Antipyretic

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鳥籠のマリアージュ

http://kalmia8.jp/mariage/

もっとぶっ飛んだ乙女ゲーかと思いきや込み入った内容でもなく綺麗に纏まっており、サクサク読めるのと問題が浮き彫りになってから解決に至るまでが早いせいかあっさりしている。強烈な話なのに後に尾を引くようなインパクトがない。プレイ中は爆笑できるけど、最後には「あー面白かった」といい意味で綺麗に忘れられそうな。

ちなみに私が『鳥マリ』をプレイしようと思ったのはエロシーンで CG が動き、攻略対象の ω が揺れてシュールだという評判を聞いたからだけど、実際に見れた時は感動した。でも事前に聞かされていた玉よりもうねうね動く舌のほうに笑った。何故か画面がキラキラしているのも地味に腹筋に来る。でも玉を揺らしたり舌にも動きを入れたり愛撫の仕方を変えたらそれも反映させたり射精が近づいてくると動きが速くなったりと、製作スタッフの情熱は感じた(それが必要だったのかどうかはさておき)。

テキストは読みやすかった。可読性もそうだけど可視性という意味においても。マルベリフォントを組み込んだゲームは増えてるけど、やっぱり読みやすいなあ。話も展開は早いけどそもそも尺が短いし、必要なところは抑えてあるので致命的というほどでもなく。絵は苦手な絵柄なのでノーコメント。絵柄とは関係のないところに言及するなら、汁の多さには笑った。でも精液の描き方は好きじゃなかったなあ。汁の量は多いけどあまりエロくないんだよなあ。佳奈子のフェイスウィンドウが生首状態だったのも最後まで気になった。

クリアして振り返ってみると思ったよりは普通だったけど、それも『鳥マリ』のプレイしやすさでもあったのかなと。元々玉揺れを目当てに買ったよーなもんだけど、玉揺れよりもおじ様の腹上死や翔太ルートでガン無視するお兄ちゃんが面白くて最高だった。

藤井佳奈子 (CV:小倉結衣)

名器ヒロイン。いやまあヒロインが名器ってのはよくある設定だと思うけど、兄弟に何度も名器だ名器だと連呼され、挙句にはヒロインが自称までするようになるケースは珍しい。ちなみに父親を亡くしたばかりなのに男との恋やセックスに溺れるが、おじ様の出した荒唐無稽な同居や結婚の条件に混乱させられて悲しむ暇もなかったんだろうし、最初は「いい人」に見える悠人や翔太に甘えてしまうのも理解できなくはない。

しかし美人の母親に似てしまうってのも厄介よなー。おじ様や悠人もそうだけど、父親も佳奈子に自分の妻を重ねていた可能性もありそーなのが。おじ様が手段を選ばず欲しがるほどなんだから、よほど母親に似ていたのだろうし。

セックスでは流されやすいし感じやすいし溺れやすいのはお約束としても、しかし見事に中出しオンリーで吹いた。孕む可能性を危惧する人は皆無。兄弟はともかく佳奈子はもうちょっと危機感を持ったほうがよろしいのでは。まあ相手が兄弟のどちらかなら、佳奈子の血が欲しかったおじ様的には大勝利なんだろうけども。

真行寺悠人 (CV:ワッショイ太郎)

幼い頃から惣一に後継者として育てられ、重圧の中で出会った雪絵の写真を拠り所にして生きてきた少年が、雪絵にそっくりな雪絵の娘の佳奈子に出会って一目惚れをする。ここから「君はあの写真から抜け出して、僕に会いに来てくれた人形なんだろう?」という思考回路に行き着くのは結構飛ばしてるなあ。写真から、てのは二次元から三次元に現れたということになるんだろうけど、二次元のキャラクタにハマる人は普通そんなことを思いもしないのに悠人は本気で信じている。けどこの狂い方は好みじゃなかった。私はキチよりクズのほうが好きなんだよなあ。この手のタイプは言葉が通じないから宇宙人を見ているよーな気分になる。だから面白いっちゃ面白いんだけど萌えない。

