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薄桜鬼 新選組奇譚 ポータブル

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あーこれは駄目だった。新選組は魅力的な題材だとは思うけど、主人公の存在や鬼などのオリジナル設定が邪魔にしかなっていないのがキツい。更に鬼や羅刹といった要素を突飛だとは思わなかったもののいずれも決着のつけ方が弱く、史実に沿った部分が圧巻なので鬼周辺のエピソードはどうしても迫力負けしてしまう。新選組を素材に乙女ゲーとして上手く料理するのは難しいんだろうなあ、てのを実感させられた。

それでも比較的上手く料理出来ていたのは沖田ルートや原田ルートで、それは後半に新選組から抜けるなりはぐれるなりするのが大きい。つまり新選組に千鶴が関わらない展開にならないと厳しい。新選組が千鶴を預かっている理由に羅刹や父親の件があるにしても後半は時代の波に揉まれていくし、千鶴という厄介な荷物に比べりゃ瑣末な問題でしかなくなっていくんだから、鬼を引き寄せる千鶴を新選組に置き続けるのは賢い判断とは言えない。そのあたり納得がいかないまま読ませられるのがちょっとな……。

カズキヨネ氏の絵はパッと見てキャラクタの見分けがつかなさそうだ、と思ってたんだけどプレイしてみるとちゃんと見分けはついた。しかしどーにもこの人の絵は苦手。絵といえば吸血衝動シーンの差分回収も面倒だった。

他に気になったのは共通パート。話がつまらないし眠気を誘う BGM もあってダレた。だから一周目が一番キツい。スキップの遅さも気になった。オトメイトのゲームはこれが初めてなんだけど全部こんな感じなんか……。愛キャッチシステムは最初見た時は凍り付いた。速攻でオフにした。オフに出来るのは助かった。

と、ここまで文句しか書いてないけど良かったところもある。物語を追いかけていて終盤に得られる無情感は美味だった。隊士が徐々に減り、刀から銃に移り変わる時代の波に翻弄される隊士たちを見るのは胸が塞がれる思いだったし、幕末の歴史を知っている読者としてはなんとも言えない気持ちになった。それと隊士たちが魅力的だったのも良かった。彼らがいなければ『薄桜鬼』を読むことを途中で放棄していただろうから。

それでもキャラクタの魅力だけで好きになれるゲームはあるのに、本作は納得出来ない個所が多すぎて好きになれそうもない。魅力がまったくないわけではないんだけど、まあ合わなかったんでしょう。半ば意地でコンプした。疲れた。

雪村千鶴

戦場によく出るので見ていて苦痛だった。伝令役とはいえ戦えもしない少女を連れてってもお荷物になるだけなのに、何故新選組はこの子を連れていくのか。実際千鶴は足を引っ張るし、それ以上に戦場にいてもいなくても新選組に迷惑をかけるのがキツかった。乙女ゲーだから千鶴は必須なのに、千鶴の存在が新選組崩壊の一因になっている。これで千鶴が魅力的なヒロインであれば「組織を狂わせた魔性のヒロイン」として楽しめたんだろうけどそれもない。せめて鬼云々の設定がなけりゃまだ心穏やかに眺めていられたのかもしれない。単に千鶴が気に食わないだけなら好みの問題で済むが、千鶴のキャラ自体は別に嫌いじゃないんだよなあ。というか嫌いになれるほど個性的でもない。

ところで『薄桜鬼』には日本の鬼と西洋の鬼(吸血鬼)がいて、羅刹化は吸血鬼の血の影響を受けているらしいが、そう考えると「西洋文化を受け入れた」ということで幕末時代に合わせてあるんでしょーか。でもこの設定はやっぱりないほーがいいとは思うけど。

土方歳三 (CV:三木眞一郎)

土方ルートは新選組の歴史が比較的丁寧に描かれていたし、土方だけでなく色んなキャラクタに見せ場が用意されていたのは良かった。特に隊士が一人ずつ死んでいく経緯がきちんと描かれており、土方の悲しみにも同調しやすい。特に近藤が投降した後、流山で背を向けて佇む土方のシーンはぐっと来た。その後も次々と色んなものを失い、それでも新選組を抱えていく生き方しか出来ない背中が切なかった。崩壊していく新選組をそれでも決して捨てない姿は頼りになると言うよりもただただ痛々しい。

