Antipyretic

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遙かなる時空の中で6

http://www.gamecity.ne.jp/haruka6/

ネオロマ作品は『下天』以来で、『下天』から連続して抱いた印象で言えば安牌を切ってきてるなあと。それはそれでいいんだけど、私としてはもーちょい攻めてほしかった。けど最近の遙かシリーズは私の意見はどうあれ世間では評判ガタ落ちだったから、まずは立て直すことを優先したのかなという気もする。

シナリオは序盤が一番面白かった。終盤で帝国軍やら禍津迦具土神やらで毎回同じような展開でグダグダになってたのはご愛敬。しかし最初は鬼と帝国軍の話になると思ってたから、最初から最後まで帝国軍に話が集中していたのは意外だった。そしてその帝国軍の話が面白くなかった。そもそも「軍による強化人間量産化」的展開はあまりそそられないんよー。それと序盤に鬼、中盤以降はずっと帝国軍で話が分断されてしまうのも残念。鬼とのエピソードも前半だけに集中していてバランスが悪かった。一方個別ルートは突っ込みどころがありつつもなんだかんだで楽しめたんじゃないでしょーか。劇的な展開はないので物足りなさは残るが、それでもちゃんと面白かった。しかし今回は本当に衆目の前での告白やキスシーンが多くてどーしたネオロマ……。

絵は今回から水野氏が原画を担当していて、ここに来てようやくフルボイスにしたことも含めてルビパの必死さが伝わってきた。やっと必死になったのか、という気持ちも拭えないけども。ちなみにキャラクタデザインは大人しい。最初に公式を見た時は正直それほど惹かれるものがなかったし、プレイがこんなに遅くなったのもぶっちゃけそれが一番大きい。でもプレイしたら全員好きにはなれた。

システムは相変わらず良好、とわざわざ書くのも飽きてきたくらいのド安定。一度突破した戦闘をスキップ出来るのもありがたかった。ちなみに戦闘はカードバトルっぽい何かで特に面白いわけでもなく。章ごとに怨霊討伐数などの目標を提示されたり期日が用意されてたり、また各地で潰しても潰しても怨霊が復活するあたりは『遙か2』っぽい。さすがにミニゲームはなかったけど。あと驚いたのが画面の狭苦しさ。絵が表示されるペースがやたら狭い。大正時代の雰囲気を楽しむためにも背景はもーちょい広い画面で見たかった。けど今作はシルエットで雰囲気を出す場面も多いのであまり関係ない……ってシルエットで演出しているからこそ狭くしたんですかね。

つーわけで大きな萌えやカタルシスはなかったけど、これはこれでいいんじゃないかな。特に「ここ数年の遙かシリーズ」と「最近の私」にとっては。私の場合は「ゲームを久し振りにフルコンプ出来たから」というバイアスがかかっていることは否めないけど、プレイするタイミングの影響はどのゲームにもついて回るしそれも感想のうちということで。満足したとはやっぱり言い切れないけど安牌だからこそコンプ出来たんだろうし、余韻と呼べるようなものはあまりなかったけどプレイ中は楽しかった。

高塚梓 (CV:斎賀みつき)

いい子でもあったけど、それ以上に可愛かった。攻略対象より梓の可愛さのほうが印象に残るシーンも結構あったくらい。それもエロゲのヒロインのような可愛さではなく、ちゃんと乙女ゲーに相応しい可愛さだった。このバランスが神がかっていた。梓の可愛さそのものではなくバランスが神がかっていたことが重要で、可愛さが神がかってはいないからこそ良かった。私はどちらかというとエロゲ的な可愛さが好みだし梓はちょっと眩しすぎるけど、好きなヒロインではある。あと思わずといった感じで出てしまった発言にすぐ気付いて自分で冷静に突っ込むシーンが時々あって、そんなところも可愛かった。

しかし夜会の時のドレスはともかくヘッドドレスは微妙だなあ。ヘッドドレスのせいで可愛いシーンでもフェイスウィンドウや CG で出るたびに若干萎えた。

声は合ってないなと思ったけど、あまりしゃべらないのでまあ……。

有馬一 (CV:寺島拓篤)

