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十三支演義 偃月三国伝2

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『十三支』続編。もしかしたら現時点でのマイベスト乙女ゲーになるかもしれない。前作も楽しかったけど今回もすげー楽しかった……。特に諸葛亮曹操周瑜張遼ルートが気に入ったけど、張飛ルートも面白かったし劉備趙雲夏侯惇ルートも楽しめた部分はある。ネットじゃ評価が分かれているみたいだけど、私は今作のほうが前作に比べてもアベレージは確実に上がったと思ったし好きだなあ。

まず赤壁の戦いは有名だし、今回も前作のように大筋ではすべてのルートで同じ展開を辿るのかと思いきや、半分は赤壁に至らないシナリオだったのがありがたかった。ただ赤壁に突入するルートは展開は同じなのに既読みスキップできない箇所もあり、そこは相変わらず面倒。ちなみに攻略対象が増えて八人と多くなっているが、前作ほど長くはないし意外にサクサク読めた。新規キャラクタも魅力的で掛け合いも楽しかった。中でも軍師が登場したのが大きい。特に諸葛亮は彼がいるだけで進行速度も段違いだったし、突然関羽が良策を思いつくような不自然な展開もなくなった。前作から引き続き登場している関定、蘇双も役割が明確になって輝いていた。この二人のツッコミは楽しかったなあ。

そして今回は序盤でまさかの世平退場で一気に引き込まれたし、結果として劉備張飛が覚悟を決めて成長するのも良かった。不自然に偃月を絡めてこなくなったのも良し。それとやっぱり私は三国志が好きなので、動転する乱世を堪能できたのが嬉しかった。軽く燃えた場面もあったし、そこはちゃんと盛り上げてくれていた。

システムはいつものオトメイト仕様。いつも思うけどオトメイトのシステムで優秀なのは巻き戻し機能が搭載されている点だなあ。ほんとこれは便利。それと二周目から個別ルートを選択できるようになっていたのもありがたかった。今回も健在だった桃園システム、介入システム、タイミングシステムは別になくてもいいんじゃねとも思うけど、邪魔というほどでもないしまあいいや。それよりも桃園のエピソードがちゃんと面白い内容になっていたのは嬉しかった。特に曹操軍は可愛いエピソードが多くて本当に楽しかった。前作の桃園シナリオはほんっとおおおーーーーーにつまらなかったからな……。

それにしても赤壁に至る条件が「劉備覚醒」と「曹操関羽の正体を知ること」にあるのが笑った。これって突き詰めて言えば関羽の取り合いとも言えるのが何とも。

「昔から男が戦を起こす理由なんて国か、女なんだ……」

おかげで周瑜の台詞が真に迫って来た。ほんと壮大な乙女ゲーなのな『十三支』って。

関羽

関羽は特に好きでもなく嫌いでもなかったんだけど、今作の関羽は前作より好意的に見られた。前作の感想でも書いたけど何かに依存せずにはいられない性質で、そこをもーちょい掘り下げてくれれば面白そうなんだけどなー。劉備に甘い自覚がないのは結構やばいと思った。ちなみにネットの感想をざっと見たところ「関羽が恋愛脳になった」とよく言われていたけど、私はあまり前作との違いは感じなかった。前作をプレイしてから数ヶ月が経過していて記憶が薄れているせいもあるんだろうけど。ただ前作ほど圧倒的な武力を感じる場面は確かに少なかったかな。これは諸葛亮の策に助けられる場面が多いせいか。

しかし今回は前作以上にたいへんな目に遭っていたよーな。張遼ルートなんて前作の呂布のような存在にされてしまうからなあ……。お疲れ様でした。

劉備 (CV:石田彰)

劉備は相変わらず厄介なヒロインそのものだった。猫族が平穏な生活を手に入れるためには国が必要だと考えて長になる覚悟を決めたかと思えば、曹操軍に追われているのにグズグズしてなかなか船に乗らなかったり難民を捨て置けなかったりする。この手のタイプのヒロインは他の作品でもよく見たな、と笑ってしまった。元々私は三国志劉備が好きではないので『十三支』の劉備を好きになれないのも当然というか……。世平を殺してしまうシーンは、劉備のせいだけとも言えないので可哀想だとは思ったけども。

今作では赤壁に至るための必須条件が劉備の覚醒にあるので、赤壁の戦いが描かれる劉備ルートで成長後の劉備の姿が見られるのがショタ属性がない私には嬉しい展開、になるかと思いきやそうでもなかった。劉備ルートは自分の幸せを選ぶか猫族の幸せを選ぶかを劉備が迫られる話で、しかしどちらも選べず暴走し、止めると言いつつ結局何もできなかった関羽と呪いで葛藤する劉備が二人でずっとぐるぐるするので途中で飽きた。関羽の慰めも毎回口だけで同じよーなことしか言わないから「いつまでやってんだソレ」と虚ろな目で二人を眺めていることが多かった。「どんな劉備劉備」と言いながら関羽がそれをきちんと理解してないのも確か前作でやったんじゃなかったか。後半は尚香との政略結婚があるけどこれも中途半端に終了。白銅の登場についても、超展開自体はあってもいいけど白銅が関わることで面白くなるわけでもないのがな……。というより曹操贔屓としては、せっかく曹操と戦争をしていたところに突然白銅が割り込んできたのが残念。ただ劉備が呪いごと自分を受け入れることで金眼の力を自分のものにするというオチは、前作の劉備ルートの結末で金眼を倒しきれなかったことを考えたらこれしかないかなと思える着地点で良かったんではないでしょーか。でも私は BAD ED のほうが好みだった。関羽だけを連れて何もかもを見捨てて逃げるんだけど、劉備は新たな罪を重ねても関羽なら許してくれると思っていてそれはその通りだろうし、これはずっと関羽劉備を甘やかしてきたからこその結末でもあるのがいい。眠る関羽を見つめる劉備の CG も良かった。

しかし劉備ルートで印象的だったシーンはほぼ曹操関連なんだよなあ……。賈栩から関羽が混血であることを聞かされて衝撃を受けているところに張遼の後押しで「!」「!!」とエクスクラメーションマークを増やして反応するのが面白すぎたし、その後は関羽を寄越せ寄越せと追いかけてくるもんだから、一番最初に劉備ルートをプレイした私にとっては久し振りの本気モードの曹操との再会で大歓喜だった。

劉備に関しては、白劉備と闇劉備のチェンジがシームレスなためにシュールに見えるのが面白かった。死体がゴロゴロいる中でイチャイチャしようとする黒劉備のシーンも好き。張飛ルートのようにこれから人が死ぬかもよ、という時にイチャイチャすると気になるけど、すでに死体になっているのであれば私的にオッケーらしい。

張飛 (CV:岡本信彦)

今際の際の世平に猫族のことを託されたという重い背景があるため、張飛は序盤から雰囲気が違った。「姉貴」「姉貴」とは言うけどやかましくないし、感情に任せて動くこともなくなった。そこで頑張ろうとして空回りするのかと思いきや趙雲に忠告されたからか回避していたし、趙雲にいちいち嫉妬することもない。元々ムラがあるだけでやれば出来る子だとは前作から言われていたし、それが実証された形か。やや別人に感じる時もあったけど、張飛も自分に自信が持てず悩みを吐露する場面もあったりして上手くバランスが取れていたかなと。そんな張飛を、関羽が一人の男として意識するようになるのも自然で理解しやすかった。明朝に数万の兵士が処刑されるってのにイチャイチャするのはどうなんだろうとも思ったけど、まあ『十三支』のお家芸と言えなくもないか。桃園のおまけシナリオでは墓前でイチャイチャしていたけどこれも同様に。

