Antipyretic

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鬼畜眼鏡

最初にタイトルを見た時は『学園ヘヴン』の印象が強い Spray が変化球を投げて来たのかと思ったけど、いざプレイしてみると見事な超ド級ストレートがミットに収まっていた。凌辱要素はあるけどそこまでハードな内容でもないし、むしろ王道 BL が展開されていて普通に面白かった。眼鏡の着脱で主人公の人が変わるというバカバカしさも含めて楽しんだというか、結構ギャグ要素の強い作品のよーな……?

テキストは読みやすかったが、SE があるのにオノマトペをいちいち書くのは好みじゃなかった。絵はキャラデザというか絵柄が古いんだけど、内容も古いので合っている。これはいい意味で言うけど昭和の空気が作品から漂っていて、だからこそシナリオと絵とが上手い具合にマッチした。音楽は特に印象には残ってはいないけど、C.G mix 兄さんによる OP「under the darkness」は中毒性もあって好きだったな。これは名曲。

システムは概ね快適だけど、バックログが画面中に一括表示されないのは不便。こんなところまで古い仕様にせんでも。あと場面転換の際に入るアイキャッチが鬱陶しい。スキップ中も一度クリックしないと次に進めないので地味にイライラさせられた。

まーでも最大の不満はやっぱり眼鏡克哉受けがない点。眼鏡克哉や Mr.R が言っていたように傲慢なキャラクタを屈服させるのが一番楽しいんだから眼鏡克哉を組み敷きたかったのに、それらしいシーンがほぼなくて泣いた。そういや『学園ヘヴン』の中嶋でも同じことを思ったなあ……。いい受けになりそーなのに勿体ない。

佐伯克哉 (CV:平井達矢)

ノーマル克哉は才能があるのに自覚がなく自分に自信を持てないタイプだけど、根が真面目な人間だからかそこまでイライラさせられることはなかった。一歩間違えたら鬱陶しい主人公になっていた可能性はあるが、このあたりのバランスが絶妙だった。そして終盤には本来の実力の片鱗を見せるようになるのもいい。ただ、好きなタイプではないので克哉受けルートで萌えることは一度もなかった。尚、セックスの時に淫乱になるのはお約束だしいいとしても、喘ぎ声はきちんと音量調節しておいて欲しかった。うるせー。

眼鏡克哉は鬼畜キャラクタという触れ込みだったけど、鬼畜メータを振り切りさえしなければ思ったほど鬼畜でもなかった。仕事は有能だし、もっと周囲に厳しいキャラクタなのかと思ったらそんなこともなかった。冷たいし自分一人で全部何とかしようとする傾向にあるが、実際克哉は一人でほぼこなせてしまうし、周囲が例えミスをしても呆れることはあってもいつまでもネチネチ責めたりしないし助けたりもする。ただ、仕事以外での理不尽な行動は多い。相手が気に入らないという理由だけで犯するのが常なのはどーにかならんのかこの男。ただ、鬼畜とはいっても単純に肉体を痛めつけるだけのセックスはなかった。鬼畜プレイは酷すぎなければ普通に読めるが、だからといって萌えるかと問われたらノーなので、相手に快楽を与えて羞恥を煽ることを目的とした克哉のスタンスには助けられた。でも眼鏡克哉が受けをやってくれたらもっと美味しかったんだけどなあ。

それにしても自業自得とは言えしょっちゅう刺されてて笑った。眼鏡克哉には刺すよりも訴えたほうがダメージが大きい気もするが、BL ゲームで訴訟だの何だのを描写されてもまあ鬱陶しいだけかもしれない。ちなみに一番萌えたのは Mr.R×鬼畜眼鏡で、その次が眼鏡克哉×御堂、更にその次が眼鏡克哉×権藤だった。三つ目は権藤にノリノリで罵声を浴びせる眼鏡克哉が見ていて楽しすぎたんだけど、立ち絵だけで CG がなかったのが不満。女性向けだからと遠慮したのかもしれないが、こんなシチュエーションをわざわざ用意するくらいならちゃんと CG も描いて欲しかった。内容は気に入っただけに中途半端な扱いで寂しい。逆にまったく萌えなかったのが眼鏡克哉×ノーマル克哉。元々ノーマル克哉にはあまり興味がないし、シナリオも何もないエロのみの話なのでキャラクタに萌えられないなら楽しめる要素が皆無で私には蛇足でしかなかった。