こういう堅物は好みだし、何といっても苗字呼びが大好きな私にはたまらないキャラクタだった。村雨も名字で呼んでたけど、特に有馬の「高塚!」にはときめきを覚える。どうせそのうち名前で呼ぶようになるんだろうな、と思ってたら名字呼びのままで終わった。素晴らしい。もうこれだけで有馬ルートに満点をつけてもいいくらい(つけないが)。エピローグのポエムでは名前を呼んでたけどこれはもうしゃーない。

途中で蛇神の呪いでループする世界に囚われることになるんだけど、二人の距離を埋めるために入れときました感があって笑った。「ある意味で世界に二人きり(しかも結構ピンチ)」という状況にならないとこの二人は近づけないらしい。結果的に蛇神が恋のキューピッド役になってるじゃないですか。有馬が50回もループしたとかサラッと言い出した時は驚いたけど、よく考えたら梓以外にもループの影響を受けない存在がいたのを思い出して納得した。つまり蛇神本体。有馬は蛇神に毎回接触してたと言っていたし、蛇神がいたからこそ耐えられたんだろう。それでも精神への負担は大きかったとは思うけど。つーかループ世界に放り込んでおいて元凶である自分と接触出来る隙を与えてしまう蛇神は詰めが甘くないか。有馬を本気で追い込む気なら接触させちゃまずいでしょうが。有馬なら初日で異常に気付いてすぐ蛇神に到達したんだろうな。しかし有馬と蛇神との過去は伏線になるのがわかってたからどう来るのかと期待してたら、「だからどーした」で終わる程度の内容で脱力するより笑った。まあそれはさておき、ループを抜けた後の有馬の「……また明日」という挨拶には実感が籠もっていてしんみり来た。さり気ないけどいい台詞。ちなみに終盤でも梓がループに囚われるが、蛇神がやたら必死で笑った。有馬の姿で梓をとことん甘やかしながらの「だから陰の気はよはよ(机バシバシ)」感がすごくてもう。

ちなみにこのループの件をきっかけに有馬が一人で蛇神の件を追っていたことを知り、梓が頼ってもらえなかったことを悲しむんだけど、その後は帝国軍を疑うことになるからと今度は梓が有馬に伏せたまま動くことになるのが面白かった。有馬もこういう気持ちだったのだと実感させられるのが。そして有馬も身に覚えのあることだから、梓の様子がおかしいことに気づいていながらも強く追及できないでいるのがまた。

愛宕山で梓を助けに行くシーンはベタながらも良かった。ああいう『ラピュタ』みたいな展開には弱いんだよなあ。熱い。最後の告白も二人が可愛かったし、そんな二人を見て良かったねーってなってる秋兵と九段も可愛かった。特に秋兵はいちいち有馬の気持ちを代弁したりじれったい二人を暖かく見守って支援してくれたりで、副隊長としての仕事だけじゃなくて二人の恋を応援する友人としてもナイスアシストをこなしてくれていた。友部もいい味出してて可愛かったなあ。最後は復活出来て何より。

結局梓は元の世界に帰らなかったけど、有馬の今後の役割を考えると妥当かな。あれで放棄したら興醒めだしな。ダリウスもなんかめっちゃ期待してるしな。

ダリウス (CV:鈴村健一)

千鳥格子が好きなので第一印象から一番気になっていた。しかし面倒な性格っぽいオーラを感じてたんだけど、プレイしてみると案外そうでもなかった。何故か面倒な手順を踏んではいるけど、そっちはダリウスが無能とか以前に作者の力不足を感じた。終盤まで伏せておきたかったんだろうなあ……ダリウスじゃなくて作者が。ここは萎えた。

それでもダリウスが何故真意を伏せていたのかを考えてみると、ダリウスのイベントを一切起こさなかった一周目の印象では最初は人間を信じてないからかな、と思ったもののそれはすぐに「ないな」と答えが出た。ダリウスの計画は人間を信じてないとそもそも成り立たないし、村雨と結託もするし有馬を一目見て信じたりもする。だから人間を信じることはできるんだろう。梓のことは信じられなかったのではなく単に頼りない子供だったからか、と考えたら納得が行った。要するにナメていた。実際梓は平和な世界から来た子供だし、虎にも何度かそれを指摘されている。私がダリウスの立場でも悩むかな。召喚されてそんなに経ってもいないし、ダリウスが梓に愛宕山でやらせようとしていることは梓のような少女には荷が勝ちすぎるから。でも愛宕山の件の後で梓に問い詰められた時はダリウスには説明する義務があったし、あそこでは何を勿体ぶってんだと思った。