しかしこれほど新選組を大事にしている土方が、いても何のメリットもない千鶴をそばに置き続けることへの違和感は最後まで拭えなかった。土方ルートは特に千鶴のせいで隊士が次々と死んでいくのを何度も目の当たりにさせられるだけにどーにも……。ぶっちゃけ千鶴さん疫病神ですよね? お荷物程度ならまだ許容出来たかもしれないが、鬼という厄介な敵を呼び寄せるんだからもうお荷物ってレベルですらない。そして『薄桜鬼』の土方は従来のイメージ通りの「新選組を第一と考える人物」として描かれているのに、そんな千鶴を放り出さないのが謎。新選組がそんなに大切なら土方は千鶴を手離すべきだった。新選組から離れた千鶴に行き先がないわけでもないし、千姫が預かると申し出ていたんだから引き渡してしまえばよかったのだ。千鶴も何故そこまで新選組に拘るのか。居続けても自分のせいで周囲の人間が死んでいくのを直視させられるんだから、千鶴にとっても辛いだけだろうに。辛い思いをしてでも好きな人がいるから離れたくないという強烈な思いも伝わって来ないから、千鶴が決断も出来ず流されるまま新選組に居座っている印象しかない。つまり「土方のキャラクタ」と「千鶴がいなければ乙女ゲーとして成立しない」という根本的な問題同士が乖離している。他のルートでもそうだけど土方ルートは顕著。この天秤はどうあっても釣り合わないし、この一点をどうにか割り切らないと厳しい。

ちなみに恋愛描写も殆どないんだけど、恋愛してる余裕はないよなあ。土方の照れ顔が見れるのも一箇所だけというレアっぷりで、その貴重な顔を見ることが出来たのが千鶴じゃなくて平助だったのは笑った。最終的には土方にとっての「生きる理由」が新選組から千鶴になるが、それも説得力がない。新選組と千鶴が土方の中で同等の存在になったのだと言われても「あ?」という気の抜けた反応が真っ先に。ついでに土方を恨んでいたはずの風間が五稜郭では妙に物分りのいい鬼になっていたのもポカーンだった。

土方は魅力的なキャラクタだったし新選組の歴史を再現してくれたのは良かったけど、千鶴や風間などのオリジナル要素が土方ルートの盛り上がりを邪魔してませんか。「ここで千鶴がいなければなー」と思う場面が多かったのが自分でも虚しかった。

沖田総司 (CV:森久保祥太郎)

沖田ルートは千鶴が新選組に関わらなくなっていくので、疫病神の印象をあまり受けないのは良かった。迷惑をかける相手が新選組という集団から沖田個人にスライドされただけとも言うけど。でも羅刹化しても労咳は治らず病は進行し、吸血衝動と戦い、血に狂う可能性に対する不安は常に付きまとい、土方への不信や薫の執拗ないたぶり方など明るい展開がないまま二人で手を取り合って暗闇を駆け抜けた印象で、沖田ルートのこの暗い雰囲気は好みだった。更に二人は離隊したわけでもないのに新選組から離れてしまうからか、「一緒にいられる相手は互いしかいない」という感覚が強い。千鶴も羅刹になってしまうことでそれはより一層顕著になった。しかし変若水を飲んでも吸血衝動に苛まれたり、銀の銃弾を受けてやっぱり伏せったりと沖田は羅刹になって病から逃れられたかのように思えたのにそれでも別の苦しみと闘わなければならないのかと思うと……。最後には眠るように死んだが、今際の際が幸せだったように見えたのが救いかな。ネットで軽く検索してみたら沖田は眠っただけで死んだわけではないという意見が多いけど、だとすると突然千鶴に好きだと言ったり不穏な発言を零したのが不自然に感じてしまう。『随想録』でも穏やかな暮らしをしている二人が見れるから眠っているだけ、という解釈も見たけど、『薄桜鬼』の沖田ルート本編→『随想録』の沖田エピソード→『薄桜鬼』の沖田ルート ED という流れである可能性も捨て切れないしやはり沖田は死んだのだということで。

でも結末は BAD ED のほうが好みだった。千鶴を殺そうと見せかけて沖田の注意を引き、そこに予め備えていた薫が沖田と互いに致命傷を与え合う展開がツボ。千鶴が鬼で羅刹だからこそ出来た薫の罠が良い。でもそれ以上に血に狂った千鶴を沖田が約束通り殺す結末が見たかった。躊躇いもなく容赦もなく、苦しむ余裕すら一切与えず一撃で千鶴を斬り殺す慈悲を見せる沖田の姿はきっと美しかっただろう。これなら沖田が序盤から何度も口にして来た「殺す」という台詞が活きる結末になったんじゃないか。