御堂孝典 (CV:浅野要二)

ノーマル克哉パートの御堂ルートでは、御堂が乙女ゲーにもよくいるよーなツンデレ攻めキャラになっていたのが面白かった。シナリオは特に面白いわけじゃないが、唐突にセックスで接待しろとか言い出したのは吹いたし、エネマグラまで持ち出して来た時はリアルに爆笑した。どうしてそんなものを持ってるんですか御堂さん。私を笑い殺しに来ているとしか思えなかった。その後も仕事で電話中の克哉に悪戯して、その様子を上司に見られて問題になって二人が会社を辞める羽目になるという自業自得な「堕落」ED に到達した時も笑った。ちなみに電話中の悪戯が誰にもバレなかった場合は煽られた御堂が仕事を放り出して自宅まで強引に克哉を連れ込んでしまうのがアレ。電話中の悪戯といい仕事をサボってまでセックスに及んだことといい、このあたりは仕事を大事にしている御堂らしくなくて残念。でも「欲望の在処」 ED で自分の気持ちを先に伝えたのが克哉のほうだったのは好きな展開。御堂はやっぱりツンデレなので、克哉が捨て身の告白をしないとなかなか素直になってくれないんだろうなあと思うと可愛らしい。

そして満を持してプレイした眼鏡パートのほうは大層萌えた。元々なかなか屈しない男が受けをやっているのを見るのが好きなので、結局どの結末でも最後まで克哉に屈しなかった御堂を絶賛したいくらいだ。「脅されて肉体関係も持ってしまったけどそこに互いに愛情はなく、キスすらしていない関係」という意味では御堂×克哉ルートの時と状況はまったく同じだし関係を反転させただけなんだけど、こちらは攻めも受けもプライドが高いので克哉×御堂のほうが断然萌えた。終盤、克哉がとうとう屈しない御堂に根負けして解放し、一年後に再会した後の御堂は一気に乙女化してしまうが、御堂は攻めでも乙女だったので単に乙女受けになったのではなく御堂というキャラクタが攻め受け関係なしに乙女なのだと思えば乙女受けでも萌えられた。それでもあれだけ克哉に酷いことをされて来たのに克哉のたった一言の告白だけで絆されていたらしいことを知った時は「本当にそれでいいのか!」と一瞬絶句したが、もうこの二人に萌えられたのでどうでもよくなった。萌えはすべてを凌駕する。街の中でキスをしているのかどうかと思いましたが。

ただまあシナリオはやはり微妙。御堂と同期だったらしい本城というキャラクタを掘り下げていればもうちょっと面白くなった気はする。でも萌えたからもうそれでいい。

本多憲二 (CV:犬野忠輔)

本多のような無駄に正義感が強く暑苦しいキャラクタは苦手なのでノーマル克哉パートは期待してなかったんだけど、意外にも楽しめた。特に二人でビールを飲みながら背中合わせで互いの本音を吐露するシーンがいい。ただ、過去のことだし今更言ってもしょーがないとはいえ、八百長の件は本多が決断したことではなく本多が一人で決断したことをチームのメンバーから責められたんだろーに、本多がそこに気づいていないのがなあ……。一応これは眼鏡克哉パートで指摘されていたが、この時は克哉が本多のやったことをあっさり肯定してしまった気がしてどーにも。本多の決断を間違っているとも思わないが、本多を責めたチームの気持ちも理解出来てこの件に関しては何とも言えない気持ちになった。一方、克哉の過去のトラウマの話は読者である私にとっても得られたものが大きかった。克哉は本来は有能な人間で、トラウマによって自分をセーブしていることが判明し、眼鏡はパワーアップアイテムではなくきっかけを与えるためのアイテムにすぎないという可能性を教えてくれた。これはかなり重大な情報じゃないですか。

恋愛に関しては、眼鏡克哉に犯されそうになったことで克哉への気持ちに気付いた本多も唐突過ぎるが、克哉が本多に惚れるのもピンと来ない。有能なのに全力を発揮しようとしない克哉に焦れる本多と、自分よりも頼りになる本多を疎ましく思っていた克哉の気持ちはわかるんだけど、そこから恋愛に発展するのかと問われたら微妙じゃないかなあ。前述の背中合わせで語り合うシーンが良かったから尚更だけど、この二人は友情のままでいるほうがしっくりくる。というか終盤に仕事でピンチに陥ったけど諦めずに頑張ろうと決意したのは良かったのに、そのまま資料室でディープなキスをかまして克哉が流されたら最後までやってしまいそーな空気になったのは呆れた。直前まであんなに焦っていたのに案外余裕あるんだなこの二人……。これでマイナスの印象を与えられて、やっぱりこの二人は恋愛が絡まないほうがいいよなと結論付けた。

