Antipyretic

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時計仕掛けのレイライン -朝霧に散る花-

http://unisonshift.amuse-c.jp/products/project30/main.html

『残影』続編。大団円で満足した。ご都合主義展開はあったし、特査とドイツ主従が協力して積極的に真実に迫っていくことで連鎖的に伏線が回収されていった前作とは違い、今作では日記を読んだり関係者から話を聞くことで真相を知るばかりで物足りなかったけど、きちんと山場もあったし盛り上がったし萌えも感動も得られた。ハッピーエンドってすばらしい、と思えたのはちょっと久しぶりな気がする。

序盤はダレた。これまでのあらすじを説明してくれるコンテンツが用意されているのに、作中でも復習が延々行われる。新キャラが投入されたせいもあるんだろうけど、三作一気にプレイして毎回おさらいを読んできた私としては、自己紹介が始まった瞬間に「また復習を読まされるのか」とげんなりした。あと終盤まで結構頻繁に状況整理が何度か行われるし、今回はやたら「復習させる」場面の多さが気になった。

それと20年前の事件の当事者たちの述懐を日記として読む場面があるんだけど、淡々としていて臨場感もないし細切れに読ませられるので真に迫って来るものがなく、この日記のシーンは真実が明かされる場面なのにあまり面白くなかった。だからか終盤にアンデルが登場してもピンと来なかったなあ。登場が突然過ぎたのもあるけど。

アンデルだけでなく新キャラは全員影が薄かったのも勿体なかったなと。アンデルとラズリットはすでに過去の人なので仕方ないけど、今作から本格的に登場することになった睦月と完全新キャラクタのアーリックも扱いがいいとは言えず。特にアーリックは学園側にとって最大の脅威であるルイ封じのためだけの存在でしかなかった。

それと本編クリア後のアナザーエピソードではセーブ出来ないのが不便。これまではエロシーンだけだったのでセーブ機能がなくても問題なかったけど、今回のモー子とリトのシナリオは長いんだからこの二人だけでもつけて欲しかった。ちなみに内容はほとんど夢オチのエロシーン集なのでどうということもなくほとんど Ctrl で飛ばした。リトのシナリオだけは if だったけどこれはこれで不満が。話の内容は好きなんだけどな。

なんか不満ばっかになったけど、いいところは前作、前前作の感想ですでに書いてるし、完結編にしかない長所もあるけど「無難にちゃんと面白いという意味の無難」としか言いようがなく。三部作ってだいたい最後で一気にショボくなるという偏見を持ってるんだけど、レイラインは広げた風呂敷をきちんと畳んだ上にちゃんと面白かったので、細かい不満はあってもそれでもうオールオッケーにしてしまえるくらいにはいい完結編だった(でも不満点は書くけど)。三作それぞれの評価に多少の差はあるが、まとめて一つの作品として見るならアベレージは高い。キャラはいいしそれぞれの関係も良かったし、シナリオは特にすごいというわけじゃないけど伏線の配置と回収は秀逸で、盛り上げるところは効果的に盛り上げてくるし勢いもあった。なんというか、質のいい娯楽作品。

久我三厳

都合良く鈍感になることもなく、相思相愛になったモー子のことを彼氏未満の男としても特査の仲間としてもちゃんと見ている。モー子が嫉妬したらすぐに察してフォローを入れるし、うろたえたり赤くなったりするモー子を可愛いなあとかいじめたくなるなあとか思いつつも、加減や空気を読むことを知っているのでやりすぎることもなかった。

モー子関連以外では終盤までこれといった活躍がないけど、モー子やルイといった優秀すぎるキャラクタがいるからしゃーなしか。基本的に舵取りを行うのはモー子で、みっちーは足となって船を動かしていた印象が強い。パワーがあるから適任ではあるけども。それに最後は美味しいところで覚醒して決めてくれたあたりは、ちゃんと主人公らしかった。

災厄の魔女だった、という設定は予測出来なかった。満琉が最後の切り札になるだろうと思ってたもんなあ。でもこれでみっちーに魔力がほとんどなかった謎も解けたし、一応伏線は張られているので納得はした。妹のために妹のふりをして入学してくる二十歳のお兄ちゃんてどんだけだ、と思ってたのにそれも伏線だったとは思わなかったなあ。

