上たつや)

財閥の御曹司らしく常に優雅な空気を纏っており、キアのルートでも裏からさりげなくサポートしているのがツボ。それをキアに看破されて白を切るところも可愛い。いいツンデレキャラだった。中の人のウィスパーボイスも絶品。

秘密の依頼のルイーズ×キアは具合の悪いルイーズを庇って輪姦されるキアが男前で、ルイーズが他の男を落とそうとしているのを見てキアが嫉妬のあまりルイーズを殺そうとするのは萌えたしルイーズに抱かれる時もキアが受け受けしくなかったのは良かったが、ここでもルイーズのキャラクタがブレているのが残念。キアルイだと「攻め×受け」のようだったけどこちらは「受け×攻め」っぽい。「受け×攻め」という組み合わせも好きだけど、あくまでもコンセプトは「攻め×攻め」なんだからルイーズの攻めらしさはなくさないで欲しかった。まーいざ書くとなると難しいんだろうな「攻め×攻め」は。

シルヴィオ・ヴェンゼル (CV:酒井勇)

すごい怪盗なのにそのすごさを感じさせるシーンがないしキアにもあっさり捕まるが、キアに抱かれた後でもキアへの態度が青年としては自然体だったのは良かった。あまり女々しい受けにならなかったというか、キアとのことは一時のトラブル程度にしか思っていない節があり(それでいてキアをきちんと信頼しているところもいい)、むしろキアよりもハンスの残した謎に専念しているせいもあったのかもしれない。ただその謎自体は特に面白いものでもなく、なのに二人が謎に対してあーだこーだと悩んだり推理したりするシーンはそれなりに入っているのでそこはダレた。別に本格的なミステリにしろというのではなく、むしろ私が言いたいのは逆で、謎はもうそのままでいいから二人にあっさり解決させてサクサク物語を進めて欲しかった。

シュラフ・アリー・イブラヒーム (CV:杉崎和哉)

俺様同士で互いに自分が攻め役だと信じて疑わないキアとアリーのやり取りを眺めるのは楽しかった。攻め×攻めというコンセプトには一応沿っている……んだけど、アリーが比較的あっさり諦めて受けになったのは残念。もうちょっとギリギリまで抵抗して欲しかったなあ。シナリオはターゲットが王族なだけあってスケールが大きく、終盤の派手な展開もキアらしくていいと思うが、これはアリーの国の問題なのに解決したのがキアだったのがどうにも。アリーが王家の血を引く者としての矜持を見せるシーンはいくつかあるが、肝心の場面ではキアに任せきりだったのがちょっとなあ……。キアが惹かれるほどの男なんだから、そこはきちんとアリー自身で自分の意志と強さを示して欲しかった。

ディルク・ヴァール (CV:安岡実)

普段はビジュランテのリーダをしっかり務めているディルクが、キアの強引なアプローチにうろたえる姿は可愛いと思ったんだけど、萌えにはあまり繋がらなかった。「俺の魂がぐちゃぐちゃになって、何もかも忘れちまうくらい、抱けよ」は誘い文句としても極上でぐっと来たけどそれくらいで、キアとディルクの絡みよりマルティン絡みのゴタゴタのほうにスポットが当てられていた。とはいえダウンタウンを守ろうとするビジュランテとマルティンの物語が面白いわけでもなく、私の中では盛り上がらなかった。

しかし A ルートでディルクが輪姦されるのは驚いた。さすがにマルティンには犯されないだろうと思ってたらしっかり犯されてしまったのが予想外。そこは他のルートのキアならもっと上手くやれただろうと思ったしターゲットを敵にみすみす奪われるような失態も起こさない印象があったので、このルートのキアは不自然に情けない男にされてしまったような気がする。一応キアの母親の過去が描写されたり依頼書を燃やす謎の人物が出てきたりと重要な伏線はいくつかあるんだけど、まーあんまし面白くないシナリオよなこれ。そんなことよりもキアのためにさり気なく暗躍しているルイーズに萌える。

あと細かいけど気になったのが後半になるとディルクの立ち絵が出て来なくなる点。出番はちゃんとあるのに何故かフェイスウィンドウだけになるんだよなあ……。おかげで一気に画面が味気ないものになった。普段はあまり意識しないが、例えたった一種類しかなかろーがなんだろーが立ち絵ってのは重要なのだな、と思い知らされた。