張飛ルートで面白かったのは色んな「人間」たちの描写があった点。序盤で許都の猫族の村を襲撃するように煽ったのが劉表だったことが判明したり、曹操軍に降った荊州兵とのいざこざがあったり、猫族に偏見を持っていない人間たちに出会ったりとそうした描写が多い。これも前作で人間との共存に導けた張飛らしい展開かな。それと猫族に優しい江陵の人々には驚いた。何か裏でもあるのかと思ったら本当に優しかったもんなあ。猫族は誰からも歓迎されない一族だと思っていたのに、ここに来て猫族に優しい地域の人間が登場するのは少し残念なようなほっとしたような……って我ながら酷いこと書いてんな。

そして世平が死んだのは劉備のせいでもあるんだけど、あくまでも劉表のせいだという考えの関羽はブレない。さすが劉備第一で劉備を甘やかさずにはいられない主人公。ただ、劉表の策略によって辛い目に遭ったのは大切な人を殺す羽目になってしまった劉備もそうなのに、そこがスルーされていたのは意外というか不自然に感じた。劉表に援軍を頼みに行く時も劉備を一人残して(といっても猫族は何人かいたんだろうけど主要メンツは不在という状況)関羽張飛が二人で行ってしまったのも気になった。援軍を頼みに行くだけなら張飛だけで十分だから尚更。まあ何が何でも劉備そばにいて劉備劉備劉備劉備第一だった劉備ルートの後にやったからだろうけども。

でもこうして色んな人間と関われる張飛だからこそ、感情が欠落している賈栩がクローズアップされたんだろう。賈栩は面白いキャラクタだったなあ。賈栩のおかげで張飛ルートを楽しめたところもある。しかし賈栩を引き抜くことになるとはさすがに予想出来なかった。しかもあっさり加入。でもこの展開はありかなと思える。張飛が賈栩を誘う時に「いつ裏切るかもわからんぞ」と言われても裏切るなとは言わず、「裏切るまではオレたちと一緒に仲良くしよーぜ」と答えたところはいいなあ。何気に劉備も活躍していて関羽劉備の成長を感じる場面があり、このルートは関羽にとって劉備張飛という「弟のように見ていた存在へのお姉ちゃん意識」からの脱却ルートでもあったのかな。

一方 BAD ED は劉備張飛も殺されて心を壊した関羽が賈栩に引き取られていたけど、賈栩は恐らく関羽にそれほど興味を持てないだろうし曹操に引き渡されてそう。

というわけで張飛ルートは安定感があって楽しめた。前作の張飛ルートではイライラさせられっぱなしだったけど、今回の張飛は本当に大躍進だった。曹操がリミットブレイクしてくれなかったのでそこは物足りなかったけど、まあ基準が曹操ってのもどうよという話で、それを抜きにすればちゃんと面白かった。

諸葛亮 (CV:櫻井孝宏)

『十三支』は諸葛亮を目当てに購入していたので、諸葛亮に初めて会えた時は「やっとここまで来れたんだなあ……」と感動してしまった。見た目がまず好みだったし雰囲気からも好きなタイプだろうなと思っていたけど、予想以上に好きなキャラクタで幸せだった。自分は戦えない人間なのだとドヤ顔で偉そうに言える諸葛亮おまえさいこうだな! だからこそ強い関羽の「あなたは私が守る」という台詞も映える。更に関羽は感情的でアホの子だから、合理的かつ論理的思考の持ち主である諸葛亮との相性も悪い。私は相性の悪い関係から始まるパターンは大好物なのでこの時点でわくわくしていた。

「元来私は、お前のような考えなしは大嫌いだ。物事の本質を理解せず、心の思うままに動く。馬鹿としか言い様がない」

「自分ならなんとか出来ると思っているのか! 賢しらに些末な正義を振りかざすな!!」

「一時の偽善的な感情で仲間を危険に晒すような真似はするな」

諸葛亮に叱られる場面も多く、衝突も起こる。でも関羽のそうしたところに諸葛亮も助けられてやがては関羽の良さを受け入れ、頼るようになっていくのが自然で良かった。特に自分が足手纏いになった時は見捨てろと告げているのに頑として受け入れない関羽諸葛亮が呆れ、そこから反転して「私を助けるのはお前の義務だ。せいぜい頑張れ」と開き直るのが可愛かった。ここで関羽が(あ、この偉そうな感じ……よかった、いつもの諸葛亮に戻ったみたい)と考えているのも笑った。ちなみにこのシーンの前に倒れた諸葛亮関羽が担いで荒野を歩いたことが判明するんだけど、そこは絵が欲しかったぞう。

中盤には諸葛亮関羽の働きを褒めるので関羽が戸惑うのが可愛い。この二人は互いの欠点を上手く補えるので、最悪だった相性が抜群になっていくのも美味しい。

「無理に私のようにせずともいい。人を疑わず、信じたいと思えるのはお前の美点だ」

「お前はそのままでいろ。お前の分まで私が人を疑ってやるから」

このシーンは地味に来た。偽善的精神の持ち主でお人好しな主人公は珍しくもないけど、関羽がこういう主人公で良かったなと思えた瞬間だった。更に関羽は武で諸葛亮を、諸葛亮は知で関羽を守る、という形に着地するのも良かった。だから一番好きなキャラクタは曹操だけど、カップリングとして見るとこの二人が一番好きだ。

二人のやり取りも楽しかった。毎度毎度諸葛亮関羽を睨みつけたり、諸葛亮に容赦なく言われて関羽が毎回「ひどい……」と零したり、何かと関羽にちょっかいをかけようとする周瑜諸葛亮があの手この手で牽制するのも可愛かった。この牽制も段階を踏んでいくのがいい。最初は積荷の確認に行かせることで周瑜から関羽を引き離し、書庫で寝る関羽の面倒を見ようとした周瑜にそれは私の役目だと言い張って引き離し、周瑜に話を持ち掛けて関羽を引き離し、周瑜関羽を連れて行こうとするとついには手で引き留め、最後には関羽を嫁に欲しいと言う周瑜を「あの娘は私がもらう」とぴしゃりと撥ね付ける。周瑜ルートでも諸葛亮の出番は多いし、新規攻略対象の二人の絡みはどれも面白かった。

あとは張飛関羽には諸葛亮のお守りばかりさせていると言った時に「ふむ。私はこいつにお守りをされていたのか。これは新説だな」としれっと言ってのけたり、関羽を妻に迎えるつもりでいる孫権に動揺したり、心にも思ってないことでも平気で言える人間だと関羽に思われていたことに傷ついたと吐露したり、自分の武器と鎧は持っていくのかと問われて「必要ない。使う気もない」と即答したり、「ヘンなウチワ」と言われたことを気にしたり、恥ずかしがって傷を見せてくれない関羽にイライラしたり、関羽を「ど阿呆」と呼んだりするのもニヤニヤした。諸葛亮の抱えるトラウマ救済も自然で無理がなく、関羽の言葉も優しくて良かった。関羽から不意打ちのキスを食らって慌てる諸葛亮という貴重な光景が見れる ED も CG を含めても可愛くて、一番好きな結末かもしれない。赤壁の戦い諸葛亮の有名なエピソードも含めてしっかり描写されており、三国志の内容を知っていても面白かった。曹操のリミットブレイクがないので綺麗な赤壁の戦いになっていたけど(綺麗と表現するのもなんか酷いが)王道で面白かった。だからこそハッピーエンドが見れた時の爽快感が増したんだろう。桃園のおまけシナリオでは独占欲を剥き出しにしてくるところも可愛いなこのドヤツン軍師……。