しかしダリウスのイベントをこなした上で進めていくと、こっちはまた理由が変わってくるのが面白かった。ダリウスは純粋な梓に惹かれていて、だからこそ真意を説明するべきか迷うし、でも裏切られるのも怖い。かといって説明しないまま信頼を失くすのも怖い。梓は何も知らず、ダリウスに甘やかされたことで完全に信頼しきっているから尚更罪悪感が積もっていく。そうしてダリウスが葛藤するのが美味しかった。その後は強引にシュークリームを梓に食べさせる事件が起きるんだけど、ダリウスの行き場のない後悔とか焦りとか駄々とかそれでも梓を求めてしまうこととか、そこらへんのごちゃごちゃした思いを持て余しているのがよくわかって萌えた。しかし帝国軍に黒龍の神子の破壊の力を利用させないために、ダリウスがその破壊の力を利用する羽目になったのは皮肉よなー。

前半の鬼との共同生活は楽しかった。疑似家族みたいな空気が大好きなので、みんなでわいわいやってるのを眺めるのは画面の前の私にとっても居心地が良かった。帝国軍では九段や千代が優しくはしてくれるけどどこか窮屈なのは否めないしなあ。まあこれは私が鬼贔屓ということも影響しているんだろうけど。で、梓とダリウスの微笑ましいイベントも前半に集中してるんだけど、半分冗談でプロポーズをしてくるダリウスに梓が戸惑ったり銀座でデートして二人でショッピングを楽しんだり買ってもらったネックレスをわざわざ梓がダリウスに見せに来たりとどれも可愛かったけど、一番楽しかったというか笑ったのはダリウスが梓に料理を振る舞おうとするイベント。料理を失敗しまくって食材を無駄にしたダリウスに、あのルードも呆れてしまうというありがちな内容なんだけど、こういうエピソードはなんかエロゲのヒロインのようで、ダリウスが料理下手であることよりもそんなエピソードをぶち込んでくることに吹いた。お館様はヒロインか、とか突っ込んでたら終盤で本当にヒロインになってたから二重の意味で吹いた。思わずパッケージ絵でヒロインをやってた源氏の総大将を思い出した。そいやどっちも地青龍か……。

梓が帝国軍に行ってからはダリウスがずーっと拗ねっぱなしで、それも結構長く根に持ってるから笑った。……いや笑うとこですよね? ダリウスが梓に目的を説明できなかったのは、ダリウスルートでも梓が未熟な子供であったことも理由になったんだと思うけど、そんな梓よりもダリウスのほうが子供っぽい。仲直りも二人で互いの非を認め合うというよりも、梓のほうから「折れてやった」という感じがした。でも寂しがり屋なキャラクタは好きなので、ダリウスのそういうところは可愛いと思える。鬼の一族ってだけで人間に忌避されるのに、首領でいることは孤独を強いられる部分もあると思うからダリウスが寂しがり屋になるのもしゃーないかなとも。首領になることを選択したのはダリウス自身なんだけど、そうやって割り切れないところがダリウスらしい。ていうかこの人は毎回こういうことを繰り返してきたんじゃないかな。愛宕山の件がまさにそうだったのだし。

終盤はダレた。グダグダなのはどのルートでもそうだけど、ダリウスルートは特に総長→蛇神→仮面と続くので冗長。困ったのが戦闘で、私はどのルートでも梓と攻略対象しか育成しないから一瞬詰んだかと思った。みんな一撃でロストされるくらいのレベルだったからなあ。でも四神のおかげで何とかなった。やはり属性有利は大きい。最後には梓が仮面を撃って終了。最初に見た時は吹き出したけどこの頃には仮面にも愛着が湧いていた。

そしてダリウスは眠り姫化。梓のキスで目覚めるのは予定調和としても、ダリウスが目覚めたことに気づいたルードが、ダリウスに駆け寄るでもなく結婚式の準備のために真っ先に動いたのはいいオチだった。ていうか本当に一年かけて花嫁衣装を縫ってたんか。ルードはダリウスルートが一番輝いてるなあ。おかーさん属性を活かすには梓と恋人になるよりこういう立ち位置のほうが断然美味しい。そして姑属性へ。

