Antipyretic

何かありましたら rpd1998★gmail.com まで

DIABOLIK LOVERS LIMITED V EDITION

http://www.otomate.jp/dialover/vita/

ええと自分でもかなり意外なんだけど、めっちゃ楽しかった……。もー大満足。プレイしてみるまではわからんものだなまったく。カジュアルエロ無双やツッコミどころ満載な展開の数々には笑ったし、何よりヴァンパイア独特の価値観によって形成されている歪んだ人間模様が性癖に刺さった。萌え転がった。キャラクタも魅力的で、みんなバカでアホでやんちゃで可愛らしく愛おしい。

吸血鬼設定(というか人外設定)も上手く使われていたんじゃないでしょーか。逆巻兄弟による理不尽な言動の数々は、彼らは人間ではないから人間の物差しで測るだけ無駄なのだと思えたし、吸血行為もエロを推す方向に舵を取っていてこの潔さがいい。正直私としてはエロ自体は割とどうでもいいんだけど、好みはともかく一点に振り切って作られている作品は好きなんだな。それでいてカジュアルなのでとっつきやすい。

シナリオもそれぞれ十分もあれば読み終わるような細切れの小さなエピソードを一つずつ読んでいくタイプで、起承転結らしい起承転結もなくオチが最後まで描かれないことも多いけど、「これはこーゆーもんだ」と割り切れれば楽しく読めた。冗長な文を読ませられることもなくサクサク進められるのも良し。読み終えた後に残る余韻はないけどこれはなくていいタイプ。すぐ綺麗に忘れてしまうからこその面白さというか。

不満もある。基本的にユイが兄弟に吸血されたり舐められたりキスされたりセックスしたりするシーンが延々続くので、どうしてもルート道中で息切れする。それでも一つ一つのエピソードが短いから最後まで読み切れた。それと兄弟同士でわちゃわちゃするシーンがあまりなかったのも寂しい。ライトルートでアヤトがたこ焼き食べたの誰だコラァと暴れ回っていたけど、ああいうエピソードがもう少し欲しかった。ただこれは『ディアラバ』という作品の性質と構成上難しいし、他の媒体で堪能するべきなんでしょう。

システムは基本的なものは揃っていたし大きな不満はなかった。いちいちエピソードを選択しなきゃならないのは若干面倒だったけど、これはもー構成が構成だからしゃーない。ダミヘは好きじゃないけど承知の上で買ったのでまあ……。そういやユイのモノローグからキーワードを二つ選ぶ仕様は謎。あれは地味にめどいヽ(`Д´)ノ

絵は綺麗なんだけど、なんか印象が薄かったなあ。キャラクタデザインや絵柄は好みなのに好きな絵が少なかったというか。面白い構図があまりなかったせいかもしれない。

それと『ディアラバ』はド S ヴァンパイアを謳ってるけど、私の基準ではそういうキャラクタは見当たらなかった。M ならライトがそうかなと思ったけど S はどうかなあ。強いて言えばアヤトが一番ド S に近い子だったかな、とは思ったけども。

ところでオトメイト作品をいくつかプレイするようになってから、シナリオを大局から俯瞰するのではなくキャラクタやシーンを間近に眺めることで得られる楽しみ方ってのがわかってきた気がする。『ディアラバ』はオトメイトというより Rejet に分類されるんだろうけどまさに「キャラクタとシーンに萌えるための作品」だったし、恐らく三年位前にプレイしていれば挫折していた可能性が高い。タイミングも良かったんだろう。つーわけで吹いて突っ込んで萌えて、とかなり楽しい時間を過ごせた。面白かった。

小森ユイ

レイジが序盤にユイを「高級娼婦気取り」だと言ってたけど、乙女ゲームのヒロインなんてみんなそんなようなものです。レイジの発言は正しい。

ユイが流されヒロインだとは散々聞いていたけど、少なくても私が想像していたよりは自分の意志を持っていた。というか吸血鬼が理不尽な要求をする→ユイが自分の意志を主張する→吸血鬼が苛立ってお仕置き、が大体のパターン。まあ最終的には流されるけども。他の乙女ゲーなら異種族間の価値観の差を乗り越えて恋の力で相手の性根を叩き直すのかもしれないけど、そもそもユイは恋をしているわけではなくストックホルム症候群ぽいのでああなっちゃうのもしょーがないよなとあっさり納得できた。