薫については思考回路がよくわからなかった。途中までは妹に自分が味わった絶望を味わわせたいという動機が示されていて、それは面白がって絶望する顔を見たがっていた風間と共通しているけど薫のほうが説得力もあったし、むしろ全部のルートで薫をラスボスにすべきだったのではないかとも思ったんだけど、終盤の鬼の国の復興云々で一気につまらないキャラクタになった。千鶴への態度も一貫してないし、作者の都合で動かされている感がすごい。ところで彼はなんで女装してたん? 覚書によると千鶴に近づくためらしいけど、別に女装しなくても近づけるだろうに。……もしや趣味?

最大の不満は沖田と土方の確執。確執っつーか沖田が一方的に土方を責めるんだけど、これが唐突過ぎた。それまで沖田と近藤の絆を感じさせる描写が殆どなかったから、近藤が重症を負った時の沖田の言動は短絡的で別人のような印象を受けてしまった。山崎とは犬猿の仲ってな設定も説得力がないし、せめて共通ルートで近藤と土方と山崎との会話がもうちょっと挿入されていれば違ったんじゃないかなあ。というかそれ以前に沖田と土方のこの中途半端なエピソードは無くても良かったよーな……。どうせ書くならもっと濃密に描写して欲しかった。これではちょーっと浅すぎる。

沖田は他のルートでは病気で表舞台から姿を消すためか、スルーされ気味なのが切ない。色んな隊士が比較的丁寧に描写される土方ルートですらそんな有様なのがもう。平助が油小路事件を機に羅刹になったように、沖田もどのルートでも羅刹化させて出番を増やすことは可能だっただろうに敢えてそうしなかったのは、沖田がまともだからか自分の生に執着がないからか。でも近藤の役に立ちたいがために変若水に手を出しそーなもんだけどなあ沖田って。戦死ではなく病で倒れるってのは武士にとっては相当の無念だろうし、沖田は誰よりも自ら羅刹になろうとする動機を持っているんじゃないか。

斎藤一 (CV:鳥海浩輔)

武士としてのアイデンティティに向き合いながら、土方の命令に全肯定だった斎藤が己の意志を示すようになるまでの成長が描かれており、ラスボス戦の「ここは俺が食い止めるからお前は先に行け!」の連発とか何故いるのかわからない平助とか(でも原田ルートで平助が放置されていた分このルートで平助、原田、新八の仲良し三人組が一時期でも復活してくれたのは良かった)風間のしょっぱい悪役ぶりとか突っ込みどころは多かったし、千鶴のせいで斎藤が羅刹化する場面を筆頭に「千鶴が存在することで新選組に迷惑をかける問題」が強く出ているが、それらを除けば比較的いいシナリオだった。

印象的だったのは斎藤の新選組への忠義と、失われつつある武士の在り方に対する疑問と葛藤。羅刹になってからも新選組のために昼夜を問わず働く斎藤は見ていて痛々しかったし、後者についても現代を生きる私には切なく映った。斎藤は戦国時代に生まれていれば悩まず生きて行けたのかもしれない。幕末は武士が淘汰されて行く時代だったことが、斎藤を通してありありと伝わって来た。他にも初めて洋装になった時にボタンを掛け間違えて照れたり、吸血中に無意識に耳朶を延々舐め続けていたことを指摘されて慌てたり、千鶴が名前で呼ばないと頑なに振り向かなかったりと可愛い一面もあり、随所で見られる照れ顔の破壊力も大きかった。終始デレすぎないでいてくれたのもいい。また斎藤は他ルートでは黙々と命令を遂行するだけなので何を考えているのかわかりづらいけど、斎藤ルートでは千鶴よりも斎藤の心情が伝わる作りになっていたのが面白かった。