しかし悠人はガチの狂人ではなかった。本当は佳奈子が人間だと理解していて、でも佳奈子を人形だと思わないとまともではいられないから知っていて敢えて蓋をしていた。狂っているように見えてまだ狂っていない。だから佳奈子が逆うと駄々っ子のように泣き出してキレる。あそこでキレるのはちゃんと真実を理解しているからこそ。佳奈子が翔太と睦に助けられて以降の解決が早いのも、悠人が本当に狂い切ってはいなかったからかな。そういえば惣一が佳奈子と結婚した者に会社を継がせようとしていることも悠人は冗談だと捉えていたが、あれも悠人の歪んだ思考回路を表す伏線だったんだなあ。彼は自分にとって都合の悪いものはなかったことにする。翔太の存在にしろ後継ぎの件にしろ写真の件にしろ。だからこそ自分にとって都合のいい人形を求めた。

悠人ルートで面白かったのは、佳奈子と悠人だけでは BAD ED で終わるけど翔太と睦の助力によって HAPPY ED に到達するようになっている点。物語の結末は一つの通過点に過ぎない。HAPPY ED の翌日に BAD ED になっている可能性はあるし、BAD ED の数時間後には HAPPY ED に到達していてもおかしくない。悠人ルートは主役の二人だけだったら BAD ED で終わっていたところを何とか回避したんだな、と伺えるのが興味深かった。そういう意味で悠人ルートは「あの空へはばたく」ED が一番面白かった。

しかし悠人の真骨頂は弟ルート。あちらのほうが悠人が生き生きしていて読んでてもう楽しかった。自分のルートの兄はそこまででもないけど、弟ルートのお兄ちゃんはそれはもう魅力的で大好きです。

ちなみにエロシーンで玉が重そうにぶーらぶら揺れる様を見ることが出来るのは悠人のおまけシナリオなんだけど、真っ先にプレイした悠人ルートをクリアしてすぐ見てしまったことで早々に満足してしまい、最後に取っておくべきだったと後悔した。ボリュームが少なかったおかげでフルコンプ出来たけども。

三枝翔太 (CV:春野風)

こちらは兄と違ってクズに分類されるけど、それもこれもすべて逆恨みから発生しているのが何とも言えずしょっぱい。おまけに中盤までは二人がひたすら甘酸っぱい恋愛をやってて普通にイチャイチャしてるだけなので退屈だった。波乱をくれ波乱を、とぶつぶつ言いながらプレイする羽目になった。ただ佳奈子が翔太に告白して、学校の廊下でキスをするシーンは CG が綺麗だったなあ。うっとりしている佳奈子の表情がいい。

そうして佳奈子が落ちた途端に翔太が豹変し、ゲーム感覚で佳奈子を落とすのを楽しんでいたことをバラしたあたりからようやく面白くなってくる。つーわけでハメ撮りして写真をネタに佳奈子を脅迫し、拘束して強姦したり床に落ちたクッキーを食べさせたりローターを突っ込んだまま授業を受けさせたりするんだけど、悠人ルートの後にやったせいかどうも印象が薄い。翔太は元々佳奈子が好きで佳奈子に告白したら無視された(誤解だったが)から兄や父や家も含めてすべてに復讐してやろうとしたらしく、好きな女の子に逆恨みで酷いこと出来るのもそれはそれで呆れるけど、それよりも弟ルートでも絶好調にヒスっていたお兄ちゃんが全部持っていった。いつも悠人に存在を無視されている翔太が、ソファに座ってニュース番組を見ている悠人のすぐ横で見せつけるように佳奈子とセックスをするんだけど、これを見事にガン無視して無表情でずーっとニュースを見続けていたお兄ちゃんがもうほんっとーーーーーーに最高だった。このシーンを見れただけで『鳥マリ』をプレイした価値はあった。すんげえ萌えた。楽しかった。面白かった。素晴らしい。