ちなみにユイは理不尽な目に遭うが、痛々しいと思うことは一度もなかった。いやもーこの子どれだけ酷い目に遭っても次にはケロッとしてるんですよ。なんか殴っても殴ってもすぐにびょーんと復活するパンチングバルーンみたいなヒロインで、だから私も心置きなく吸血鬼の理不尽な言動の数々を笑って突っ込める余裕があった。というか流されやすくタフな彼女でなければ『ディアラバ』のヒロインは務まらなかったんじゃないかな。

ところで吸血鬼への SM 対応を決める時の S 寄りの選択肢は、ユイのサディストな面が出たわけではなくユイの中のコーデリアが影響しているらしい(少なくても選択直後に鼓動が鳴るシーンは全部コーデリアの反応っぽい)。そう考えると Ending 02 は単純にユイがサドだから到達した結末というわけではなく、コーデリアの影響が大きかったが故の結末なのか。この点を意識してそれぞれの Ending 02 を見直すとまた面白そう。

逆巻アヤト (CV:緑川光)

元々俺様キャラは好きだし見た目も好みだったので薄く期待していたんだけど、予想以上に面白かった。アヤトにも萌えたけど、それ以上にユイとアヤトの二人に萌えた。特に学園でのやり取りは普通の学園恋愛物語の一コマを見ているようで楽しかったなあ。

もちろんユイはアヤトにも酷いことをされるんだけど、想像していたよりはそんなに酷いとは思わなかった。いやまあダーツの的にされたり蝋を垂らされそうになったりココアやバケツやはちみつをぶっかけられたり目に泡をかけて目隠しプレイをされたり短いスカートを履かせて外出させられたり城の地下に置き去りにされたり貧血が常になるほど豪快に吸血されたりはするけど……って十分酷いか。でもやっぱりユイがケロッとしてるからあまり悲惨な感じはしない。ちなみにアヤトはサドというより苛めっ子だと思った。

話の流れはシンプルでわかりやすく、王道で楽しかった。俺様キャラが実は甘えん坊なあたりとか「俺様が消毒してやるよ……」系イベントが何度も入るあたりとか。特に最初の消毒イベントを見た時は、もはや懐かしいネタなのに今でも素でやってしまえるアヤトに妙な感動が沸いてしまった。撫でられるのが大好きなところも棘を抜いたアイアンメイデンを寝床にしているところも可愛い。笑顔も恐ろしく可愛かった。笑顔だけなら天使だった。料理してるユイに構ってほしくてベタベタするエピソードもニヤニヤした。だからユイがアヤトに対して母性本能をくすぐられるのもよくわかる。

そして面白いのがここで、ユイの体にはアヤトの母親の心臓があり、だからアヤトの母親の心臓を抱えた体でユイはアヤトに対して母性本能を刺激されていた。更にアヤトは母親を憎悪のあまり殺していて、そんなアヤトが母親の心臓が埋め込まれたユイを散々苛め抜いて吸血して抱いていた、というそれぞれの倒錯した構図が甘美でいい。それとアヤトの歌う ED の「幻日理論」が名曲で、アヤトルートをやった後はもっと好きになった。これの萌えるのは、コーデリアという女(あれは母ではなく女)の呪縛を受けてしまっているアヤトが女性視点の歌詞を歌っているところにあると思うのですよ。

結末は Ending 01 が好きだなあ。薬指に噛み跡をつけることで結婚指輪の代わりにする、という発想が寂しがり屋で俺様なアヤトらしくて微笑ましい。この指輪の件はアフターストーリーでも活かされていたけど、こちらも可愛くて良かった。普段は甘い話には興味ないが、この二人の組み合わせが好きなので楽しく読んだ。くだらないことで喧嘩してすれ違うベタな話だったけど、本編がすでにベタだったのでこれでオッケー。アヤトのキャラクタに少し違和感はあったけど、元々アヤトは他の兄弟に比べるとまともな部類に入ると思ったのでまだ受け入れられた。最後のケーキを食べさせてあげる CG も可愛い。

Ending 02 はアヤトの執着がユイよりユイの血液に向かう展開だったけど、あまり印象に残っていない。正直、アヤトはどの結末でもユイよりユイの血を求めている(要するに母の呪縛に縛られたまま)と思うので納得のいく流れではあるんだけどな。Ending 03 は憎い母の心臓の音に耐えられずアヤトがユイを殺してしまう結末で結構好き。あと Heaven シナリオでも普段は粗野なのにダンスが上手いところに萌えた。アヤトは帝王学を叩き込まれるほどにコーデリアに期待されていた子だったんだなあ、とここで実感。

逆巻カナト (CV:梶裕貴)