眼鏡克哉パートも友情のほうがしっくり来た。克哉に強姦されかけて本多が肉体関係もアリだと思うようになった、という滅茶苦茶な経緯で唖然とさせられたというのもあるが、恋愛やセックスを抜きにして仕事で抜群のコンビネーションを発揮する親友同士の二人を見ている時のほうが楽しかったんだよなあ。本多の暑苦しさもクールな克哉がいると上手い具合に緩和されるのがいい。が、仕事中の二人を見るのが楽しい一方で、その言動はどうなのかと思う場面も多かった。スタンドプレイを好む克哉とチームワークを重視する本多が対立し、仕事に勝負を持ち込むのがアレ。これで何かがあれば巻き込まれるのは他の8課の人間で、彼らにとっては迷惑でしかない。そして終盤、職場の屋上で勤務時間中にサボってセックスをおっぱじめる二人に唖然。見つかったらクビになるよなーとか呑気なことを言ってるが、わかってるならやめりゃいいでしょーが。

本多の過去のトラウマはノーマル克哉パートよりも掘り下げられていて、何気に松浦が活躍するんだけど微妙。本多から能天気に草バレーチームに誘われて松浦が不愉快な気持ちになるのは理解出来るけど、だからといって本多にガソリンをぶっかけてナイフで脅すところまで行くと違和感が先に立つ。松浦に殺す気はなかったらしいけどここまで来ると犯罪になるし、プロへの道が断たれた時以上に自ら未来を潰しかねない行動に走っていることに松浦が気づかないとも思えない。ちょっと極端すぎる。それとノーマル克哉パートで疑問に感じていたことを眼鏡克哉がズバズバ指摘してくれるのは良かったんだけど、その後お馴染み「知ってるがお前の態度が気に入らない」という理由だけで外で強姦してしまうのがひっでえ。ここはさすがに本多が可哀想だった(といいつつちょっと笑ってしまったんだから私も克哉を酷い酷いとか言ってられない)。

「お前が泣いたら」ED のオチは笑った。突然バレーをやるためにイタリアへ行くという本多を止めもしない克哉はクールだなあと思ってたら、渡欧当日の機内 CG の不自然に空いてる本多の隣の席に吹いてしまってダメだった。案の定克哉がすました顔で自分もイタリアで仕事をするんだと告げて来るからもう爆笑した。本人は否定していたが、なんだかんだ言って本多を追いかけたかったのかと思うとこの克哉はたいへん可愛らしい。

片桐稔 (CV:床魔乱夢崇矢)

こんなおっさんが電車で痴漢に遭うとはすごいゲームだ。あまりにもうじうじしているので私までイライラしたが、片桐を翻弄するはずの克哉が逆に翻弄されていく様を見るのは面白かった。片桐は好みのキャラクタではないので消化試合のつもりでプレイしたが、実は片桐ルートではなく克哉に萌えるルートだったのは嬉しい誤算だった。おかげで楽しめた。片桐を犯した翌日にいつも通りに振る舞う片桐を見て戸惑ったり、片桐に今日はセックスをしないのかと聞かれて驚いたり、酷いことをしているのに依存して来る片桐を怪訝に思ったり、片桐の要領の悪さに呆れながらも付き合ったりとかもう可愛い克哉目白押しで何度も悶えた。とどめは痴漢に遭った片桐を助けた後、おっさんに手を出している相手をマニアックだとか呆れる克哉に「いやお前もだよお前」とモニタ前で突っ込んでたら、その後「僕は男ですし、こんなオジサンなのに、どこがいいんでしょうね…。悪趣味…ですよね」と自虐する片桐に克哉が面白くなさそーな顔をしたのでもう手を叩きかねない勢いで爆笑した。克哉にあんな顔をさせる片桐さんはすごいなおい。