鹿ヶ谷憂緒 (CV:森谷実園)

将軍と参謀を兼ねるヒロイン。作戦を思いつくのはモー子だし、みんなを導いていくのもモー子。味方が無力化されたり攫われたりして追い込まれていくのにそれほど緊迫感がなかったのは、レイラインが「ぬるい世界」である(ちなみにこのぬるさは欠点ではなく美点)こともそうだけどモー子が頼りになるから、てのもある。というわけで一番活躍していた。中盤も敵に捕らわれたかと思ったら黒谷さんになって暗躍してるし。モー子がいなけりゃ詰んでたもんなあちこちで。黒谷さんの活躍は一見唐突にも見えるが、遺品の存在を知ってたしこれまでのおさらいコーナーで張り切っていたのであまり気にしていなかった。というかあのおさらいコーナーすら伏線として仕込んでいたんだから恐れ入谷の鬼子母神。この完結編で一番してやられた、と思ったのは黒谷の件かな。ただこの現象を引き起こしたのが時を操る魔女でもあったラズリットの力によるものだとは理解したけど、仕組みの詳細が語られなかったのでそこだけは不満。それにしても黒谷さんのふりをして行動している時、みっちーが過去の自分といちゃいちゃしているのを目の当たりにしたモー子の内心を思うと切ないよーな萌えるよーな……。モー子はよく頑張った。

アフターでは夢だと思い込んでみっちーにメロメロに甘えるモー子が可愛かった。夢じゃなかったと知って混乱するのも面白すぎた。これまで夢オチのエロシーンを読ませられるのは面倒でしかなかったけど、こんな美味しい展開に繋がったんだからエロシーンはちょいちょい飛ばしたものの読んでおいて良かったと思えた。みっちーとモー子は特にツボったわけじゃないんだけど、三作かけてじっくり進展していった二人を見てきたので二人がいちゃつく場面はそれなりにニヤニヤ出来たし、みっちーがモー子にプロポーズするシーンも素直に二人を祝福できた。いいカップルだったんじゃないでしょーか。

烏丸小太郎 (CV:門倉宗一)

『黄昏』の時の最初の姫抱っこを見て「初っ端から男がヒロインみたいな役割やってんのか」とネタで笑ってたけど、あながち間違いでもなかった。おまるはある意味ではモー子以上にヒロインをやっていた。特に「……………やっと会えたな」のシーンは感慨深いものがあったなあ。あれは再会できたという意味もあったんだろうけど、みっちーが正真正銘のおまる本人と会えたのはあれが初めてだったことを思うと更にぐっと来る。しかしその後の再会は予想できたけど、そあらが娘ってのはまったく予想出来なかった。一応伏線はあったけどあれで気付けってのは無理がある。いやあびっくりした……びっくりした。

しかし初代特査チームの年齢変化は面白い。モー子が年長だと思ってたら実はみっちーが最年長であることが発覚し、かと思えば実は20年前の人間だったおまる本人と再会したことで今度はおまるが最年長になったという……面白いなこの三人。でも年齢差は関係なしに仲良くやってくんだろうなあ。いいチームだった。もちろんしーちゃんも含めて。

花立睦月 (CV:倉田まりや)

モー子のワトソン的存在としての活躍を期待してたんだけど、それは序盤だけで中盤以降は攫われて殆ど出番がなかったのは残念。印象にもあまり残っていない。愛称も本人が自分で「おむつ」を提案するところは面白かったんだけど、みっちーが「むっちゃん」と呼ぶことはなかったし。エロシーンはモー子の夢だろうとなんだろうと超いらん。

アーデルハイト・リッター・フォン・ヴァインベルガー (CV:白月かなめ)