一番ヤバイと聞いたので最初に攻略したけど、聞いていたほどヤバイとは感じなかった。フォークで刺されたりしょっちゅう癇癪を起されたりと理不尽の嵐ではあるんだけど、そこはやっぱりユイがタフだからなあ……。それにユイも素でカナトの怒りを買うようなことをしていてカナトが怒るのも無理ないなと思えることも多かったし、そのせいもあってこの二人のやり取りはまるでコントのようだった。それとカナトのブチギレヒステリーを聞くのも楽しかった(これは中の人の演技が素晴らしかったことが大きい)。しかし何故ユイがこんな厄介で面倒なヴァンパイアから離れなかったのかは謎だったな最後まで。カナトのほうは「母親の香りがする女性」で「でも母親とは違ってちゃんと自分に優しくしてくれる存在」を求めたんだろうけど、それがユイだったんでしょーか。

カナトルートで面白かったのは、快楽堕ちしていく様よりもユイの中の倫理観が失われていく過程を描写していた点。カナトが人間を殺すのを目の前で見てしまったのに結局見て見ぬ振りをして受け入れてしまうエピソードとか、兄弟全員をシャンデリアで殺そうとして失敗した時に「全員、死ねばよかったのに」という言葉を執拗に言わせようとしてくるカナトに負けてユイが言ってしまうシーンとか。それとテディの中に収められているコーデリアの遺灰を舐めさせられる場面があるんだけど、あれもきっかけになったんじゃないかなあ。あの時のユイは灰の正体を知らなかったけど、無意識に「この灰を舐めることは人間として真っ当な行為ではない」ことは悟っていたというか。そして倫理観が失われていくということはつまり人間じゃなくなっていくということでもあり、そういう意味でもユイは徐々にヴァンパイアになっていったのだなと。だから最終的には父親に関する記憶が失われているとはいえ、父親のことも殺してしまえた。

Ending 01 では一族を皆殺しにして二人きりになれたユイとカナトが幸せそうだった。ユイの記憶が歪められている節もあるが、ずっと気づかないままでいられるならユイにとっては真実と変わらないしこれはこれでいいんじゃないでしょーか。Ending 01 がいわゆるベストエンディングに相当するんだろうけど、そこでも一族を皆殺しにしてしまうあたりは引きこもりなカナトらしい。でもカナトはもうユイ以外のものは必要としていないしユイが他のものに興味を持つとそれだけで苛立ってしまうので、カナトが心穏やかに過ごすにはユイ以外のものを排除するのがベストなのかなあと。カナトのヒステリーは兄弟も手を焼くほど厄介だったけど、本人にとってもしんどいと思うのよな些細なことでキレてしまうってのは。カナトのキレ芸を面白がって見ていた私が言うことじゃないけど、そんなカナトを気の毒にも思っていたのでこれで良かったのかもしれない。アフターストーリーではコーデリアが出張ってくるが、コーデリアが余計なことをしてユイが翻弄されてそれでまたカナトが不安定になってキレていたので、やっぱりこの子は「ユイと完全な二人きり」じゃないと安心できないんだろうなと改めて実感してしまった。

一番面白かったのは Ending 02。カナトのいない間の寂しさに耐えられずユイが他の兄弟に吸血してもらおうと彷徨う正真正銘のビッチになっていて、この淫乱なユイが愚かで可愛かった。しかし当然カナトにバレて、必死に許しを乞うもカナトがそう簡単にユイを信じるはずもなく、ユイはカナトへの愛を証明するために他の兄弟を皆殺しにする。この発想がぶっ飛んでいて面白かった。けど油断していたとはいえ小娘一人に全員があっさり殺されたのかと思うと情けないな逆巻兄弟……。唯一頑張っていたのはスバルだけど、ユイの襲撃に気づいて返り討ちにしようとしたまではいいものの勝手に階段から転げ落ち、その隙を突かれて殺されてて吹いた。なんでそう命張ってまでコントやってんだ……。

Ending 03 はユイが蝋人形にされてジエンド。これはコーデリアにとっても忌々しい話だろう。彼女は二度もカナトに消し炭にされてしまったんだから。しかし「カナトの性格を矯正させよう会議」に思いの外真面目に応じてくれる兄弟の皆さんには笑った。

逆巻ライト (CV:平川大輔)