鬼との関係は今までは殆どミクロな視点でしか語られなかったけど、今回はマクロな視点で大きく前進したのは良かったんじゃないかな。ダリウスが有能というよりは片霧総長と禍津迦具土神というわかりやすい悪がいたことで結束に繋がっただけだから、たいへんなのはこれからだろうけど。でも『遙か7』でもギスギスし合ってんだろーな……。

しかし鬼の一族ってみんな人間に優しいっつーか穏やかっつーか……いやもう人間には期待できず諦めている鬼もいるんだろうけど。どのシリーズにも鬼の一族が出てきたけど、正直アクラムのやってることが一番納得出来るかもしれない。

コハク (CV:阿部敦)

理性を保てる珍しい憑闇で、それは元々患っていた疫病のおかげで精神が完全に汚染されなかったんだろう、とかダリウスが言ってたけどそこらへんはよくわからなかった。

それはともかくコハクルートはあまり期待してなかったけど、予想以上に楽しんだ。記憶にまつわるエトセトラが上手くシナリオに作用していたからかな。失われたコハクの過去はもっとえぐいのを期待(こら)してたらそこはネオロマらしく優しい内容だったけど、梓がコハクに辛い過去があればあんな綺麗な笑顔は浮かべられない、という根拠で記憶を取り戻そうとするのは説得力があって面白かった。独楽回しの時の CG のコハクの表情に私も目を奪われたからで、あの絵がなければこれほど響かなかった。

そして「コハクの記憶を取り戻そうとしていた梓」という構図が、エンディングでは逆転するのが面白かった。でも記憶を取り戻す旅をしよう、という終わり方は少し残念。梓が生きていくのに神子や帝国軍や鬼云々の記憶はなくても困らないし、異世界での記憶だけが消えたことはむしろ良かったんじゃないかと思ったから。確かに異世界で梓が得られたものは大きかったけど、梓なら普通に生きていくだけでも成長出来るだろうし、片方に記憶がなくてもこの二人ならちゃんとやっていけるだろうとも思えた。普通の少女と普通の少年が出会って恋をした、それだけで良かった。だから過去の事はもう思い出せないけどこれから二人で新しい思い出を作っていけばいい、という結末を期待していた。

ただコハクは一度記憶を失い、梓のおかげで思い出したことで記憶の価値を知ったから、梓に思い出してほしいと願うのもわかる。自分とのことを思い出して欲しいという気持ちもあるんだろうけど、それ以上に自分のことは関係なくても記憶は全部梓にとってかけがえのないものだと思っているから取り戻してほしいんだろうなあ。それと梓がコハクの名前だけは自力で思い出したことにはぐっと来た。「おれの名前だけでもいいんだ あなたの記憶に残して」と言っていたコハクの最低限の願いだけは守れたから。

体に馴染んでいたものは忘れない。記憶を失っても。だからコハクは「ゴンドラの唄」を歌えるし独楽回しも出来る。そして梓にはコハクへの恋心が残っていて、それだけコハクに恋していたことが梓には自然なことだったんだろうなあと。恋の歌を覚えていたコハクと恋心を覚えていた梓、という構図は可愛らしい。

しかしコハクに頼まれて梓のいる世界に飛ばした黒龍は優しいんだかなんだかよくわからんな。でも今まで本気の我儘を言わなかったコハクが初めて言った我儘なんだと思うとものすごいことじゃないですか。あと何気に虎がコハクを気遣うシーンもいいっすね。

片霧秋兵 (CV:岡本信彦)

秋兵ルートは秋兵の事情と本筋の内容が密接に絡むので一番読みやすかった。他のキャラクタは個別ルートと本筋の内容が上手くリンクしてないように思えたけど、その点秋兵はラスボスが父親(正確には蛇神だが)だからか。有馬も過去で蛇神と関わってはいたけど絡め方が下手だったし、その点では秋兵は家族の問題だから違和感もなく自然だった。それと秋兵の芝居がかった口説き文句を聞くのも楽しかった。次はどう口説いてどう会話を展開させるのか、という楽しみがあった。やっぱり最初の『ロミオとジュリエット』が一番インパクトがあったけど、あれは素で唖然となったもんなあ。しかも梓と会って間もない頃だったし、久しぶりに本気で困惑するイベントを見せられた気がする。あと今作は蝶をモチーフにしているからだろうけど「蝶々さん」は結構新しい呼び方。