ティモ・ウィルクス (CV:紫原遥)

数々の人間を落として来たキアと高級男娼のティモのセックスでの攻防が見れるのかと思いきや、ティモがただの寂しがり屋の子供でしかなくエロシーンは特にどうということもなく話もあっという間に終了。一番印象に残らないシナリオだった。

イェンス・レヴィン (CV:北山幸二)

ラストのルイーズに全部持っていかれた。キアのために「玉蹴り」と馬鹿にしていたサッカーの試合のチケットを取ってくるとはなんつー可愛い相棒だ。イェンスは萌えないしシナリオも退屈で、すっかりクリック作業と化していたところの思わぬ萌えの襲来に狂喜乱舞した。A ランクの ED はイェンスじゃなくてルイーズのための ED だよなあ。

イェンスに関しては先述の通り萌えなかったし面白くもなかったが、粗チン粗チンと二人で連呼していたのは吹いた。あとはまーこれを突っ込むのは野暮かなとは思いつつも、女好きのイェンスのスキャンダルを防止するためにキアにセックスを依頼するのは本末転倒なのではあるまいか、と突っ込まずにはいられない。男同士の恋愛は女癖の悪さが露見するよりも大事になるよーな。まあ依頼者は軽くお灸を据えるつもりだったというか、まさか女好きのイェンスが男を相手に本気になるとは思ってなかったんだろーけども。

エドゥアルト・ウェルニッケ (CV:渡部猛)

意外にも萌えたし面白かった。展開が速すぎて描写が足りてないのは残念だが、過去に母親を奪われたことから神を嫌っているキアと、敬虔な信徒であることを強いられているエドゥアルトの組み合わせが良かった。神から優秀な信徒を奪いたい者と神から自分を奪って欲しい者、という構図が美味しい。二人のちょっとしたやり取りもベタながらも結構良くて、特にキアの「お前が神様しか目に入らないって言うんなら、今はそれでもいいさ。神だけ見ている間は、俺以外の奴に目移りされる心配もないからな」とか「いつか必ず俺は神からお前を奪ってみせる」あたりの台詞なんかはもう惚れる。二人が惹かれ合う展開は唐突だったが、エドゥアルトはそもそも一目惚れだったことが後になって発覚するし、キアのほうも神に縋りついてばかりでなかなか自分を選んでくれないエドゥアルトに焦れて意地になったと取れないこともないのでまあいいかなと。依頼人がエドゥアルトだったというオチも物語を上手く締めていて、何気に良質のエピソードだったなあと。

ロウレス・シュトライヒ (CV:一条和矢)

なかなか落ちてくれないターゲットに焦れて、いつも余裕のあるルイーズが必死になっているのが美味しい。知り合った時点でロウレスはすでに心も体も他人に奪われており、ルイーズの嫉妬が見れるというだけでもこのルートには価値があった。基本的に主役二人はターゲットに特別な感情を抱かずビジネスだと割り切っていて、でも狙う時は本気で相手を欲しているし生半可な気持ちで仕事をしているわけでもない。今回のルイーズのロウレスへの気持ちも、今まで色んな人間を落として来た者としてのプライドを刺激されて躍起になっている面もあるんだろう。でもロウレスの気高さやそれでいて快楽に弱いギャップに惹かれているのも本当で、恋愛感情はなくてもロウレスを本気で欲している。だからこそ結末は、そうしたルイーズの気持ちに気づいていながらもハルトヴィックの権力を利用するために体を明け渡すロウレスと、そんなロウレスに気づいていながらも利用されようとするルイーズが見られるランク B が一番好みだった。この展開ならルイーズがターゲットに本気になってしまう構図のほうが美味しいんだろうが、私としてはルイーズにはターゲットを本気で欲することはあっても本気の恋だけはしない、という線引きはしていて欲しいという我侭な希望があるんだよなあ。それはキアも同様に。ちなみにこの結末だと婚約者、ミヒャルト、ルイーズと三人の人間を利用したことになり、増していく罪悪感に苛まれるだろうロウレスを思うと更に萌える。逆にランク A の結末は印象に残っていない。

ジョレス・バルスコワ (CV:森田昌之)