ライトは初っ端から愛じゃないと言われたのでテンションが上がった。恋愛じゃない話は大好物です。恋愛ゲームで敢えての恋愛じゃない話はもっと増えて欲しいな。

しかしライトは変態担当らしいけど、彼は本当に変態なのかなあ、という疑問が最後まで抜けなかった。ビリヤードのキューで体を弄ったり貞操帯をつけようとしたり官能小説を音読させたり母親の墓前でイチャイチャしたり自慰を強要したり床に落ちたユイの血を這いつくばって舐めたり色々やってるし、別に「この程度では変態とは言わぬ」などと言うつもりもないんだけど、なんというかライトは変態キャラを演じているだけのようにしか見えないんだな。彼を見ていると「無理してない?」と感じる時がある。具体的にどの辺が、と聞かれると即答できないのがもどかしいけど、端々に空々しさを感じてしまう。そしてそれはコーデリアが原因なんじゃないか。自分は母親と叔父が目の前でセックスをしても興奮できるのだと思い込もうとしたというか、そうでもしないとやっていけなかったのかなと。そしてコーデリアはアヤトにばかり期待していて自分のことは性欲を満たしてくれる都合のいい存在としか見ておらず、母親と繋がれるものがセックスしかなかった。だからライトは母親とも姦通する。そうしてライトは「変態」であることでしか自己を保てなくなっていった。ユイに「変態!」と詰られると喜ぶのも、自分がちゃんと変態でいられていることに安堵していたからじゃないのかな。考えすぎかな。単なる変態としてのライトよりも、こうした背景があった末にああなったのだと考えたらあのどこか不自然な変態キャラにも納得がいくのだけどな。アヤトルートのアフターストーリーで絡んできたのも、アヤトへの劣等感があるからだろうし。だからライトはリヒターによく似ている。兄への劣等感を抱えているところとか兄の夫人を欲してしまうところとか。

あ、そうそうライトと言えばユイをアヤトに吸血させて興奮する寝取らせシーンがあったけど、あれはめっちゃ楽しかった。乙女ゲーで寝取らせは貴重だし、何より寝取られは大好物だけど寝取らせにはそれほど惹かれなかった私がこの寝取らせだけは楽しめたのが予想外。おかげでヒロイン視点なら寝取らせも結構面白いのだと気づいてしまった。

Ending 01 はライトが父親を殺して当主になるんだけど、これはライトがどうこうよりもカールハインツを殺されて激昂するコーデリアに、ユイが「貴女(の血)がカールハインツを殺したのよ?」と冷たく告げるシーンがとても好き。しかしライトは当主になる気がなかったのになんで気が変わったのか、そこがよくわからなかった。ユイが欲しくなったからというよりは母親の血を求めてのことなのか。

一番好きなのは Ending 03。ユイの血を利用して父と叔父を殺し、ユイの中にいるコーデリアを呼び出してそのままユイの体ごとライトが母親を今度こそ自分の手で殺す結末で、これが一番しっくり来た。三つ子は基本的に全員そうだけど、特にライトは母親への愛憎が深いんだろうな。Ending 02 は印象に残ってない。

ちなみにライトルートで一番面白かったのはレイジだった。絶望して死のうとしているユイにレイジがヴァンパイアでも死ねる薬を渡すんだけど、実は催淫剤でした、というオチで吹いた。なんでそこで催淫剤? 意味がわからないよ!

逆巻シュウ (CV:鳥海浩輔)

イヤホンを常につけている吸血鬼で、ええとそれはもしかしてヘッドフォン娘的なアレなのか……。ちなみに基本的にはクラシックを聴いているらしいけど、ユイが一度イヤホンを片方だけ借りて聞いてみたら女性の喘ぎ声が聞こえてくる、てなエピソードがあったのは笑った。あれは自分が抱いた女の喘ぎ声なんですか? セックス中にゴソゴソとレコーダーで録音したのかなと考えるとじわじわ来るんだけど実際のとこどーなん?

このルートではシュウが何をやるにしても「面倒」の一言なので、お節介にも何故かユイが世話することになる。というよりもはや介護? 食事も面倒、風呂も面倒、着替えも面倒エトセトラエトセトラ。ただその分口だけは回るようで言葉で弄するタイプ。特に隙あらばエロに絡めてくる屁理屈がアレ。ユイが「あれもこれも面倒くさいって、どうしてその尻拭いを私がしなきゃいけないんですか」と言えば「うわ……変態」「尻、って言いたかったんだろ?」と返してくるのが心底からくっだらねえええ……。あまりにもくだらないので一周回って笑ってしまった。これ普通にウザいと思うんだけど、律儀なユイはいちいち反応するからシュウも楽しかったんだろうなあ。実際楽しそーでした。