というわけで諸葛亮ルートは戦のシーンが多い。諸葛亮の策が重要になってくるからそれを描写する必要があるからだろうけど、それを読むのも楽しかった。ルート道中でも次から次へと危機が押し寄せて来て、それを諸葛亮の策で辛うじて切り抜けていくから緊張感が途切れない。三国志はそれほど詳しいわけでもないけど、知識ゼロであればもっと楽しめたんだろうな、とは諸葛亮ルートをやっていて強く思った。論陣でも強いところを見せてくれるあたりも爽快でいい。とにかく読んでいて楽しかった。

諸葛亮の策を信じ切れなかった関羽曹操を殺そうとして失敗し、夏侯淵に斬り殺されてしまう BAD ED は切なかった。関羽に信じてもらえず、自分が信じてもらえなかったせいで関羽どころか猫族すべてを死に追いやってしまう結果となってしまった諸葛亮の絶望は如何程なのかと思うと……。あの後に曹操に殺されてしまうんだろうなあ。ただこの時の CG はいい。諸葛亮の必死な表情がとても好き。

序盤であっさり猫族の軍師になってくれたけど、何故諸葛亮ほどの男が猫族にここまでしてくれるのか、という序盤からあった謎に対する答えにも納得できた。特に「私にとって猫族は英雄だ」と言う場面は少し感動もした。諸葛亮が言うと破壊力がある。その英雄が周瑜だったのも、諸葛亮周瑜の絡みの多さを思うと納得というか妙に嬉しかった。

しかし猫族に軍師が加わったことで諸葛亮一人の肩に一族の命運が乗っかる状況になっていて、劉備の甘い判断に諸葛亮の負担が増大する場面も多く気の毒に感じることも多かった。まあ諸葛亮はそんなことは最初から承知の上なんだろうけど。前作では趙雲に助けられてなんとか生存できていたようなものだったし、趙雲にしろ諸葛亮にしろ「人間」に頼らざるを得ないあたり猫族は本当に弱い。そして武力だけは高く劉備という爆弾も抱えてるのが厄介。諸葛亮には本当にお疲れ様でしたとしか言い様がない。MVP。

ちなみに軍師としても物語としても進行役としても弄られ要員としてもツッコミ役としても優秀なので、他のルートでも活躍が多いのが美味しかった。周瑜ルートでは特に出番が多かったし、趙雲ルートでは猫族に弄られてて笑った。

趙雲 (CV:鈴村健一)

趙雲は相変わらず安定感のある男だった。安定感がありすぎて私にはそれほど刺さらないはずなんだけど、不思議と好きなキャラクタだった……が、前作は袁紹のおかげで楽しめたものの今作はどうも上手く盛り上がれなかったような。特に前半はダレた。

趙雲と言えば長坂の戦いが有名なので前半はそこがハイライトになっているが、関羽の目の前で難民の子供たちが容赦なく斬り殺されていくという全年齢乙女ゲーにしては結構惨い展開で驚いた。私は非道な策も躊躇なく実行できる賈栩に萌えていたのでアレなんだけども。心というものを持たない人形である張遼と、心というものを持てなかった人間である賈栩の短いけど些細なやり取りも良かった。が、それ以降は眠かった。

趙雲が戦意と声を失った関羽を連れて旅に出るんだけど、二人が戦線離脱するから戦闘もなければ起伏もなく、ひたすら趙雲関羽に優しく接して癒そうとするので退屈。関羽が復活してからも二人でイチャイチャしているので、二人を見つめる私の目も段々と虚ろになっていったなあ……。更に関羽が復活したばかりで本調子じゃないのに偶然立ち寄った村が危険だと知って助けようとするのでぐったりしてしまった。これでこそ関羽だとも思うし納得は出来るんだけど、早く劉備たちのところに戻ればいいのに何を呑気な、とイライラしてしまうのはどうしようもない。おまけに戦争らしい戦争シーンもないので盛り上がらん。前作と合わせてもここが一番退屈な時間だったかもしれない。郭嘉が率いる曹操軍と戦ったりはするけどそれも面白いわけじゃないしな。それよりも「早く郭嘉が何かやらかしてくれないかなー」とそれだけを楽しみに読み進めていた。

馬斗が関わってきてからは盛り上がって来た。幽州に戻ることも叶わず猫族に付き添ってきた趙雲がかつての部下にそこを糾弾される。「戻らねばならないのにその時その時に助けたい人がいていつまでも戻らないでいる」という状況は、烏丸に関わろうとして劉備のところに戻ろうとしない関羽も今まさに同じことをしているので言及されるのかな、とも期待していた。まあされなかったんだけども。郭嘉の拷問もぶっちゃけ期待したほどでもなくて物足りなかったというか、人間と十三支との間に子供は出来ないから色々出来ちゃうよねー的なことを郭嘉が言い出した時はテンションが上がったんだけど当然そんな展開はなかった。全年齢乙女ゲーに何を期待していたんだ私は……。

趙雲ルートは関羽趙雲恋物語よりも、弱者は死ぬべきだという考えに囚われている郭嘉の言動の数々、一瞬関羽のためを思って殺そうとしてくれていた夏侯淵趙雲と馬斗のやり取りや諸葛亮の考えた新たな形の同盟と作戦のほうが面白かった。諸葛亮の策については少しずつ城を抜け出して曹操にバレないで済むかどうかは疑問だし、関羽趙雲の戦線離脱も結果として諸葛亮の大胆な策に繋がるというご都合主義を感じさせる構成も引っかからないではなかったけど、それも『十三支』ならいいかなと思えた。

桃園のおまけシナリオでは公孫賛の墓前でイチャイチャしていたけど、ここで趙雲関羽に求婚していたのが実は図らずも「父親の前での報告」になっていたのは面白いなあ。更に趙雲との間に子供が出来ていて驚いた。人間と十三支との間に子供は滅多に出来ないんじゃなかったのか。いやでも関羽が混血だからそれもあり得るのかな。あるいは趙雲のほうに何かあるのか。人間離れした強さを持つ人物として趙雲曹操張遼が色んなルートで挙げられていたけど、張遼は人形、曹操は猫族の血を引いているから理解出来る。だからこの中で趙雲だけが浮いてんだよね。船上でも船酔いもなくケロッとしていたし、もしかして猫族の血が少しでも混じってたりするのかなとか考えてしまった。

ところで関羽趙雲との間に子が産まれたことを知れば曹操が追いかけてくるんじゃないかなとか考えるんだけどどうよ。その際に関羽が混血であることを知ったらもっと恐ろしいことになりそうでわくわくしちゃうなあワハハー(超笑顔)。

BAD ED では馬斗の攻撃を避けられず趙雲死亡。ここから郭嘉 ED に繋がっていくのは前作の袁紹 ED を彷彿させる流れで笑ってしまった。趙雲は自分の死後に関羽を他の男に奪われる運命の下に生まれてしまったのか……。

曹操 (CV:鳥海浩輔)

久し振りに地を這うような鳥海の声や狂ったかのような高笑いを聞けて嬉しい。

序盤から張遼を引き入れようとしてスルーされたり呂布に「根暗で陰険な若年寄り」と言われていたことを知って凹んだりと、曹操がすっかり萌えキャラになってて笑った。それと「ふっ」の連呼も健在だった。これがなけりゃ曹操ではない。そして周瑜ルートの曹操も輝いていたけど、やはりなんだかんだで曹操ルートが一番楽しかったなあ。