面白かったのが、秋兵は君と恋が出来たら楽しいだろうなとかステンドグラスのキャンドルホルダーは誰かと見るのがいいんだよねとか誘い受けを堂々とするのに、それが不思議と嫌な感じがしない点。他にも家族間の問題についても聞かれてもいないのに勝手に喋ってくれるんだけど、それもウザいとは思わなかった。すごいなー。というか自分からどんどこ愚痴ってくれる秋兵は乙女ゲーの攻略対象としては優秀で、スムーズというか感動した。「お前に何がわかる!」とか言われないって楽だ。が、この人はある意味そうしてキレる人より厄介かもしれない。愚痴は吐くけど本当に聞いてもらいたい愚痴は吐かない。この人の愚痴を吐ける範囲には「人を不愉快にさせない」「人をガチで重い気分にさせない」というルールがあるんだろう。それでも梓に惹かれて告白してからは本音もちゃんと語ってくれるようになる。が、最後の最後、一番重要な場面では本音を隠して梓を元の世界に帰そうとするあたりが、なんというかもう秋兵らしい。そいや交際を申し込むシーンではあれほど美辞麗句を並べ立てる男にしては珍しくストレートな言葉になっていて、言葉で飾る余裕がないほどに梓に縋らずにはいられなかったのだということが伝わってきて萌えた。あんなイケメンで金持ちで如才の無い男が、たったひとりの少女に縋ってしまう展開は美味しい。最後に梓と秋兵が結婚したのは家族の話としても上手く纏まっていて良かった。あーでも「マダム・片霧」は笑ったけど。

ところで本当は父を助けたいと思っていた秋兵に一人で抱え込むなさっさと相談しろ、みたいなことを有馬が言うのは吹いた。貴殿は御自分のルートを振り返ってみよう。いや自分のこととなると客観視が難しくなるしわからないでもないんだけど、先に有馬ルートをやってたから笑わずにはいられなかったというか。有馬は可愛いなあ。

それとヴァイオリンを弾く秋兵は、ほんとそこだけはコルダだった。というかコルダに出てきてもおかしくないビジュアルだよなあ。横浜の音楽学校に通う予定だったとか言ってたけどこの人ならリリと普通に会話してそーだし。あと友部の異動の件で有馬の物真似をするシーンも笑った。九段が反応するまで気付かなかった……。

ルードハーネ (CV:立花慎之介)

ルードのシナリオは良くも悪くも真っ当で印象に残っていない。同時攻略で進めていたのであっちゃこっちゃ複数のキャラクタのエピソードを追いかけたことで意識が散ってしまい、分岐前にイベントが集中していたルードが割を食う形になってしまったことも影響している。CG も殆ど前半のイベントばっかだったし、雨宿りも好きなシチュエーションなのにルードの場合は結界での雨宿りで風情がなかったのが残念。

ルードは真面目でいい子だし、ダリウスを盲信しすぎて視野狭窄気味なところはあるけどそこも含めて成長するし悪いキャラクタではない。けど悪いキャラクタではないからこそ盛り上がらなかった。むしろ彼は他のルートのほうが輝いていたよーな。ダリウスルートとか。虎とのやり取りも可愛かったなあ。あれはおかーさんと長男の会話だ。

ルードルートで印象に残ったのは、ルードが不在でおむすびを大量に作ってる鬼のみなさんとか、ルードの成長を感じて喜んでいたダリウスとか。ダリウスなんて虎に兄貴じゃなくて親父だとか突っ込まれてたけど、あれはもはやおじいちゃんですよ。梓とルードの間に生まれた子を溺愛しそうだしな……。女の子だったら服とかいっぱい買ってあげるんでしょうおじいちゃん……梓にしてあげたみたいに。鬼のおじいちゃん萌えぇぇー。

本条政虎 (CV:竹本英史)