後半になると介護シーンは減り、突然二人が延々とセックスを繰り返すだけの爛れた関係になるので驚いたけど、展開はともかくこの空気は好きだった。倦怠感を漂わせるシュウだからこその色気と、それに引きずられるようにして堕落していくユイの関係が美味。更にコーデリアの影響を受けてユイが嗜虐嗜好を露わにしていくし、シュウもそれを拒む素振りを見せないのでますます淫靡な空気になっていくのがいい。

しかしシュウはユイを好きになったのではなくコーデリアと馬が合ったのかな、と感じたんだけどどーなんだろう。事実、このルートのユイはほとんどコーデリアと同化していたようだし、シュウはユイではなくコーデリアのような女との爛れた生活に耽っていただけにしか見えなかった。でもアフターストーリーではシュウがコーデリアではなくユイを愛しているのだとかなんとか言って跳ね除けてるんだよなあ。アフターストーリーはキャラクタが違うように感じてピンと来ないシナリオが多かったけど、シュウは特に別人状態で困惑するばかりだった。内容もさして面白いものでもなく。

アフターストーリーについて先に触れたけど、Ending 01 は二人ですべてを捨ててトランシルヴァニアでひっそり暮らす結末になっている。シュウが人間であるユイと一緒にいればヴァンパイアハンターの目を誤魔化せるとか言ってたけど、あんなにセックスしまくってたのにユイはヴァンパイア化してないんか……? それとユイからサドッ気が漂ってるしそんなユイとの生活をシュウも楽しんでいるようなので、やっぱりシュウが求めたのはコーデリアを含めたユイだと思うんだよなあ。

そもそも私にはシュウがよくわからなかった。別にミステリアスでもないし難しいキャラクタでもないんだけども。何故よくわからないのかもよくわからない。無気力であることとか音楽を愛していることとかエドガーの件とかパーソナルデータは与えられるけど、これらの点と点が結ばれて形成されていくはずのシュウというキャラクタ像が上手く見えてこない。エドガーの件もさらっと語られるだけなので特に思うところもなく、「え、そんなことで?」と思ってしまった。むしろシュウはメンタルが弱いのかとも思ったけど、それもばあやたちに甘やかされてきたからなのか。シュウだけが両親に歪んだ感情を抱いてないのは愛されて育ってきたが故だろうし。

ところでシュウルートはレイジもちょいちょい出てくるんだけど、シュウのトラウマよりもレイジの嫉妬のほうがシンプルで理解しやすかったから、描写は少ないのに強く印象に残っている(私がレイジ贔屓なこともあるけど)。Ending 02 は特にレイジの矮小さが出ていて可愛かった。シュウから大事なものを奪おうとユイを刺し、激怒したシュウに軽く捻られ頭を踏み潰されて終了という惨めったらしい最期でほんともーこの人は……。ちなみにシュウは誰にも邪魔されずに怠惰な生活を送るには自分が頂点に立てばいい、ということで期間限定(?)で自堕落生活脱却。シュウルートの結末としてはこちらのほうがまだ納得が行った。Ending 03 はレイジの日記からエドガーの件の真相を知ったシュウがレイジと決闘するも相打ち――なんだけど、これはシュウやレイジよりも、シュウの亡骸を前にして泣き叫ぶユイと殺し合いを見世物としか見ていなかった他の兄弟との温度差が酷くて面白かった。恐らく殺し合ったのが別の兄弟で、レイジやシュウが見物していた場合も同じようなリアクションを取ったんだろう。

逆巻レイジ (CV:小西克幸)

眼鏡属性は特にないので最初は気になるキャラでもなかったんだけど、比較的常識人なためかほぼ全員のルートで場の進行役になっていることが多いレイジを見かけるたびに徐々に気になっていった。立ち絵のあの何とも言えない表情の素晴らしさの影響もあるかな。ユイを毎度毎度フルネームで呼ぶところも富野キャラなんですか貴方、と突っ込みながらもやはりときめかざるを得なかった……。中の人が好きだというのもあるけども。ただ、私はレイジのようなキャラクタは屈辱で歪む顔が見たいと思っていて、でもユイが色んな意味で虐げられるのがデフォルトなこの作品では望み薄かなあとも思っていた――ら、まさかの望んだ通りの展開が来て狂喜乱舞した。途中までは「高慢なレイジが丁寧な口調でユイをいいように利用しつつ甚振る」という想像通りの展開(ユイには淹れず自分一人で紅茶を飲みながら香りだけを楽しめと言ったり、毒薬を試飲しろと言っておいて実は紅茶でしたオチがついてきたり、学校に残って一人で先生に頼まれた仕事をしているユイに呆れながらも手伝ってくれたり、お仕置きと称して何故かカルボナーラをユイの口に突っ込んだり、天敵のシュウと偶然会っただけでユイを鞭で打擲したりと、捻くれているレイジとそんなレイジに翻弄されるユイが可愛くてこれはこれで楽しかった)が続くんだけど、レイジルートは Ecstasy シナリオに入ってからが真骨頂。