今回は序盤で関羽が混血であることを知り、曹操が早速関羽を捕獲してウキウキ。「お前は私の大事な大事な同胞だ」だの「私とお前のただ二人この血を持って九天より落とされたのだ」だの「私たちはたった二人きりなのだ」だの「私の花嫁」だのととにかく同じようなことを何度何度も繰り返す。それも関羽がずっと「お前は何を言っているんだ」的な反応しかしないからなんだろうけど、何度も繰り返されることで曹操の異常性が出ていて良かった。しかし関羽のほうも曹操が猫族を皆殺しにしたという話を聞いて絶望し、曹操を殺すためにそばにいることを誓うのが最高。ヒロインが攻略対象に「殺してやる!」と憎悪を向ける展開は大好物だからテンションが上がったし、曹操が「いつでも私の命を狙うがいい。それでもお前が愛しいことには変わらない」と返すのも燃えた。そうして殺意で繋がったまま強引に祝言を挙げるんだけど、この時の CG がとても好きだな。その後曹操関羽を孕ませようとしたところで殺そうとするものの失敗し、後がなくなった関羽彼岸花を飲み込んで自殺未遂。これにはさすがの曹操もショーーーーック。ここで憎んでいる父親と自分が同じことをしていたのだと曹操が気づかされるのはいい流れだった。

これを機に曹操関羽には触れないけど城にはいてくれと言い出して、そこから二人の距離が徐々に近づいていくようになるのが丁寧で良かった。というか (・ω・`) モードになった曹操の可愛さが凶悪で私が死んだ……。関羽はまず曹操が父親の幻覚を見ていることを知るが、これは素でびびった。確かに曹操は前作から何かと極端な人でそれ故に危険なところもある人だったけど、今回は憎き父親の幻覚を相手に一人で荒れて自分で自分を追い詰めるので「乙女ゲーに出ている場合か! 病院行け!」と言いたくなるような有り様だった。その上曹操が覇道を目指すのは父親に自分を認めさせたいからなのに、その父親を曹操は殺してしまった。認めさせる相手の消失。曹操は自分で出口のない地獄を作り出してしまったようなもので、だから止まれず他国を侵略していく。これは説得力があったし、そんな愛し方も愛され方も知らない孤独な曹操をお人好しの関羽が放っておけないと考えるようになるのも自然だった。というか私が放っておけなかった(えー)。

ここから曹操の心を安定させるべく、関羽が点心を曹操のために作ったり休暇を取らせたりデートしたりするのが楽しかった。というか休日の過ごし方を知らない曹操の可愛さが天元突破していた。前夜から落ち着かなくてあまり眠れなかったり(遠足が楽しみな幼稚園児か)、朝早く起きたもののやることがなくて部屋をうろうろしたり(クマですか)、朝食を食べただけなのに関羽に喜ばれて戸惑ったり(夏侯惇と賈栩も曹操が朝食をとっていたことに驚いていたのがじわじわ来た)、関羽を待っている間に一人でぼーっとしているところを兵士に見られて本気で心配されたり(普段どれだけ生き急いでんのだ)、草原デート中に寝てしまった関羽の頬に思わず口づけてしまったり(触れないという約束をつい破ってしまったとしょんぼりしていたのは笑った)とニヤニヤするポイントが多くて見ている私も幸せだったなあ……。関羽に縋る曹操の頭を関羽がよしよしと撫でる場面もあり、曹操はまさに大きな子供だなと改めて実感もした。

空を飛び続ける孤独な鳥(曹操)と地上に咲く花(関羽)のやり取りも良かったし、そこで曹操が本当は止まりたがっていることに気づき、破滅的な生き方しかできないでいる曹操を止めるために関羽が敢えて敵対することを選ぶ流れは燃えた。

関羽よ、私たちは戦いの中で出会った。ならばそれが似合いなのかもしれぬな」

「切先を互いの喉元に突き付けながらそれでも愛を語らうか」

「そうね。それもいいかもしれない」

「隣にいて、傍に寄り添って、愛を伝えてそれでもあなたが止まらないのなら」

「長刀持って正面に立つわ。それでわからせてあげる。わたしがどれだけあなたを愛しているのか」

なんかもう完全に二人の世界だった。すんげえええバカップルですよこれ。関羽曹操を愛しているから曹操を止めるために殺し、曹操は覇道を往くために自分の弱点を排除すべく愛している関羽を殺す。しかし「序盤の憎いから殺す」展開と、終盤の「愛しているから殺す」展開の対比はいいなあ。そしてどちらの場合でも曹操は自分を殺そうとする関羽を愛おしいと思っているのがまた……。なんか曹操ルートだけ壮大な殺し愛スペクタクルロマンになってて笑ったけど、言うまでもなくこういう展開は大好きなので楽しかった。ある意味で迷惑を振り撒くのが曹操一人から関羽も加わって二人になってしまった気がしなくもないが、それでこそこの二人だろう。関定が「えーもうなんだよこの夫婦。すげぇめんどくせー」と言っていたのはその通りすぎてふいた。

クライマックスでは、諸葛亮の仕掛けた火計によって燃え盛る船上で対峙するのもドラマティックだなあ。やがて関羽の勝利で決着がつくが、曹操ルートは赤壁をやったとしても曹操が負けるのかどうかがプレイ前から気になっていて、でも私としては大敗してもいいんじゃないかなと考えてたんだけどそこは上手く繋げてくれていた。しかし戦い続けることを止められてしまった曹操は一気に腑抜けた王に。ここで夏侯惇が必死に曹操を支えていたのは良かったけど、流れとしてみるとちょっとグダグダだった。張飛趙雲関羽のために曹操を見逃すのはお約束を踏襲していて熱いシーンではあるが、これまで無理がなく一気に楽しめるような、でも派手な展開が続いていただけに急に稚拙な展開になったのが少し気になった。まあ曹操ルートはドラマティックで大いに盛り上がるシナリオだったし、ここは些末な問題なんだけども。この後ももう一つ山場が用意されているけど、盛り込みすぎてしつこく感じるか感じないかのギリギリのラインだったしこれはこれでいいかな。止まってしまった曹操に新たな生き方を提示する関羽はイケメンだった。

最後は二人が結ばれた後、夫と敵対して夫を謀って夫の軍を壊滅に追いやった人間が妻であってはならないからと関羽曹操の前から失踪。これは予想してなかったので驚いた。関羽の考えはもっともだし納得もできるけど、前作の曹操ルートといい今作の周瑜ルートといい自分のルートといい曹操は上げて落とされないといかん縛りでもあるんか。おいやめろ萌えるだろ。「お前はなんて残酷な女なのだ」と悲痛な声で関羽を追いかけようとする曹操を見て悶えていたことは言うまでもなく。「立派な君主になってね」という関羽の言葉が、曹操にとって新たな呪いに成り代わってしまうのもたまらないものがある。でも曹操も落とされっぱなしではなく、最後には約束通り賢王になってから再び関羽を見つけて迎えに来る。ここは感動した。序盤で逃げようとする関羽にどこに行こうが必ず見つけ出して捕まえる、と曹操が言う場面があったが、それがちゃんと果たされていることに気づくと尚更。私は賢王曹操よりも覇王曹操が好きなので寂しくもあるけど、関羽の愛と英断によって曹操は血と父親の呪縛から解き放たれ、解き放たれた曹操が地道な努力を積み重ねたことで到達できたハッピーエンドは素直に祝福したいなと思えた。おめでとう。おまけシナリオでは二人がひたすらセックスしていたような記憶しかないけどもういくらでもしてくれ。ちなみに二度目の祝言を挙げる際、久々に再会した猫族と盛り上がってなかなか戻らない関羽に痺れを切らしてイライラしている曹操夏侯惇夏侯淵が必死に執り成す場面は笑った。関羽がごめんねーと戻ってくると「気にすることはない。久しぶりに会えたのだ。気が済むまで話すといい」としれっと物わかりのいい夫を演じる曹操にも吹いた。そこで夏侯淵が引いてるのも可愛い。めっちゃ楽しそうだな曹操軍……。