虎ルートが一番楽しかった。梓と虎のやり取りは見ていて面白かったし、萌えも可愛らしさもあって退屈しなかった。鬼は前半だけで盛り上がってしまうことが多かったけど、虎は中盤や後半もきちんと盛り上がりがあってバランスが良かった。特に卵焼きのエピソードがツボ。二人の距離が近づいていくきっかけとして、虎の苦しみを梓が察するきっかけとして、虎の明るい今後を感じさせてくれる演出として綺麗に使われていた。しかも全部のイベントがそれぞれ独自に可愛いエピソードとしてもきちんと成り立っててもー完璧。あとは梓からお礼のキスはいらないのかと問われた時の三連続好感度上昇も笑った。こんなに効果的で可愛くてちゃんと萌える好感度演出は初めて見た。

虎は感情的に動く梓を鋭く指摘しつつも、最後は肯定するようになるのがいい。確かに梓は浅はかな行動が多いしそれで結局虎が迷惑を被ることもあるけど、彼女自身が対応に回れない部分は自分が補ってやればいいと思うようになる。困った人につい手を差し伸べてしまう梓の姿を虎はずっと見てきたからこそ、それが打算のない気持ちから出たものだと知って最後には守ってやりたいと思うようになるのが自然で良かった。だから力のある虎は、それを復讐のためではなく梓を守るために使おうとする。しかし復讐者をヒーローに変えてしまう梓はほんとヒロイン力が高いなあ。このルートは何が美味しいって梓が一番正統派ヒロインをやってて、虎も一番正統派ヒーローをやってるからだ。ピンチの時につい虎の名を呼んでしまう梓と、梓に呼ばれれば毎回助けに来る虎にはニヤニヤした。

あと虎みたいにお金に対してきっちりしてる人は好きだ。ほんと金ほど明確な基準はないもんな。そこは最後までブレなかったのもいい。ブレないまま梓を好きになる過程が違和感なく描かれていたから尚更楽しかった。それにしても虎が父親の笑顔を思い出している時に虎が初めて笑顔を見せる、てのがもうぐっと来るじゃないですか。

それと四神戦での虎と白虎のやり取りには笑った。というか虎(野生の動物)とじゃれあう虎(鬼)、という図は絵になりそうだから普通に見たい。

萩尾九段 (CV:四反田マイケル)

九段ルートはシナリオ楽しむというよりは、九段の無邪気で可愛いところを堪能するルートだった。恋を知らなかった九段が不意に恋を自覚して「すごい発見だ!」と嬉しそうに報告してくるのがもーほんと可愛いんだなあ……。そうして恋に気づいた勢いでその場ですぐ告白しようとするのも九段らしい。この人は一番決断が速いし行動力もある。でも進に告白を邪魔されて憮然とした声になるのは笑った。

ところで九段の描いた人相書、作中では散々引っ張ってネタにされてたけど普通に上手くないか。いやマジで。ちゃんと髪型の特徴は捉えてあるし、あれで下手だというなら趣味で絵を描く私としては微妙に凹むなコンニャローまじかよーちくしょー。

星の一族としては未来が見えることによる苦しみも描写されていてそこは『遙か3』の譲を思い出したけど、九段は未来を変えられることも知っていて努力しているし、何よりタフなので譲の時のよーな悲壮感はなかった。あとは千代周辺の補完も行われていたが、九段と千代のやり取りも可愛かったので九段ルート道中はもう普通にこの二人がくっつけばいいのでは、とか思ってましたよ私。

終盤で神子が二人とも時空の向こうに飛んでしまった時は、八葉だけで蛇神を倒すのかなとちょっと期待してたのにそんなことはなくて落胆した。自分たちの世界は自分たちで守りきる、くらいの気概は見せて欲しかったなあ。四神を召喚するシーンはシリーズをプレイしてきた者としてはテンション上がったんだけどなあ。ルビパ的にはやっぱり神子で決着をつけさせたかったんだろうけど、そこに拘る必要はなかったんじゃないかなあ。

里谷村雨 (CV:安元洋貴)

村雨ルートは面白かった。村雨は元の世界にいた頃の梓を偶然知っていて、それもあって梓を最初からただの女の子として見るんだけど、最後まで女の子としてだけ見るのではなくて神子としてもきちんと見ているのが新鮮だった。だからこそ世の中の人間が頑張れば神子を呼び出す必要もなくなるだろうに、なんて嘆く。最初は神子として見て、徐々に女の子としても意識していくようになる他のキャラクタとは逆。今までこういうキャラクタはいなかったんじゃないかなあ。主人公を最初から女の子として見るキャラクタはいたけど、神子としてはあまり意識していなかったように記憶しているから村雨はレアだ(私が忘れてるだけで実はいたのかもしれないけど)。