覚醒したコーデリアがユイの体のイニシアチブを奪い、ユイを盾にレイジを甚振り尽くさんと大暴れするんだけどこれがもう最高に楽しかった……楽しすぎた……。レイジ攻略を最後に残していたせいもあるんだろうなあ。今まではひたすら逆巻兄弟がドヤ顔でユイを虐げるばかりだったもんなあ……。で、コーデリアはまずレイジを跪かせ、レイジが大事にしているカップを躊躇いもなく割り、レイジを拘束してその体に鞭打ち、レイジの頬に張り手を食らわせ、レイジが用意した食事をひっくり返し、レイジを押し倒したかと思えば今度はシュウを誘惑してプライドをズタズタにし、レイジに教会で神に祈らせ、レイジに聖水を浴びせ、レイジの研究を全部ぶち壊し、ユイはもう消滅したと嘘をついてレイジの動揺を誘い、火傷した腕をレイジに舐めさせ、湖でうっかり溺れてレイジを慌てさせ、レイジにコルセットを締めさせた挙句にドレス姿を讃えさせ、とまあこんな感じでとにかく効果的にレイジを甚振ってくれるのでコーデリア様女神様と崇め奉りたい勢いだった。あの高慢な男が奉仕するとかもう超楽しいいいいいいいいいぃぃぃ。お前はユイを愛しているのだとコーデリアに指摘されて言い訳するのも可愛かった。そして思わず素が出たのか稀に出るタメ語も萌える。しかしレイジもやられっぱなしというわけではなく、理論武装コーデリアを揺さ振っていくのがいい。カールハインツを殺したいほどに憎んでいて愛してもいるコーデリアと、ベアトリクスを殺したいほどに憎んでいてやっぱり愛してもいるレイジの、歪んではいるけど似た者同士だからこその攻防戦は楽しそうにも見えて、プレイしていて一番楽しい時間だった。もーアドレナリンがドバドバ出てたもんな。それとユイとレイジの関係も萌えるんだけど、それ以上にレイジとコーデリアの攻防戦によって浮き彫りになるカールハインツとコーデリアベアトリクスとシュウとレイジの歪んだ相互関係が美味しすぎた。クリスタの美しさに惑溺したカールハインツと、そんなカールハインツを愛し憎んでいるコーデリア(ここらへんはオリンポスの神話っぽい。カールハインツとコーデリアの関係はゼウスとヘラそのものだし)。コーデリアの存在に脅かされてシュウに期待を寄せるベアトリクスと、嫉妬したレイジによってトラウマを植え付けられて無気力になり、才能を目覚めさせることもなかったシュウ。そして自分の才能に気づかぬ母を憎んで殺させたが、その母が満足して死んでいったことが許せないレイジ。このそれぞれの関係がいい。レイジがベアトリクスに望んでいたのは「自分に意識を向けてくれる」ことだったのか。母親には息子に殺されたことで絶望して欲しかったのに、そうはならなかった。母は死にたがっていたから。それもコーデリアなんていうレイジの目から見て程度の低い女のせいであったことが更に腹立たしい。だから蘇生させてもう一度自分の手で殺したかった。この母への歪んだ執着が面白かった。

ちなみにユイは自分の体の中から二人の攻防を眺めるしかできないんだけど、コーデリアが律儀にもユイの気持ちを代弁してくれる。そのことでレイジとの距離も縮まっていくので結果的にコーデリアが二人のキューピッドになってるやんけ、とか思ってたらコーデリアにも自覚があったらしい。このこともあってコーデリアは憎めないキャラクタだなあ。それとコーデリアって一見女王っぽいけど実はお姫様なんだよね。これはレイジルートをやるとよくわかる。何せ場当たり的で幼稚で我儘で、と甚振り方がまんま姫。プレイ前は魔性の女なのかなと思っていて、もちろんそうした面もあるけど本質的には姫だった。魔王の娘らしいからそれも当然か。レイジがコーデリアを「可愛らしい」と揶揄したのもそうした本質を目の当たりにしたからだろう。それと些細なことだけど、ライトの口癖は母親の口癖が移ったのかな。コーデリアがいつも「んふ」と独特の笑い方をしていたからそう思ったんだけど、うーんやっぱりライトは変態を装っているだけのような……。