今回は恋愛から執着へと変わっていった前作とは逆に、執着から恋愛へと変わっていくので無理のない流れになっていたし、曹操が混血に拘る理由や父親の呪縛に囚われた背景などもわかりやすく説明してくれるので話に没入できた。前作の曹操ルートも面白かったけど、流れとして自然だったのは今作のほうかな。でもどっちも甲乙つけがたいくらい好きだなあ。ほんとうに楽しかった。曹操曹操ルートも最高だった……。

そして印象的だったのは関羽曹操に向ける愛情の深さ。乙女ゲーって基本的に主人公が愛されているなと感じることが多いけど、曹操ルートは主人公が攻略対象を深く愛していることが伝わってくるのが貴重で面白かった。終盤の曹操逃走時の張飛趙雲の件を見ても関羽がこの二人に愛されていることが伝わってきたけど、そうして張飛趙雲がどれだけ関羽を大事に思っているのかを書いた上で、それ以上に関羽が真っ直ぐに曹操だけを愛していることを描写していた。赤壁の戦いで「曹操のこと嫌いで別れたわけじゃないんだよな?」と聞かれて「ええ……愛してるわ」とはっきり答える関羽にあの周瑜が少し狼狽えたり、諸葛亮に「あいつはまだお前のことを愛しているんじゃないのか」と言われる場面があったけど、当事者同士で愛を告げるのは基本としても、こんなに真面目に衒いもなく一人の男を愛していることを他者に言及される乙女ゲーは少し珍しい。少なくてもヒロインの相手の男への深い愛情を強く描写するパターンはありそうであまり見ない(最近だと対アリの百合花が凄かったけど)。それくらい魂をかけて関羽曹操を愛している印象を受けた。そしてそこまで関羽が変わったことにも納得がいく。女は母になると強くなるとはよく言われるけど、あれに近いんじゃないかな。前作から言われているように曹操は大きな子供そのもので、関羽も母性本能を刺激される場面があった。劉備張飛が守るべきものを見つけて成長したように、関羽曹操という存在を守るべく変わっていったのかなあと。関羽曹操に向ける愛情は母親じみている。

それともう一つ印象に残っているのが寝所での二人の様子がそのまま二人の距離を感じさせるものになっていたこととか。最初は寝所で半分こしたものの触れ合わないようにして寝ていたのに手を繋いで寝るようになり、やがて曹操関羽を抱きしめて熟睡できるまでに至る。最後にはセックスばっかしてたけどこれも象徴的で面白い。

BAD ED は廃人になった曹操関羽が愛でる ED。終わりのない戦いを続ける曹操を止める、という意味では関羽の目的は達成されているのか。何気に前作曹操ルートの BAD ED とは対になっているのが美味しいなあ。でも前作の方が凄惨で好きだけど。

曹操はほんとうに私の好みの要素だけ切り取ったみたいなキャラクタだった。中でも面白かったのが曹操の危うさの描写。曹操より深刻なキャラクタは他にもいるのかもしれないけど、曹操の場合は「この人はやばい」と感じさせる設定と描写が超一級なんだよね。前作では関羽一人のために戦争をしかけたり戦の最中に指揮を放り出して関羽を探し回ったり、今作でも関羽を捕獲するためだけに無関係の民を殺したり単身で最前線に飛び出したり五万の兵士を躊躇なく犠牲にしたりする。君主だから曹操が暴走すると曹操の元にいる何十万というすべての民が迷惑をひっかぶることになる。与える影響力が派手で大きく重く、それが見事に可視化されてしまう。関羽のことがなければ基本的には有能な君主でいられるから、そうしたギャップも効いてくる。だから曹操の危うさを想像しやすい。「うわあ……」とドン引き出来る。これが楽しい。その上曹操はとてつもない飢餓を抱えている分、関羽というたった一人の同族を発見した時の危うさにブーストがかかる仕組み。最悪で最高だなあもう。あとは孤独なところとか子供なところとか不憫な姿が映えるところとか中の人の演技だとか、いっぱいあるけどとにかく魅力的だった。

そいや前作をプレイした時から何故混血が誕生しないのかが気になってたんだけど、今作で呪いのせいだと言及されていた。金眼の呪いはどうもよくわからんな。でもその呪い設定のおかげで曹操という魅力的なキャラクタが誕生したんだから良し。

夏侯惇 (CV:鈴木達央)

毎度毎度、劉備夏侯惇を釣る作戦で真っ先に「十三支の女ぁ!!!」と関羽のほうに釣られているのが面白可愛い夏侯惇ルートにはいろんな意味で期待していた。前作の夏侯惇ルートは曹操関羽の正体を知らないままで終わってしまったので、今回の夏侯惇ルートで知ってしまったら地獄になるのではないかとわくわくしていた。「暴走した君主を止めるのも家臣の務め!」みたいな流れもあり得るけどそれはそれで見てみたいしなー。が、残念ながらそんな展開はなかった。夏侯惇ルートの曹操関羽どころか猫族への執着すら薄い。むしろ夏侯惇夏侯淵関羽に憎悪を募らせて暴走することを危惧しており、十三支の対応は他の者に任せたり「常に大局を見るのだ。戦では決して目的を見誤ってはならぬ」などともっともらしいことも言っててすんげーまともな上司やってた……。そして中盤以降は出番すら殆どない。まあこのルートは結局「曹操様は十三支たちを始め他の人間たちが考えているような悪逆非道な君主ではなくむしろ平和に導ける人だから曹操様を信じて戻って来い」というオチになるからしょーがないんだろうけども。ただ前作でも曹操は手中に収めた地域はきちんと統治しているし元来は有能な君主なんだろうな、とは感じ取れたし、曹操のそういう部分を見せるルートとしてはまあいい……のか?

と、夏侯惇ルートの感想なのにのっけから曹操の話になってしまったので夏侯惇の話に軌道修正。関羽が戦闘中に夏侯惇の目を潰してしまうところから始まるので、これは和解に時間がかかるんじゃないかなあと思っていたらそうでもなかった。目を潰されて関羽を恨むことになるのかと思いきや、夏侯惇は「単に俺の武があの女のそれよりも劣っていただけの話」と割り切っていた。そいやこういうキャラクタだったか。健全だなあこの人。私としては関羽を憎悪していて欲しかったんだけどな。その分夏侯淵関羽許すまじ、と盛り上がってくれるんだけどこちらもルート道中に綺麗に解決する。

関羽曹操軍に掴まってからは夏侯惇関羽を武人として見るんだけど、関羽が自分は武人ではないと言うと怒り出すし、更に「俺は貴様を倒し、武を極める」と何度も言うのが笑った。うわあ結構面倒なお人だ……。でもこれでこそ夏侯惇で可愛らしいところだとも思える。でも左目の傷をいちいち烙印と称するのはやめください笑うから……。

関羽夏侯惇夏侯淵荊州兵に掴まって捕虜になってからの展開は面白かった。夏侯惇の中の関羽や十三支への偏見が失われていく過程は丁寧に描かれていたし、武人ではなく普通の少女としての関羽の姿を目の当たりにすることで距離も縮まっていく。ここらへんは夏侯惇が村の女性にからかわれたりして顔を赤らめる場面も多く、いちいち可愛かったなあ反応が。一番ニヤニヤしたのはやっぱり事故チュー。夏侯惇のようなキャラクタにはラッキースケベが本当によく映える。まるでギャルゲの主人公のようだった(決してエロゲの主人公ではないところが夏侯惇夏侯惇たる所以だとも思う)。