そして終盤は退職しようとする片桐を引きとめるために必死になるのが可愛い。乙女な片桐さんに引きずられるかのよーに克哉までもが乙女化していて、なんというかこの二人は乙女同士でお似合いなんじゃないでしょーか。カップリングには萌えないけどこのカップリングの克哉はたいへん可愛らしかったので満足している。オカメインコに懐かれる克哉の立ち絵まで用意されているあたり、スタッフはよくわかっているなと感心した。

それと忘れてはいけないのが「君がいないと僕は…」ED。何故か片桐ルートの刺殺 ED はやけに気合が入っていて、泣きながら謝る片桐を恨むでもなく、むしろ自分は刺されても仕方のないことをして来たのだと納得して死ぬまで優しく片桐を宥める克哉に萌えた。

五十嵐太一 (CV:大石けいぞう)

この手のわんこ系キャラクタは好みじゃないし、初めて喫茶店に訪れた克哉が食事中なのにまとわりついてあれこれ話しかけて来たり、二度目の来店時には克哉に食器を洗う手伝いをさせたりなど厚かましく感じて太一ルート序盤はテンションが上がらなかった。更にバンドをやっていると知った時は、バンドマン設定が地雷とまでは言わないもののツボからは相当に遠い設定だったこともあって更にやる気が減退したが、違法サイトを教えてもらうところから少し盛り返してくれた。その後は違法サイトのことで太一と口論になり、反論できない克哉が眼鏡に頼って眼鏡克哉が太一を四つん這いにさせて嬲るシーンはテンションが上がったものの、太一を言葉で捩じ伏せるのかと思いきや体を嬲る方向で太一を追い詰めようとしていたのは残念。言葉では勝てないから体に聞く、てのは太一に対して言葉でやりこめる自信がないからで、正直ここの眼鏡克哉には落胆した。まあこの人は体で言うことを聞かせてやるのが得意なのでしょーがないか。でも BAD ED とはいえ眼鏡克哉×太一が見れたのは美味しかったなあ。可能ならもっと詳しく描写して欲しかった。

眼鏡克哉が最後までせずに太一を解放するとハッピーエンドに到達するが、姿を消した太一を追って仕事を休んで高知まで行ったり、互いの気持ちを確かめ合って結ばれたかと思えば父親の前で「どうか太一を、オレに下さい」とプロポーズまがいの宣言をしたり、バンドをやるためにアメリカまで太一と駆け落ちをすることになったりで展開が早くあっという間に終わった感がある。とりあえず五十嵐家がエキセントリックな人間だらけなのは把握した。そして辿り着いたエピローグは、太一がバンドマンだと知った時から危惧していた展開に近いものでキツかった。バンドマンが主人公への愛を捧げてライブで歌う展開が苦手で、私がバンドマン設定のキャラクタに警戒してしまう原因にもなっているが、太一はライブでは歌わなかったものの MGN の新商品のタイアップになることが決まった新曲に自分と克哉とのことを歌詞にしたらしく克哉曰く惚気ソングになっているそーで、それを全国で垂れ流すのかと思うときっついなあ……。

須原秋紀 (CV:大海原渉)

秋紀は最初から克哉に夢中なので攻略のし甲斐がなく、秋紀自身の言動もアタマのワルい感じで魅力がなく、秋紀ルートはフルコンプのための作業にしかならなかった。そして克哉も最初から最後まで余裕を崩さず、気まぐれを起こしては秋紀を可愛がったり躾けたりするだけなので見ていてつまらなかった。あーでも秋紀がこっそり飲ませようとしていた催淫剤が効いてないあたりは笑った。つーか何で効いてないのか。

ところで秋紀は克哉の飼い猫になることを選んで克哉の部屋で監禁状態の上に性奴隷みたいな結末になったが、いくら合意の上とはいえ秋紀はまだ学生っぽいし、これは結構危険なのではないか。秋紀の家は裕福らしいが、家族が家宅捜索でもして発見されたら克哉の人生は終了する。そんなリスクを冒してまで克哉が秋紀を飼うかどうかは疑問。

Mr.R (CV:ルネッサンス山田)

結構好きなキャラクタだった。正体はわからずじまいだったけど、この人も眼鏡克哉同様になかなか受けになってくれなさそーな雰囲気があるので、眼鏡克哉×Mr.R のエロシーンはがっつり見たかったなあ。でもそれ以上に見たかったのはやっぱり Mr.R×眼鏡克哉が見られる「資格の喪失」ED。やっぱり眼鏡克哉には受けて欲しい。