もう一点意外だったのは、レイジみたいなキャラクタは実はマゾでした的な落ちが定番なので絶対マゾだろうと思っていたらそうでもなかったところとか。レイジは極端なサドでもマゾでもない印象だった。でもマゾじゃないからこそコーデリアに甚振られるレイジに萌える。マゾじゃないキャラクタが屈辱的な目に遭うことこそが美味しい。

最後はレイジが精製した薬によってコーデリアは消滅(レイジがコーデリアからのキスを受け入れていたのは薬を精製するためのデータが欲しかったためだったんでしょーか)。Ending 01 はラブラブエンドだけど、思いの外この結末が一番気に入った。ユイを求めるレイジが可愛かったし、ルート道中ではセックスもなかったから、ようやくイチャイチャできた二人を見て良かったねと素直に祝福できた。アフターストーリーでも他の女子に優しく接するレイジを見て嫉妬するユイに「私は、貴女のものですよ?」と言ってて動揺。え、そこは「貴女は私のものですよ」じゃないの? ユイの気を揉ませまいと他の女子への対応を変えるあたりなんてほんと優しい彼氏っぷりで、萌えるより驚いた。

Ending 02 はレイジ下僕化。ユイとレイジの関係がそのままコーデリアとリヒターの関係のようになっていてこれはこれで面白い結末かな。ただこのレイジはユイに執着しているというよりも、ユイの血(=コーデリアの血)の虜になっていると捉えたほうが正しいような。それとレイジならいくら血という餌をチラつかせられても大人しく従ったままでいるとも思えないので、そこらへんが引っかかる結末でもある。

残る Ending 03 はコーデリア大勝利 ED。利用されるだけされて捨てられるリヒターが哀れだが、それでもリヒターはコーデリアを愛しているんだろうなあ……。

というわけでたいへん楽しかった。レイジルートが面白かったのはコーデリアのおかげでヒロインと攻略対象の二人だけで回るシナリオじゃなくなったことと、起承転結がちゃんとあるからなんだろうな。それとコーデリアという「敵」を排除するまでの流れが描かれるのがいい。他のルートではだいたいカールハインツを殺して終わるが、カールハインツがほぼ登場しないし倒すまでの描写もないから今一つハッピーエンドに辿り着けた感が薄い。ないならないでいいけど、例えご都合主義だろうと読める展開だろうとあったほうが盛り上がるんだなということはレイジルートを見ていて思った。

ところでレイジが右手にしか手袋をはめてないのは、トラウマやら何やらで重大な背景があってのことだろうと初めてレイジのビジュアルを見た時からずっと思ってたんだけど、なんもなくてワロタ……。ただのファッションだったのかお前……。

逆巻スバル (CV:近藤隆)

スバルを攻略したのは後半になったのだけど、他のルートでの登場率が低いので印象は薄かった。でも攻略してみたら随分と個性的というか、とにかく予想外で面白かった。何が予想外ってアホの子だったのが。アホの子担当はアヤトだと思っていたから完全に不意打ちだった(いやアヤトも十分アホの子ではあるんだけど)。カナトルートで階段から落ちて隙が出来たところをユイに殺されるというドジをかましたこともあったけど、あれはスバルの貴重なうっかりシーンだと思ってたのに何たる……。というわけで振り返ってみると萌えるよりツッコミに忙しいルートだったなあと。

まずいつも「うぜぇ」としか言わないボキャブラリの無さや、部屋にでーんと棺桶が置いてあるのが可愛くて笑った。それから序盤の「……別に、オレは周りのヤツらに嫌われてるわけじゃねぇ……」でじわじわ来て、今度は以前ユイの入浴中に壁を壊した件のお詫びにと「お前にオレの身体を見せてやろうと思ってな?」と言ってくるシーンで堪え切れずとうとう吹いた。意味がわからないですよどーしてそーなった? ユイが断ると「善意を拒否するつもりか?」と凄んでくるのもアレ。えっ善意だったんすかソレ。そうやって押し付けたかと思えば今度はサービスしてやったから今度はお前が返せとか言ってくるんだけど、ここまで来ると理不尽だと怒る気にもなれない。このシーンからスバルを見つめる私の顔は (^-^) になっていった。スバルくんは天然すぎる。