終盤は切羽詰まった劉琦が関羽を騙してまで痛々しい抵抗をしたりもするんだけど、関羽夏侯惇夏侯淵諸葛亮のおかげでなんとか事無きを得る。全員で戦争を止める展開は力業だなーという感じがしなくもないけど、まあこれはこれで。しかし曹操から逃げるための行軍だったのに結局猫族は曹操のところに戻り(諸葛亮がうだうだと理由をつけていたけど説得力はなかった)、曹操も他の国に猫族の力を奪われるよりはいいだろう、ということで猫族を戦力にする気はないらしい。いいのかそれで。この曹操は出来た君主というより牙の抜けた君主という感じで物足りぬぇええー。

ちなみに関羽への気持ちに素直になってからの夏侯惇はデレデレだった。周囲に人がいるのに唐突にイチャイチャしだすのも相変わらずで笑った。夏侯惇がデレて趙雲みたいなことを言い出すと頬を十発ほど引っぱたきたくなるな……。ちなみに終盤は左眼の傷について「お前と俺はつながっている」を連呼するのも結構恥ずかしかった。関羽のつけた傷が禍根にはならず運命になる、てのが。さすが「完全無欠十文字!」の人の従兄……。

BAD ED では郭嘉による拷問で死んだ関羽を前に夏侯惇が絶叫。この夏侯惇はあのまま曹操軍にいられるのかどうかが気になるなあ。

他にも夏侯惇は船酔いになってそうだと猫族の会話のネタにされたり、水軍兵の訓練をしなければならないのに泳げなくて苦戦していたり、桃園シナリオで張遼に真似をされたり郭嘉のこじれた女関係の対応に追われたりと弄られキャラになっていたのが良し。

張遼 (CV:遊佐浩二)

プレイ前はまったく期待していなかったのに、蓋を開いてみれば私好みのシナリオで驚いた。超展開ではあるけどそもそも張遼の設定からしてぶっ飛んでいるのでそこは問題にするほどでもない。スチャラカ三国志だろうとなんだろうと「面白い」のが正義だ。張遼でなければ展開できない物語だったのも良かった。

呂布が消滅したことで新たな主を求めて関羽にくっついてくるんだけど、張遼の髪の色が金髪なこともあって関羽にひょこひょこと付いてくるひよこのようで可愛かった。序盤で特に印象に残っているのが周瑜関羽に嫁に来いと言い出す場面で、即座に張遼が「私もついて行きます」と会話に加わるんだけど、張遼は家事全般のスキルが優秀だからと蘇双が「なんて豪華な嫁入り道具なんだ」と突っ込む。しかし張遼は人形だから「道具」ってのは実は正解なんだよなあ、と考えたら面白かった。もちろん蘇双はそんなことは知らないで言ってるんだけども。それから心臓が悪いのかも、という関羽の体を診るために張遼張飛趙雲の目の前で関羽の胸に触れるシーンが楽しかった。ここで張飛趙雲が修羅のような顔になってたらしくて吹いた。天然は強し。そうしたやり取りを経て張遼が嫉妬や独占欲といった感情を覚え、人間らしくなっていくのはお約束とはいえ良かった。

中盤以降はかつて呂布に取り込まれていた妖怪が関羽の体を支配して暴れ回るんだけど、ここからが面白かった。呂布の再来とばかりに無敵に暴れ回るので誰も止めることが出来ず、基本的に主人に忠実であろうとする張遼関羽に従って共に数万人を虐殺。それ以降は関羽が苦しんでいることを知った趙雲が、関羽に殺させるくらいならと自分が先に殺したり相手を守るための嘘をつくことを覚えていくのがいい。またしても虐殺したもののその間の記憶がなく怯える関羽に、血の匂いを消すために髪を洗った上で下手な嘘をつく張遼と、張遼の言動や自分の髪の匂いから関羽が嘘の気配を嗅ぎ取って悲しくなるシーンは印象的だった。張遼が初めて人間らしさを発揮したのはここかもしれない。

そして関羽張遼に縋ってしまう。張遼は主人のすべてを肯定する存在だが、自分を見失いかけている関羽にとっては虐殺してようが何だろうが無条件で自分の存在を肯定してくれる張遼の存在が大きかった。だから関羽張遼なしでは生きていけないくらいに依存してしまう。元々関羽は猫族や劉備に依存している気配があったが、猫族にまで迷惑をかけてしまった以上は彼らに依存することも出来なくなり、そんな中で張遼だけが救いになった。しかし張遼関羽がこのような状態になったのは自分に原因があったことを知り、しかし関羽から離れたくない一心でそのことを伏せる。この互いに罪悪感を抱いたまま相手に必死に縋っている関係がとても好みだった。ハッピーエンドを迎えるのが難しい空気のまま停滞するしかなく、二人で必死に手繋いで漂ってる感。これは『薄桜鬼』の沖田ルートを思い出したなあ。それにしても、自分の命は長くないことを知った上で自分なしでは生きていけなくなるくらいに関羽に甘えられたい頼られたい依存されたいと願い、ひたすら関羽に尽くす張遼は残酷だ。そこがいいんだけども。そして関羽もまた張遼に残酷な仕打ちをする。妖怪が関羽の内にいる間は張遼が存在出来るから、張遼に縋らずにはいられない関羽は「張遼が消滅する現実」から逃げるために、あれほど大事に思っていた猫族や他のすべての人間がどうなるかも考えず、そして張遼の気持ちすらも無視して自分ただ一人のためだけに妖怪に体を明け渡してしまう。この関羽の自分本位な選択は好きだな。あちこちに手を差し伸べようとする関羽よりも、自分の欲求に忠実な関羽のほうがずっといい。関羽諸葛亮が散々指摘したように偽善的な行動をとる子だったけど、それも自分には猫族や劉備がいるという前提があってのことで、でもそれすらもなくなって最後に張遼しかいなくなった関羽張遼を失うことに耐えられない。だから関羽がこんな選択をしてしまうほどに弱くなったのも自然で納得が行く。関羽のこの変化は面白かった。

一方、劉備曹操孫権劉表関羽討伐軍を編成するんだけど、さすがにこの展開には笑った。流れとしては理解できるんだけど、戦争し合っていた人たちがたった一人の少女を潰すために力を合わせるんだからもー。しかしこの関羽の状況は官渡の戦いで暴走した劉備そのものだな、と序盤ですでに感じていたのにみんな呂布ばかり連想するのがもどかしかった。ここでやっと諸葛亮が言及してくれたけど、劉備が起こした虐殺事件は凄惨なもので、だからこそ曹操たちも警戒していたはずなのにみんな気づかないのがちょっと異様だったな。でもたった一人の少女に自分が手に入れた国を次々と壊滅させられていく曹操様がもうかわいそかわいそかわいそすぎてめちゃ笑ってしまったというかめっちゃ萌えた……。呂布×曹操はいいよなーと思っていた私には疑似呂布状態の関羽にこんなことをされる曹操、という展開が美味しくないはずがない。ご馳走様でした。

最後は大悲樹によって邪の気が浄化されるのを待つことで解決を図るが、浄化には数百年以上あるいは千年かかるかもしれない、ということで人形である張遼が待ち続けるという張遼の特色を最後まで生かしたエンディングになっていた。美少女が大樹に取り込まれるという図は『レンド』でもあったけど浪漫だなー。それと前作でもそうだったけど今回もこの二人は同時に死ぬので、そういうところにもそそられる。ちなみに桃園のおまけシナリオは転生後の二人が何故か関羽張遼だったころの記憶を保持したままで、更に今度は人間として生まれ変わった張遼とハッピーエンドを迎える内容だったけどこれは蛇足。浄化が終わり、二人で同時に消える瞬間で終わってくれれば完璧だったんだけどな。