悪い意味で印象に残ったのは風間。悪役を徹底してくれるのはいいんだけど、なんかこー小物感が……。最終戦ではあれほど馬鹿にしていた斎藤に圧倒されて「おのれおのれ」や「まがいもの」と連呼する様はどっかの英雄王のようで面白かったんだけど、一番アレなのは鬼に変身した時。「人間ごときにこの姿を見せてやるのは、初めてだぞ」とかフリーザさんみたいな台詞が出てからは一気にオーラが萎んだ。だから第二形態があるぜヌハハハ系は一気にしょっぱくなるからやめろとあれほど言ってるでしょうが。

ところで斎藤は土方ルートではいつの間にか羅刹になっていたけど、他のルートでも描写されてないだけで実は羅刹になってるのかもしかして。

藤堂平助 (CV:吉野裕行)

最初にプレイしたルートだったせいもあるが、序盤が退屈でなかなか進まずプレイが苦行だった。二周目以降は共通パートをスキップ出来るし「面白くもない話を読まなきゃならない」という心理的苦痛が緩和されるので、一周目でなければ印象は違っていたのかもしれない、と思いたいけど平助は好みから外れたキャラクタだし、シナリオも他のルートに比べて雑なので一周目じゃなくても印象の差はなかった気もする。

平助は変わっていく新選組と己の思想にズレを感じて伊東派について行くんだけど、その後偶然出会った時には伊東を信じきれなくなってたり新選組に未練を感じたりと年若い者ならではの未熟な面が出て来るし、平助もそんな迷ってばかりの自分を恥じる。そんな彼がどういう答えに行き着くのかを楽しみにしていたんだけど、結局「千鶴を守る」という乙女ゲナイズされた方向に到達してしまったのは残念。

後半は山南さんと千姫の活躍が目立つ。でも「私は選ばれた真の羅刹なのです!」とか山南さんが言い出してからはしょっぱい展開になったよーな。

平助ルートで良かったのは千鶴と平助よりも風間と千姫の関係。特に好き合っているわけではないけど、利害が一致して子を成す契約をするのが萌える。風間は千鶴よりも千姫との組み合わせのほうが面白そうなんだよなあ。風間が千姫を価値のある女として認めているのもいい。その後千姫は山南さんに攫われ、それを風間が取り戻すべく追いかけるのも燃えるし萌える。というか千姫のほうがヒロインぽいなこれ……。

ただ、風間本人はギャグっぽかった。山南さんを倒しに行く時はエラソーに合流したくせに不意を突かれてあっさりやられたり、エラソーな態度を取っておきながら貴重な情報をくれたりとなんかもう微笑ましいレベル。千姫を山南さんに寝取られてキレるのもじわじわ来た。羅刹の血を無理やり飲まされ、その後苦しむことになる千姫は不憫だけども。

原田左之助 (CV:遊佐浩二)

気遣いも出来るし空気も読めるしで、新選組においても物語を進行させるにしてもオールマイティに万能なキャラクタ。そういう意味では斎藤と似ているが、土方に忠実な斎藤とは違って原田には主体性があるから安定感もある。けど私の好みじゃなかった。「女は男に守られるべき」と何度も言うのが少し気になったせいもある。千鶴は鬼だからタフだけど戦う技術に長けているわけではないので戦場に出ないほうがいいし、戦場に出たとしても変に活躍しようとせず大人しく隊士に守られるほーが邪魔にならないと思うが、原田が男は女は云々と口にするたびに「またそれか」と思うことが何度か(時代のせいもあるんだろうけど)。泣きわめく千鶴を黙らせるためにキスをするシーンもキツい。多分萌えるシーンなんだろうけど、あの展開には古さを感じてしまって私は駄目だった。

シナリオは千鶴が戦場にしゃしゃり出ないので安心して読めた。原田が羅刹化しないし、その分人間と鬼の違いに対する千鶴の葛藤が描かれていたのは良かった。ED では千鶴との子をあやすのに苦労している原田が見られるが、これは人間らしさを象徴した終わり方になっていて原田ルートの結末に相応しい。新八との別れも千鶴との描写より丁寧に描かれていて、もう原田は千鶴ではなく新八を選んだほうがいいんじゃないかなあとか思っていたもんな私。千鶴といる時の原田よりも、新八や平助と馬鹿騒ぎをしている原田のほうが魅力的だったし。しかし原田も新八も羅刹になってしまった平助のことは完全にスルーで泣いた。私が。あんなに仲良しだったのに。

不知火が出張って来る件についてはどうでもいいんだけど、何故か風間が途中から登場しなくなったのがアレ。つーか原田と不知火をそんな必死に因縁づけんでも。終盤いきなり登場する綱道さんについては……まあいいか。