魔術知識と香水で活躍していたお嬢様。特にこの作品ではヤヌスの鍵が強いので、ハイジの香水がなければ詰んでいた。要所要所でルイを気遣う場面が入っていたのもポイント高かった。アーリックには負けたけど負ける理由がハイジらしいというか、ほんといい娘だなあハイジは。ただアーリックに敗北して捕らえられたかと思いきや、あっさり戻ってきた時は絶対罠だろうと思ったのに違って拍子抜けした。何だったんだあれ。

ハイジの美味しいところはお嬢様だけど影武者である点。ハイジは影武者だけどヴァインベルガー家の令嬢なのも事実で、ルイが当主だからといってハイジが本物のお嬢様ではないわけじゃない。お嬢様であることと影武者であることの並立。美味。

エロは超いらん。巨乳だからって安易に母乳ネタに走るのは勘弁。

ルートヴィヒ・リッター・フォン・ヴァインベルガー (CV:有村祥)

一番不憫な人だった。元々男だったから嫌がるのも納得出来るし同情も出来ただけに、本家を説得するにはそれしかなかったとはいえ帰国後にどことも知れない(?)男を相手に孕むまで股を開かなきゃならんのかと思うともう可哀想で可哀想で可哀想で面白……じゃなかった泣けた。帰国前にみっちーに男に戻せないか聞いてくる必死さとか、アーリックの失態をネチネチ責めてストレス発散するところとかもう最高だった。でもルイは当主としての自覚はあるし、女として生まれていたらあそこまで嫌がることもなかったんじゃないか。ただ私は偉そうなキャラクタが屈辱的な目に遭う展開が好きなので、ちょっと萌えたのも事実。その一方で気の毒だとも思ったので、帰国後のルイの様子が見たかったよーな見れなくて安心したよーな……。でも仁義のために後継ぎを作ることを約束したルイは漢だった。約束は破らないだろうし約束した以上は逃げることもないだろう。やらされることは漢から程遠いかもしれないけども。作中では結構早くに眠らされて以降は目覚めないままだったが、終盤には美味しいところを持っていってくれたし格好良かった。

あと何気にドラえもんに例えられていたのはじわじわ来た。ハイジと二人であの国民的人気アニメを見てたんか。可愛い主従だなあ。

レイラインをやってルイという魅力的なキャラクタに出会えたのは嬉しかったことの一つで、ルイが普通の偉そうな男性執事として登場していたら恐らくここまでハマれなかったんじゃないかな。元々男性だったという設定も、実は当主でありつつも執事を装っていることも、偉そうな態度も、ハイジとの関係も何もかもが絶妙だった。

村雲静春 (CV:古河徹人)

みっちーとしーちゃんは境遇が似ているなとは思ってたけど、そこらへんはやっぱり意識されてたっぽいなしーちゃんも言ってたけど。夢の世界で満琉と会ったのもアンデルの意図が影響していたと、そういうことでいいんでしょーか。そいや満琉とはフラグが立ったのかなと思ってたんだけど、決定打もなく終わった。でも満琉は幼い少女だし、変に恋愛関係に発展させなかったのは良かったのかもしれない。ちょうどいい距離感。

村雲春霞 (CV:野神奈々)

スミちゃんは可愛い子ではあるしラストエリクサーネタは笑ったけど、総じてどの作品でもこれといって目立ったシーンがなかった。魔女であることが武器なのに、魔女が次々と増えてったからなあ。鍔姫ちゃんとの百合エロは夢だろうがなんだろうが超いらん。

壬生鍔姫 (CV:かわしまりの)

嘘発見器みたいなポジションなんだけど、今回の敵はホムンクルスがほとんどなので鍔姫ちゃんの出番が減ってしまったという……。一応魔女でもあるんだけど、そっちは久我兄妹とルイの存在感が強すぎた感が。

久我満琉 (CV:shizuku)

お兄ちゃん好きすぎてお兄ちゃんに近づく女に警戒するタイプの妹だったら嫌だなーと危惧してたんだけど、満琉はお兄ちゃんが大好きではあるけどモー子を邪険に扱うような気配は一切なかった。マーベラスだ。嫉妬するようなこともなかった。エクセレントだ。エロシーンも夢オチを含めても一切なかった。グレイトだ。ボクっ娘は苦手だけどそんなことはどうでもいい。満琉は鬱陶しくない妹というだけでパーフェクトです。