一方 BAD ED は長い間待ち続けてようやく関羽の浄化が終わる瞬間に張遼が殺されてしまうところで閉幕。悪魔的なタイミングではあるけど悲壮感はあまりなかった……けどそこまで蛇足感もないしこちらのほうが好きな結末かな。張遼ルートは楽しめたけどそれもエンディング直前までで、それ以降の物語にはあまり興味がないのかも。

周瑜 (CV:森田成一)

周瑜ルートは曹操諸葛亮に萌えるルートだった。中の人が好きなので周瑜諸葛亮と同じく購入動機の一つだったし、期待通り中の人の演技も堪能したしチャラチャラした男は大好物なので周瑜も好きなキャラクタになった。でもそれ以上に諸葛亮が、更にそれ以上に曹操が最高すぎて関羽周瑜以上に強く印象に残ってしまった。それくらい曹操が強烈だった。正田卿風に言うと「狂しておられた」。周瑜と言えば赤壁の戦いは外せないし曹操も序盤の時点で関羽が混血であることを知るが、何故か条件は同じなのに劉備ルートの時以上にノリノリで、だから序盤の時点でもう楽しみで楽しみで震えていた。何故ならこれは周瑜ルートで、曹操関羽に振られるのが確定していたから。

だから曹操にばかり意識が行って周瑜の印象が薄くなることを危惧していたが、先にも書いたように周瑜も好きなキャラクタだったからそんなこともなかった。ボロボロの関羽の姿に「そそられた」と言ったり「仲間を守りたいアンタの純真につけこんで全力で踏みにじる。そんな背徳感がたまらない」という周瑜の台詞にはすごく共感できたし、関羽周瑜に他の猫族の女性を紹介させたらさすがにいい気はしなかったようで、仕返しをするかのように笑顔を装いつつも静かに怒りを伝えるシーンはツボった。関羽を苛められて満面笑顔になるところなんてもう可愛い。出会った瞬間から関羽を口説いてくるキャラクタだけど、甘いだけでなく意地悪なところがあるのがいい。そして都督としても有能なのも良し。戦場でもすごく輝いていたし、頼もしさもあった。呉との同盟で孫権を説得するシーンでも周瑜の言葉の一つ一つに力があった。周瑜の「国よりも人の方が大事」という考え方も彼らしくて良かった。

同盟を結んだ後は赤壁の戦いに入るが、その前に曹操関羽を求めて江夏に襲撃してくるという異常事態が発生し、劉備軍や周瑜たちを驚かせていて笑った。そりゃそーよ呉を攻め落としたいのなら来るはずのないタイミングで曹操軍がやってくるもんだから皆さん大混乱。そして最前線は激戦地だというのに総大将が出てくるからうははははははははははははは爆笑したでしょうが。それもこれも関羽が欲しいがためで、ほんと相変わらず無茶苦茶だな曹操様。最初は十三支は即戦力になるから生け捕りを命じていたのに、関羽の正体を知ってからは関羽以外は皆殺ししろ、という言うのも極端でほんとに面白い。

そして周瑜曹操との対決の際に喀血。序盤に周瑜の身の上話を軽く聞いた時に荊州の猫族は近親相姦を繰り返してきたのでは、と予想していたんだけど、荊州に残った先祖の病を引き継いでいるのが大きな原因だったらしい。周瑜と言えば短命なので彼は長くはないんだろうなとは思ったけど、こういう設定で来るとは思わなかったな。そしてこれまで関羽に対して攻めっぱなしだった周瑜が身を引くんだけど、押して引かれれば追いかけたくなるのが乙女ゲーヒロインというもので、関羽周瑜を気にするようになっていた。短命の宿命さえなければ周瑜孫権をずっと支えるつもりだったんだろうな……。

ここからは赤壁の戦い諸葛亮周瑜も当然活躍するんだけど、やはり一番印象に残っているのは曹操。まずは関羽を捕獲するためだけに五万の兵士を囮にする。まだ曹操軍を圧倒している呉の水軍を尻目に、曹操関羽の目の前に現れる。

「我が軍はまだ水に慣れていない。まるで一方的な狩りだ。呉の水軍たちはさぞ楽しい思いをしただろうな……」

「だがそれでいい……。墜ちた鳥に群がる虫のように、蝟集していればいい……」

「お陰でこうして、ゆっくりとお前を手に入れることが出来る……」

ここの曹操は異常さがよく出ていてとても好きなシーンだなあ。そして関羽曹操の狂気に充てられて怯えるようになるんだけど、それも無理はないなと思えた。曹操関羽を捕まえるためにやって来たと報告されて、あらゆる可能性を常に想定しているはずの諸葛亮までもが「一国の君主がそんなことをするとはとても信じられん……」とドン引きしていて思わず「だよねえええええええ」。しかし曹操の狂気じみた関羽への執着を利用するあたりはさすが諸葛亮で、本当に抜け目のない男だ。それも関羽曹操に怯えていることを知った上で、単身で曹操のところに降る振りをして曹操軍の動きを封じろと言うから周瑜も激怒するんだけど、諸葛亮のこういうところはとてもいい。このシーンでますます諸葛亮が好きになった。ちなみにここで曹操軍からの間諜を騙すために周瑜たちが一芝居打つんだけど、その時に「女一人のために大局を見誤るような者は一国の総大将たる立場にふさわしくない」といったやり取りが交わされるから吹いた。わざとだとは思うが、見事に曹操のことを指しているのがもう。しかも私は周瑜ルートの前は夏侯惇ルートをやっていたからその時の曹操のもっともらしい言葉の数々を思い出して、おまいう状態の曹操と照らし合わせてニヤニヤしたりもした。いやほんとオモロイなそそ様……。

で、曹操の元に投降したもののなかなか信じてもらえないでいる関羽は、しかし曹操の混血故の孤独に共感して、曹操関羽に心を赦してしまう。うわあ……。この時の関羽曹操に向けた同調は真実のもので、だからこそ曹操は信じられた。でも関羽曹操を騙しているというこの状況、曹操が可哀想で可哀想で可哀想で萌えた……。そして翌日、炎の中で関羽を連れ出さねばと助けに行くんだけど、その関羽に拒絶されて「謀ったのか!」と大激怒。そこに周瑜が助けに現れるんだけど、曹操をほったらかして二人でいちゃつくのやめてやれよおおおおお。ここは大笑いだった。いやもう曹操って前作でもそうだったけど、いつもとことんまで上げてからとことんまで落とされるのなー。あんまりにも哀れで萌え死んだ。ほんと不憫映えする人だ。しかも前作の「上げて落とされる」のは曹操ルートだったから最後に救いはあったけど、これは周瑜ルートだから救いはない。でも正直言うと「上げて落とす」という展開だけを切り取ってみると前作のほうが好みではあったかな。猫族に、というか劉備に対する信仰じみた関羽の異常な依存を描きつつ曹操が上げて落とされ、最後には曹操を憐れむ呂布の言葉で終わる。あの流れが秀逸である種の美しさすらあった。でも前後の展開も含めるなら今回の落とされ方のほうが悲痛で好み。見事に哀れな曹操が堪能できたので大満足だった(可哀想な攻略対象のエピソードをわざわざ比較して嬉々として語る私はどうかと思うが、楽しいから仕方ない)。