ところで平助もそうだったけど、花街に行くのに酒を飲みたいだけで女目当てではないとか言い出すシーンは吹いた。クリアした今でも信じていない。攻略対象だからそういう設定にしたんだろうけど、ちょっと不自然じゃないですかね。

風間千景 (CV:津田健次郎)

作者の都合で動かされていたキャラクタ。ある時は妻にするために千鶴を攫いに来たかと思えば新選組と少し戦っただけで千鶴を放置して去ったり、ある時は新選組の屯所に侵入したかと思えば綱道との関係を千鶴に聞きに来ただけだったり「何しに来たんだ」という印象が拭えないでいたところに、風間ルートで「千鶴の目の前で新選組を痛めつけ、新選組の目の前で千鶴を攫って絶望を与えて遊びたかった」という理由が語られ、それも遊んでいるうちに千鶴より新選組のほーに興味が向かい、千鶴のことは新選組と刃を交えるための口実になり下がっていたらしい。うわこれは微妙。誇りを重視しているからこそ風間は信念のために戦場を駆ける新選組に関心を持ったんだろうけど、このもっともらしい理由にも作者の意図を感じて萎えた。風間ルートでは不知火も何故か登場しなくなるし、天霧も千姫についたり斎藤ルートでは風間に反発したりでどうも鬼組はよくわからない。

風間ルート自体は結構好み。二人でずっと新選組ツアーをやってるだけの内容だが、千鶴が新選組から離れたことはたいへん喜ばしい。更に千鶴が自分の出自を知り、綱道が災厄を撒き散らすのを同じ鬼の一族の役目として風間と共に止めるのはどのルートよりも納得が行った。それでも風間は千姫とくっついてくれたほーが断然萌えるけど。森の中で再会した時の風間と千姫のやり取りは楽しかったなあ。それと外から新選組を眺めることで、土方ルートとは違った無情感を味わえたのも良かった。

風間のキャラクタも好みだった。性格が捻じ曲がっている部分もあるが、蝦夷まで千鶴に同行したり恩義を返すために薩摩藩に属していたり、案外紳士だし優しいし嘘は言わないし、何より千鶴の意志を尊重しているところがいい。それだけに扱いの雑さが残念。風間のキャラクタが好みだとは書いたけどそれも風間ルート限定の話で、斎藤ルートあたりの風間はあまり好きじゃないんだよなあ。まあ好み云々はともかくこのブレっぷりはよろしくない。「捻くれているけど誇りを持っている鬼」か「人間を下に見ていて新選組を脅かす酷い鬼」のどちらかに絞って書いて欲しかった。たぶん風間は攻略対象なので悪人には出来なかったんだろうけど、それが結果として風間を中途半端な存在にしてしまった気がする。やっぱり敵キャラがブレると物語は締まらないな、ということを久々に実感。『薄桜鬼』が面白くない原因の一つは風間や綱道の扱いの拙さにある。

ところで『遙か3』の知盛を彷彿させるビジュアルと雰囲気には笑った。

近藤勇 (CV:大川透)

苦手なキャラクタ。いい人なんだけど、地味にイライラさせられる場面が多かった。土方たちを逃がすために新政府軍に投降する場面とかぐっと来るところもあるんだけど、苦手な部分がそれ以上に多かった。あと戦う場面が少ないためかあまり強さを感じない。

山南敬助 (CV:飛田展男)

腕が動かなくなってからの山南さんは見ていて遣る瀬無かった。頭のいい人らしいので刀を持てなくても新選組のために彼が出来ることはあったと思うが、新選組武装組織だしなあ。だから山南さんが薬に手を出してしまう展開は理解出来た。が、羅刹になってからは作者にとって都合のいい駒になってしまったのが残念。都合よく悪人になり、都合よく新選組を助けてくれる様はいっそ不憫ですらある。土方ルートではかっこいいところを見せてくれるんだけど、他のルートでは羅刹の可能性を最後まで模索していた山南さんが何故あっさり見切りをつけてしまったのかがよくわからず戸惑いのほうが大きかった。

永倉新八 (CV:坪井智浩)

日常担当。永倉本人は賑やかで楽しいし嫌いなキャラではないんだけど、カズキヨネ氏の描く筋肉が苦手なので立ち絵を見るのがちょっと苦痛だった。