Antipyretic

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なかない負け犬

淡々と復讐劇が書かれているので物語に厚みはないんだけど、このあっさり具合がむしろ好きかもしれない。主人公の父親が王で母親が乞食、という設定も良かった。普段あまりフリーゲームはやらないんだけど、これはすごく好きな作品になった。薦めてくれた方には感謝。

リズ

冷め切ってはいるけど不安定。異母妹が性的虐待を受けていることを知って父に復讐しようとするものの、本当は自分が愛されたかっただけの子。リズがヒルデガードに執着するのはヒルデガードが自分を唯一愛してくれている存在だから、てのが大きいんだろうな。ヒルデガードを失うと自分が世界中でたった一人になると怯えていたから、リズはヒルデガードを大事にしようとするし、ヒルデガードを父親に「奪われる」のだと怯えていた。同時に、父親にどんな形であれ愛されるヒルデガードに嫉妬する部分もなくはなかったのではないかな。だから「負け犬は何に負けたのか?」ED はすごく好きな結末。しかしランスロットやローデリックの説得で復讐を諦めるあたり、リズも根は健全なんだろうな、てのが伺える。

ランスロット・エインズワース

ランスロットの解決方法は、父の罪を日の下に晒して公平な裁きに委ねるという至極真っ当なもので、それが彼の真っ当さを表している。ただ、真っ当だからこそこれからがたいへんで、本当の試練はランスロットが王になってからなんだろうなあ。最後はヒルデ第一なリズを見て妬くのが可愛い。リズは最後までヒルデ至上主義なところが変わらないのもいい。イケメンより異母妹が大事な主人公って最高じゃないですか。

ローデリック・エインズワース

単純で一番わかりやすく、一番安定感があったような。彼の成長は劇的で見ていて気持ちがいいほど。「血が繋がって無くても、父さんは父さんだし、母さんは母さんだろ」と言える彼とリズがもっと早く出会えていれば、リズも多少は違った人生を歩んでいたのかもしれない。偶然とはいえ城にいる間に二人が会えなかったのが切ない。

エミール・エインズワース

私は過去に犯された経験のある男キャラクタに弱いらしいことに、最近になって自覚するようになった。だからエミールはもうドツボだった。自らの存在価値を失い、誰にも愛されず、壊れたヒルデの代用として血の繋がらない父の相手をさせられ続けてきた男、という設定がもう美味しすぎた。復讐に燃えるリズを見て、彼の胸にはどんな思いが去来していたのかな。ラストのリズは格好良かった。

ヒルデガード・エインズワース

ヒルデは父を愛していたからこそ性的虐待を受けておかしくなったのか、それとも実はリズがいなくなったことでおかしくなったのか。どうも後者が真実な気がしてならない。この異母姉妹は、共依存によって辛うじて城の中で生きてこられたようにも思えるから。

ヒルデガード ED はリズとヒルデの関係が逆転するところが好み。