ただ、クライマックスシーンの村雨の演説にはあまり揺さぶられなかった。ストレートなのはいいんだけど、民衆の反応があまりにも都合よすぎて一気に冷めたせいもある。簡単に村雨の言葉を信じたなあ、と。蛇神に見つかる前に梓を探さなければならない→帝都中を探し回るには手が足りない→じゃあ民を動かせばいい→俺が説得する、という流れまでは熱かったんだけどな。でも演説は言葉も大事だけど何より場を支配してこそで、中の人は熱演されてたし気合いは感じたのでそこは良かった……けどそれでも残念な気持ちが大きい。まあ私が期待しすぎたってことなんだろう。

しかし村雨は人間が変わらなきゃ意味がない、と言ってたけど人間ってこんなもんで、変わるのはきっとものすごく難しい。でも変えようと動く村雨を馬鹿だとは思わないし、村雨の真摯な志も伝わってくる。ただ、私には民衆への演説よりもルート道中の梓や千代に向けた数々の言葉のほうに揺さぶられることが多かった。

ところで将臣や譲の時もそうだったけど、八葉選定って予め決まっているのかどうかが気になってきた。彼らは八葉に選ばれたから巻き込まれたのか、巻き込まれてから八葉に選ばれたのか、という疑問。もし前者であれば八葉も神子と同じく一方的に重責を負わされた存在ってことになる。神子がいたいけな少女だから神子だけが不憫だと言われてるが、八葉のほうも結構……。異世界の人間なら自分の世界だし他人事じゃないけど、別の世界の人間だった村雨や有川兄弟はとばっちりにもほどがある。いやまーどちらにせよ巻き込まれるしとばっちりを食っていることに変わりはないけど。

恋愛方面では、個別ルートに入ってすぐ事故チューだったので驚いた。おかげで梓も恋を自覚するのが早く、年齢差や立場を考慮して線引きしてくる村雨にガンガン押していく。さつきさんは何らかの恋愛関係はあったんじゃないかなあ。両思いだったのか片思いだったのかは謎だけど、まあさつきさんはそうじゃなくても村雨の年や梓に対する態度を見ていると過去に恋人がいなかったとは到底思えない。しかし小説で求婚したり電車内でキスはちょっとどーなんですかね。特に小説な……。あれ全国中に宣言してるよーなもんだしなあ。あれだけ梓に対して線を引いてたのに、線を取っ払ったら何故そう明後日のほうにカッ飛ばすんだ村雨。まあ二人は幸せそうだからいいかな。良かった良かった。

駒野千代 (CV:高橋美佳子)

千代=おばあちゃんは直前までまったく気付かなかった。やけに梓が元の世界にいるおばあちゃんのことを思い出すなあとは思ってたけど、そこまで感じておいて気付かないんだから我ながら鈍いにもほどがある。でも異世界に残る結末は、今回はおばあちゃんが千代ということで事情を知っているから心強い。おばあちゃんは梓が最後に選択を迫られることも知ってるはずで、でも送り出したということは梓の判断というか想いに委ねたんだろうな。そして相手の候補になりそうな男のことも知ってるし。

八葉復活は燃えるシーンなのに、「女の子を守るイケメンは全員主人公のもの」という乙女ゲーの前提のもとに千代から奪った印象が拭えなくてすんごい複雑になった。千代から梓に託されたものだとはわかってるし納得もしてるんだけど、なんというかこう……。だから大団円 ED の、八葉じゃないけど八人で八葉の代わりを務める展開のほうが燃えた。一方、通常 ED は鬼がとんずらしてて吹いた。

ところで白龍は滅んだん? 滅んだということは次回には出てこないん? それともまだ生きてんの? もう息も絶え絶えで危険な空気が漂ってたけどどうなったんだ。千代を別の時空に移して滅んだと思ったけど違うのか。でも大団円では元気になってたからなんだかんだで無事なのかな。これが一番あり得そうか。

片霧清四郎 (CV:斉藤次郎)

国を守らなきゃならないという意志自体は否定できないけど、この人の場合は手段がまずかった。秋兵はどのルートでも ED のその後がたいへんそうだな……。