周瑜曹操の戦いは、周瑜の中の人の声が主人公ボイスなもんだから主人公と魔王の戦いを見ているようで楽しかった。周瑜はただでさえ関羽のピンチに颯爽と現れて助けるような場面もあるので、そこもドラマティックというか王道的というか主人公っぽい要素がある。それに周瑜曹操は共通点が多い。どちらも親の愛を知らず孤独だった人で、どちらも血のことで苦しんでいる。周瑜は短命で、曹操は混血で。そんな中で二人は必死に人間の世界で這い上がって来た。そのことを思えば宿命の戦いという感じがして燃えた。最後には関羽周瑜が二人で長江に身投げ。ここで悲痛な声で関羽の名を呼ぶ曹操の姿に泣けた……。か、かわいそ……でも萌えた……。そして最後には二人の国葬が行われたことを知って絶望する。特に「こんなことならお前の存在など知らねば良かった……!」という台詞が胸に来た。曹操関羽への執着は生への執着に等しいんだろう。関羽が死ぬか曹操が死ぬかしないと曹操の執着は止まらない。しかし関羽が死んだことで、曹操は一生関羽への執着を持て余したまま生きていかねばならなくなった。生き地獄。

まあでも二人は生きてるんだけどなー。予想はしていたけど曹操の嘆きを見た後にイチャイチャしている二人のシーンになったのであんまりにもあんまりな構成に吹き出した。なんて結末だ……(褒めている)。曹操だけでなく劉備孫権たちもみんな二人が生きていることを知らないので、なんかもう色々酷くて笑ってしまった。これは諸葛亮の策によるもので、敵を欺くには味方から、と考えたら理解はできるし諸葛亮らしいといえばらしいけども。でもみんなに伏せておくのはもう少しの辛抱だと言ってたけどその基準は何なんだ。先にも書いたように曹操が死ぬか関羽が死ぬかしないと曹操は諦めないだろうし、もう少しということは曹操を殺す目処がついたということなのか、それとも単純に曹操が諦めると踏んでいるのか。どっちなんだ。もし後者だとしたら諸葛亮にしては随分舐めた判断だなー。やっぱり殺すんですかねえ。しかしここまでして諸葛亮が二人のことを助けてくれたことが不思議だったんだけど、もしかして赤壁の戦い曹操関羽を差し出す作戦を採ったことへの詫びのつもりもあったのかな。そして周瑜の病もちゃんと療養すれば治る見込みはあるかもよ、という僅かな希望を抱かせるところで終了。しかし周瑜は好きだし周瑜ルートは楽しんだけど、ぶっちゃけていうと関羽周瑜の組み合わせにはあまりピンと来なかったなあ……。曹操に意識を奪われたせいもあるんだろうけど。

しかし周瑜ルートをやった後だと他のルートのハッピーエンドが不安になるなあ。曹操関羽の正体を知らないままでいられるかどうかは運次第だし、いつ着火するともしれない爆弾抱えてるようなものなんだから。でも私的には曹操にはすべてのルートで関羽の正体を知って暴走して欲しい(混沌を求める RPG の魔王的欲求)。

それと先にも書いたけど諸葛亮も美味しかった。呉との同盟が成立した時に、功労者(周瑜)を労って士気を高めてやれと言われた関羽が功労者の一人である諸葛亮を労うんだけど、その時の諸葛亮の「お前は何を言っているんだ」みたいな反応が面白かった。一緒に寝たいと言い出した周瑜から逃げるために関羽諸葛亮の部屋に押しかけるシーンなんて楽しすぎて何度も見返してはニヤニヤしていた。取り付く島もない諸葛亮の対応が素晴らしい。寝所で三人でもみくちゃになるところは CG が欲しかったな。

それと何気に曹操にいいように使われている便利な張遼には笑った。まあ臣下なんてそんなものなんだけど、張遼は有能だなということを改めて実感。

BAD ED は周瑜曹操を道連れに身投げ。ここでも炎の中のキスシーンがあったけど、こちらのほうが絵としてはロマンティックで好みかもしれない。

夏侯淵 (CV:浪川大輔)

今回は夏侯惇ルートで関羽と和解するんだけど、夏侯惇ルートで一番のハイライトはここだった気がしなくもない。夏侯惇夏侯淵の本音に気づいて「お前自身を赦せ」と告げるのがぐっと来た。夏侯惇はいいお兄ちゃんやってるなあ。涙を隠しもせずボロボロ泣く夏侯淵の CG もいい。関羽に頬を触れられた時の素の表情も可愛かった。

夏侯淵 ED では寝ている関羽にうっかりキスをしてしまうんだけど、どうも夏侯惇ルート後の話っぽいし夏侯淵の思いが報われることはなさそう。

賈栩 (CV:一条和矢)

外見が『Fate/Zero』の言峰っぽいなーと思ってたら中身もそんな感じだった。プレイ前は興味のないキャラクタだったけど、張飛ルートでは掘り下げられていたし、趙雲ルートでは軍師としての非情な顔を、曹操ルートでは曹操の正室になった関羽を気遣うなど優しい面を見せてくれたし、張遼ルートでは蘇双に「おじさん」と言われて気にするなど色んな魅力が見れて楽しかった。しかし何かを求めているのに何を求めているのかがわからず常に飢えている曹操と、求めるものが何もない賈栩が主従関係にあるのは面白いなあ。君主と家臣としての相性は抜群なのかもしれない。

それにしても一条さんが出ていたのが不思議な感じだ。この人は古い BL ゲームによく出ているイメージが強いから乙女ゲーにいると奇妙な感覚に陥った。

郭嘉 (CV:鈴木裕斗)

極端な強者厨だが、極端なだけで郭嘉の意見も私はよく理解できる。それ故に残忍な性格をしているけど、出番が多いわけではないのでそこは少し残念だったなあ。もっとえげつない真似をして物語を盛り上げてくれることを期待していた。

郭嘉 ED では関羽が姉に似ているという理由で曹操にも報告せず監禁し、猫耳を切り落として薬で洗脳。郭嘉の弱さと孤独が出ていて結構好きな結末かもしれない。

孫権 (CV:松岡禎丞)

劉備ルートで尚香を殺されて激昂するシーンや、周瑜ルートで関羽にちょっかいをかける周瑜の手に手刀をビシバシ食らわせて「女性が嫌がることはするな」と窘めた後に関羽に頭を下げるシーン、張遼ルートでは劉備との会話でかくれんぼの意味を誤解するシーンなど見どころは何気に多い。真面目天然なのも美味しい。しかし立ち絵が一種類しかないのは寂しかったなあ。出番も多いわけではないもののそれなりにあるから尚更。

孫権 ED は同盟を結ぶ際に関羽孫権が形だけの婚約をする展開で、これはてっきり周瑜ルートでやると思っていたからここで見れて満足した(周瑜ルートでは曹操がいるし、これ以上盛り込んでもややこしくなるだけだからなくて正解だったと思うが)。桃園のシナリオの中でも孫権だけは少し長めの話になっているのも嬉しい。とはいえおまけシナリオなので短いが、孫権は序盤ですでに関羽と会っているから関羽に惹かれていたとしても不自然にはならないし、関羽孫権のやり取りを見ていると孫権関羽に惹かれるのもわかる。尚香に応援されながら関羽を喜ばせようと慣れないながらも必死に声をかけたり、関羽の敬語が取れて喜んだり、真っ直ぐに関羽に求婚する孫権はたいそう可愛らしかった。

尚香 (CV:新谷良子)

劉備ルートで劉備との政略結婚があるけどそっちはまあどうでもいい。白銅に憑かれてからの「内臓食べたい」の連呼や、「ブス」とか「ゴミクズ」とかボキャブラリの少ない罵倒が飛び出すのは笑ったけども。白銅に憑かれたのは嫉妬していたかららしいけど、その嫉妬も特に描写があるわけじゃないのがもったいなかったな。