以降は怒涛のスバルくんをあたたかいまなざしで見つめるターン。寝ているスバルを見てユイが子守歌のつもりで聖歌を歌ってスバルを怒らせるシーンで笑い、いろんな動物に懐かれるスバルを見てユイが驚く、てな何年前の少女漫画だと突っ込みたくなるようなエピソードで吹く。そして一番爆笑したのが繁華街でスバルが「お前の処女は、俺のモンなんだよ!」と叫ぶシーン。公衆の面前で言い触らしてユイに羞恥心を与えるプレイならまた印象も変わるけど、スバルは素でやってるからなあ……。そしてこんなことを叫んでおきながらセックスはおろかキスすら最後までしない。でもそこが可愛らしかった。

スバルの他の特徴を書くと、逆巻家ではまだまともなところでしょーか。カールハインツに凌辱されてスバルを身籠ったことで狂い、「お前なんて、生まれなければよかった」とまで言い放った母親のことも憎んではおらずむしろ憐れんでいる。それと Dark シナリオのプロローグの時点でコーデリアの存在を感じ取っていたのもスバルだけだったんじゃないかな。アホの子だけど鋭い子でもあるのが美味しい。他にも生贄として逆巻家の花嫁にと差し出されたユイを哀れに思って逃げ道を与えたり(ユイの状況に哀れなクリスタの姿がオーバーラップしたんだろうけど)、ユイがヴァンパイア化しないように吸血を控えたり距離を取ろうとしたり(ちなみに吸血を抑えたせいでコーデリアの血によるブースト効果が得られずカールハインツに負けて死ぬ皮肉な結末が Ending 03)と、不器用なだけで優しい吸血鬼だったなあ。あまり年下っぽくないところも良かった。

Ending 01 は憎き父親を殺し狂気に蝕まれていた母親も殺して救いを与え、二人で永遠に生きていこう的な結末なんだけど、ユイをクリスタの「白薔薇」ならぬ「月下美人」と表現していたのが吹いた。月下美人ておい……。いやスバルは真面目なんろうけど、さすがにこれは見ているこちらが恥ずかしかった。まあそんなところも可愛いし、だからこそのスバルだとも思うけども。しかしカールハインツを殺したんだからスバルが当主になるのかと思いきや、同族殺しは大罪だからと追放されていて困惑。なんでじゃ?

Ending 03 は先述の通りスバルが死に、ユイもスバルからもらった銀のナイフで自殺、という切ない結末。これはこれで悲恋の余韻が感じられて好きだな。コーデリアは他のルートだと消滅したのかどうかがはっきりしないが、この結末では滅んだんだろうと思える。とはいえユイの死後にリヒターがやってきてまた心臓を他の赤子に移植したら元の木阿弥になるが、さすがにそれはない……か? でもコーデリアさんしぶといからな……。

でも一番好きな結末は Ending 02。カールハインツを仕留められなかったスバルに血を飲んで欲しいと告げてユイがスバルのエサになることを選ぶ ED で、ユイの血をなるべく飲むまいと我慢してきたスバルの覚悟をユイのエゴで踏み躙ったと言っていい展開だったのが美味しい。私は真っ当なキャラクタは刺さらないことが多いが、真っ当なキャラクタが真っ当だからこそ苦しむ展開は大好物なので萌えた。スバルは真っ当な感性を持っているので、ユイをエサにしてしまったことを後悔し続けるんだろうと思うとたまらん。

アフターストーリーはスバル的には黒歴史かもしれない。Ending 01 は修羅の道を歩むけどオレについてきてくれ的な終わり方だったのに、新婚さん的な空気でイッチャイッチャしている二人に思わずズコーてなった。しかもくだらないことで喧嘩して、鬱憤を晴らそうとまた家中でがしゃんがしゃんと暴れ回っていたスバルが階段を壊してうっかり自分も落ちてしまい、その時の衝撃で記憶喪失になるのが……。結局ベランダから落ちて記憶が戻るんだけど、ユイが何も言わないのでスバルは何も知らないまま終わる。格好悪いスバルの姿を見せられただけで、話もつまらなかった。

そして Heaven シナリオのプロローグはなんていうかもう。「裂かれた服の切れっ端が、みるみるうちに赤く染まっていく……」とか「ドクドクと途切れることなく鼓動を打ち続け、新しい血をオレに献上してる……」とか「そんなお前だから、他よりも優しく、他よりも酷く。牙を、立ててしまいたくなる……」とか地の文ではなくスバルが素でしゃべってくれるので、ユイよりも画面の前の私が「ウワーーーーーーーーー!!!」状態に。こんなにダメージを食らうのは私もポエム文章を書いてるからですよチクショーヽ(`Д´)ノ