この作品の登場人物が自分で「私が攻めだ」とか「私は受けはしない」とか言ったりすることに、最初は違和感があった。もともと「攻め」や「受け」といった言葉は物語を俯瞰的に眺める読者が使う言葉で、登場人物がさも当然のように使うケースは珍しい。他の作品であれば「抱かれる側」だとか「女役」だとか「下にはなる」といった表現を使うことが多いが、この作品では直球で「攻め」や「受け」と表現する。ただ、プレイしているうちにそういう世界観なのだと思えるようになって来て、最終的には受け入れられた。

ジョレスについては、ハニートラップを得意とする男がルイーズに翻弄されていく様を眺めるのが楽しかった。ライナーのビジュアルが好みで 3P が来た時はテンションが上がったのに、CG ではジョレスのみの絵であまり 3P という感じがしなかったのは残念。ジョレスが歯ブラシを大量に突っ込まれていたのは笑っ……いや可哀想だと思ったけども。

ヴェルナー・ヘルツォーク (CV:先割れスプーン)

このルートは良かった。ヴェルナーのように男前で有能で可愛い受けは少し珍しい気がするし、自分を攻め役だと信じて疑わない彼がどうやって受けに転じるのかワクワクした。迂闊に気を抜くと犯られそうになる二人の攻防もいい。ラストはあっさりヴェルナーが降参したように見えるが、キアやルイーズとはタイプの違う男らしさを持つヴェルナーだからこその感性が出ていて良かった。惚れた相手のためならしょうがないから受けになってやるよ的な展開は惚れた弱みだと言えばそれまでだけど、案外美味しいのだと気付いた。

アネル・メッツェルダー (CV:如月葵)

ショタには興味がないので消化試合のつもりで読んだが、予想外にも楽しめた。パフォーマンスとはいえ鞭で罰を与える女王様なルイーズが見られたのは美味しかったし、ヨハヒムに対する父親のやりすぎな体罰を改めさせるために動いたルイーズの優しさにもぐっと来た。アネルの家庭教師として雇われたが、学習しなければならなかったのは父親のほうだった、というオチも綺麗に纏まっていて良かった。しかし心も容姿も美しい少年に欲情し、自分の手では汚せないからルイーズに犯されるところを見たかった、というヨハヒムの歪んだ性欲がきっかけとなって依頼がルイーズのもとに舞い込んだという経緯はいかにもエロゲっぽいが、肝心のシーンがサラッと描かれただけで終了したのは残念。

フェルディナント・マリエンフェルト (CV:櫻井真人)

ネタ枠なんだろうけど意外にも楽しんでプレイしている自分がいましたよ? 強烈な言動が印象的なフェルよりも、フェルの寒い台詞に心の中で散々突っ込みを入れつつも依頼を達成させようと奮闘するルイーズが可愛かった。そして言動が寒すぎて周囲からは敬遠されがちなフェルが孤独を抱えていることを知り、ルイーズがだんだん絆されていく様も展開は早いものの納得は出来た。尻に薔薇を挿すエロシーンも萌えはしないし面白くもないが、フェルのキャラクタならそうなるよなあと納得はした。水辺で全裸になって遊びながらセックスに雪崩れ込むのもフェルルートらしいと言えないこともない……よーな。妄想大爆発なメイドの設定は在り来たりでどーでもいいが、メイドが製作した同人誌を朗読してルイーズに嫌がらせをするキアは可愛かったのでそこは満足した。

ハーゲン・ハーラー (CV:黒澤優)

ほぼハーゲンの視点で進むので話は追いやすかったが、ルイーズがハーゲンを本気で愛したかどうかは謎。しかしルイーズは抵抗して来るキャラクタのほうが好みだろうし、ハーゲンのようにあっさり陥落する対象に惚れることはない気がする。そう考えると淡々と仕事をこなしていくだけのルイーズ視点で描かれても面白くないだろうし、ハーゲン視点で通したのは正解だったんじゃないでしょーか。それとこのルートはルイーズ×ハーゲンよりベルティ×ハーゲンが萌える。ハーゲンへの気持ちに気付いたベルティにどれだけアプローチされてもまったく応じないハーゲンが良かったし、そもそもベルティの前で自然体でいるハーゲンのほうが魅力的なんだよなあ。ルイーズや看護婦たちを相手にしている時のハーゲンは、落ちるのが早すぎたのと猫被っているせいもあってつまらない。