結末も悠人が翔太の目の前で佳奈子を寝取る「王子と姫と下僕」ED が一番面白かった。何が面白いって因果応報になっているところが。佳奈子を好きなくせに写真をネタに脅して言いなりにした翔太が、今度は悠人に写真をネタに脅されて逆らえず佳奈子を奪われるのがたまらん。翔太以外の人間に犯されているのに善がってしまい何度も謝罪する佳奈子と、そんな佳奈子を見て泣く翔太も不憫でとてもいい。

「もう一度はじめから」ED は色々我慢の限界に来ていた佳奈子が学校の窓から飛び降りて、ギリギリ間に合った翔太が助けて互いの気持ちも伝えあって誤解も解けて佳奈子も翔太のやったことを許してハッピーエンド……なんだけど、微妙な流れで何とも。

葉山司 (CV:鳩マン軍曹)

彼が出てくる場面はコミカルなシーンが多くどれも楽しかった。マゾではあるけど仕事では有能だしいざという時に頼りになる大人でもあるので、佳奈子が一番安心して一緒に過ごせる相手じゃないかな。そして女性経験はあってセックスにも慣れが垣間見えるところも良し。葉山は自分と佳奈子お嬢様が釣り合うとは思っておらず、そんな葉山に焦れて佳奈子が攻めるしセックスでも主導権を握るが、それでいて実は葉山はキスやセックスが上手いという設定が美味しかった。葉山を攻める立場にいながら、慣れている葉山に佳奈子が内心で「葉山のくせに」と嫉妬するのも可愛かった。というわけでハッピーエンドに限定するなら葉山と結ばれる「最高の微笑み」ED が一番好みかな。

ところで葉山の住んでいるアパートの名前が「ホワイトキャッスル」なんだけど、背景画だと「ホワイトキャッスル!!」に見えてなんでそんなに強調してるんだ、と思ったけどすぐ「ホワイトキャッスルII」だと気づいて笑った。ローマ数字の「II」がエクスクラメーションマークの「!!」に見えたんだよなあ……。

しかし葉山ルートだと兄弟仲が良かったのは何だったんだ。悠人ルートと翔太ルートでは険悪だったから微笑ましいというより逆に怖かった。

真行寺惣一 (CV:暮氷佑)

父の死に惣一が関わっているのでは、という疑惑が発生し、その真相を知るためにおじ様にハニトラを仕掛けることになる。兄弟とは散々セックスをした後なので兄弟にしてみれば自分の父親と穴兄弟ですよ。笑うー。でもそれ以上に笑ったのはおじ様の腹上死。佳奈子が酒に媚薬を入れた時は一瞬「ん?」と首を傾げたが、まさか腹上死に繋がるとは思わなかった。でもおじ様の死を隠蔽して三人で生きていく「もぎ取られた羽」ED は一番好きな結末。おじ様が言っていたように悠人は有能だけど冒険の出来ない秀才で、翔太は天才だけど本人にやる気がない。一長一短のこの異母兄弟が結託したらどうなるか、という可能性を示した結末が美味しくないはずがない。わくわくする。

おじ様の過去や目的については、一周目にプレイした悠人ルートですぐ察せられた。まあとある乙女ゲー(※ある意味ネタバレなので、おじ様に似た人物に心当たりのある人やネタバレを気にしない人だけクリック推奨)を先にやっていたせいもあるけども。でも自分と結婚しようとはしないだけおじ様はマシかもしれない。

桜川睦 (CV:須賀紀哉)

睦は攻略できないけど、出来ないからこそ輝くタイプじゃないかな。佳奈子を好きなんだろうけど、その気持ちが見え隠れするのが自然。露骨であざとい「実は佳奈子が好き」アピールがない。そしてちゃんと佳奈子のことを考えて応援してくれるのもいいっすね。