事故とはいえ両親を殺してしまったことは簡単に割り切れないと思うけど、そのあたりはみっちーと一緒に抱えていくしかなさそう。でも最後には正規の学生としてちゃんと満琉本人がやってきたところは、彼女の精一杯の努力と成長が垣間見えて和んだ。

風呂屋町眠子 (CV:萌花ちょこ)

うんまあパンツだった。

七番雛 (CV:鈴谷まや)

まさかの黒幕。これは気付かなかった。でも説明されてみればちゃんと伏線はあった。最初は意外すぎて納得がいかなかったんだけど、よくよく考えてみれば文句を言いたくなるほどに突飛だったかと言われるとそうでもないし、気付ける人は気付けたかもしれない。私は気付けなかっただけで。――と、考えることは出来たのでこれはむしろ製作サイドが上手くやったってことなんだろうなあ。さすがにセディという名前から雛に到達するのは無理だと思うけど、名前はさておいて雛のこれまでの振る舞いを思い返してみると「言われてみればそうだな」くらいには納得できてしまったので。しかし雛が孤独感に耐えられずアンデルのことを忘れてしまった、てのはいまいち理解できなかったな。

でも描写は少ないながらも射場さんの件あたりはぐっと来た。行方不明になった睦月を助けたかったモー子、消えたおまるを助けたかったみっちー、事故に巻き込まれた射場さんを助けたかった雛。みんな友達を助けたかっただけなんだけど、他の生徒を犠牲にすることを肯定するか否かの違いが上手く対比となって効いていた。

リトグラフィエ・ラズリット (CV:鶴屋春人)

リトのアナザーシナリオはみっちーが災厄の魔女としての力を受け入れている設定の if だからか、みっちーのキャラが変わっているように感じてピンと来なかった。更に登場人物が最低限の人数に抑えられていて、特査のメンバーがみっちー以外は出てこないのも寂しい。アンデルとセディがかつて犯した過ちを再びみっちーがリトを相手に犯してしまい、大事になる前にリトとの時間をなかったことにしてしまう展開自体は好きなんだけども。

聖護院百花 (CV:涼屋スイ)

もも先輩は何もしてないわけじゃないというか、むしろいろいろやってるらしいんだけどアーリックが出てきたためかあまり目立っていなかった。

九折坂二人 (CV:小倉結衣)

この人も前作までに比べると大人しくなったよーな? あくまでも前作との比較なので、あれこれ暗躍しているのは確かだけど。モー子にヤヌスの鍵を使わせて魔力をすっからかんにして宝物庫に入れて置き去りにするシーンは「なるほどなー」と唸らされた。

アナザーのエロはどうでもいいけどお仕置きはしたかったな本当に。

アーリック・リッター・フォン・ヴァインベルガー (CV:ますおかゆうじ)

暗示にかかった状態で「俺は暗示にかかるような失態は犯しませんが(キリッ」は恐らく一生ネタにされるんだろうなルイに。「おれはしょうきにもどった!」以降に名誉を挽回するシーンがあれば良かったんだけどそれもなかったしなアーリックさん……。

アンデル (CV:柚原みう)

見た目だけなら一番好きなんだけど、出番が少ないしそもそも過去の人なので期待していたようなキャラクタじゃなかったのが……。キャラクタ自体は別に嫌というほどでもないけど、すべての元凶でもあるのが何とも言えず。アンデルに悪意はなかったしむしろみっちーを気遣っての行動だったけど、それが結果的に久我家の火事を引き起こした。仕方がないと言えばそうだけどやりきれない。結果、満琉は両親を殺したという罪を背負っていかなきゃならないのだし。いやもー魔女の力ってのは厄介だなあと。

クラール・ラズリット (CV:伊達祥穂)

ラズリットの CG を見た瞬間にのいぢっぽいなーと思ったけどやっぱりそうらしい。ところで遺品となったラズリットだけ封印されていなかったのは、たまたまなのかそれとも学園長がお母様のお母様のお養母様(ややこしい)を封じることに躊躇したのか。