Antipyretic

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DiaboLiQuE

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画竜点睛を欠く。輪廻転生という題材があまり好きではない私でも没入出来たくらい序盤から面白く読んでたけど、それも四話まで。最終話は平和で穏やかな日々が語られて一気にテンションが下がり、それが延々続いて中盤でやっと面白くなったかと思えば最後は何が何だかわからない設定がドバーと出てきて置き去りにされたまま終わった。

ただ、先にも書いたように前半は面白かった。アズライトとレティシアの時を越えた恋愛を描いているだけといえばそうだけど、それが丁寧に描かれている。私が輪廻転生をテーマにした作品を好意的に見れないのは、前世の人間の勝手な都合で後世の人間の人生に介入しているように思えるからなんだけど、そうした問題に言及する場面もあったし、何より二話と三話は片方に前世の記憶がなくても「前世では相思相愛だったから」という理由を安易に使わず徐々に二人の距離が近づいていく様を描いていたのが良かった。先の読める展開も多かったけど、それも描写がしっかりしていれば瑣末な問題でしかないのだなと実感。特に二話のギルドのメンバーたちと和解に至った瞬間に何もかもをぶち壊される展開は容易に予測出来たが、それでも抉られるものがないでもなかった。三話は砂漠を歩くだけの地味な場面も多かったけど、その地味な場面があったからこそ終盤の「実は性別が逆転していた」という真相が明かされた時のカタルシスを得られた。四話は話が面白かった。アズライトが重傷を負ってからは地味な展開が続くが、アリアの夜這いからは話が盛り上がり、アリアの死と凶化の衝撃を越えた先にあった桜姫の絶望と憤怒のシーンがもう最高にエグくてたまらなかった。でもピークはここだった。

五話に入ってからは一気に失速。序盤は何故レティシアが一話の時と同じ容姿と名前で転生しているのかも語られないまま(アズライトがデュイとして存在していた経緯も不明)平和で穏やかな日常が語られるだけでダレたし、桜姫が復讐鬼となって襲ってくる場面は盛り上がったけどそれも一瞬で終了し、その後は説明もないまま薹霊がどうたらとか出てくるしロードデアボリカが全員アズライトの前に登場するしキャラクタも街も徐々に消えていくしでポカーン。薹霊云々の説明があればまだついていけたのかもしれないが、みんなしてくれない。かつてのアズライトが己の記憶を捨てた理由に薹霊云々があるとかで今のお前に教える義理はない、と言われても読者である私には面白くない。これで一気に萎えて、終盤の薹霊との問答も冷めた目で眺めていた。アズライトが己の記憶を受け入れた「ロードデアボリカ」ED だけは内容を理解できたけど、残りの結末は終盤の展開が何もかもどうでもよくなってたのでお察しの通り。人間の文明が発達してデアボリカへの対抗手段が出来た時代になったという設定は面白かったんで、そこを掘り下げつつ盛り上げていけば少なくても置き去りにされることもなく楽しめたんじゃないかなあ。

システムはそもそも古い作品なので不便なのは仕方ないとしても、一番困ったのがマウスカーソルの自動追尾。間違えて選択肢をクリックすることも多く、だいぶ鬱陶しかった。特筆すべきは「見る」「話す」「考える」「移動」の四つで構成されたコマンドを選択してゲームを進めていく点。本作がリリースされた頃には従来の ADV 形式が普及していた頃だろうし、何故こういう仕様にしたのか謎。戦闘もコマンド形式で、回答が載っているテキストファイルが付属されてなければ挫折していたかもしれない。ちなみに辞書も搭載されているが、専門用語や世界観の説明があるのかと思ったら難しい漢字の読み方が列挙されてるだけで、わざわざ用意するほどのものだったのか……。

文章は可もなく不可もなく。戦闘描写も頑張ってたけど面白くはなかった。絵は織音氏の昔の絵が見られるというだけでも新鮮だったし、作品には合ってたんじゃないか。CG 枚数も多いけどそれ以上に驚いたのは豊富な立ち絵パターン。表情差分はないが、イベント絵のような立ち絵が大量に用意されていたのは面白かった。エピソードごとにアズライトの立ち絵が変わるのも豪華。使い回しても問題なさそーなのに。ただ二画面分の縦長 CG もあるんだけど、スクロールが速すぎて絵の全体図を把握出来ないのはマイナス。ギャラリーでゆっくり見れるのかと思いきやそんなこともなく不満。というか焦れる。

以上、つらつら不満を挙げたけど四話までは楽しめたし満足はした。丁寧に過程を描いて徐々にいいところまで持っていって、そこから一気に絶望に叩き落とす作品は好み。特に二話と四話の悲劇はほんとうに素晴らしい。輪廻転生なので一組のカップルが延々巡り会うだけの話になりがちだが、それぞれのエピソードでのアズライトとレティシアの再会と寄り添うまでのドラマがバリエーションに富んでいたのも良かった。

アズライト

エプロン姿の立ち絵が用意されているくらいの泣き虫で優しくてなよなよしてて女々しい主人公なので覚悟してたけど、凶に対する中途半端なスタンス以外でイライラすることはあまりなかった。まったくないわけでもないが、アズライトが登場するたびにうんざりするまでは行かなかった。元の怠惰で偉そうなアズライトのほうが好みだったけども。

アズライトといえばレティシアへの一途な愛だけど、よくよく考えてみれば結構重い愛。ただレティシアに好きな男がいてもそれで彼女が幸せになれるのなら無理に介入せず遠くから見守ろうとするし、病む方向には行かないのでその点では安心できる。しかしアリアから夜這いをかけられて熱烈なフェラまでされたのに、まったく反応しないシーンは申し訳ないけど笑ってしまった。多分レティシアへの愛に感動する場面なんだろうなあ。そしてアリアが不憫すぎてそっちの印象のほうが強い。アリアとのやり取りを見ていて思ったのは、「一途な男」だけなら問題ないけど「一途で誰にでも優しい男」は厄介だな、ということだったのが何とも言えない。アズライトは優しくて一途な男だが、その優しさと愛は周囲の女の子を不幸にしている。桜姫とアリアは言わずもがな、レティシアですらアズライトに愛されたせいで不幸な目に遭っているとも言えるのが……まあレティシアはアズライトから愛されることを幸福だと感じているので問題ないけど。

凶に対するスタンスについては先述の通り苛立った。凶を作ることを嫌がる理由が「凶を強制的に隷属させてしまうことに抵抗があるから」で、そんな綺麗事を並べ立てておいて桜姫やアリアを「つい」で凶にしてしまう。これだけでも酷いが、凶にした後に桜姫を捨てたりアリアの気持ちに応えるでもなく放置するから始末に負えない。凶にしたからには責任を取れと。桜姫のことがあったのにアリアでまた同じ過ちをやらかして、更にアリアの場合は一人でいることを申し出てくれたアリアに甘えた形になっているのが情けない。五話に至ってはレティシアと二人でアリアのいる館にやってきてイチャイチャするもんだから開いた口が塞がらなかった。アリアの言葉に甘えておいて、アリアの気持ちなんてこれっぽっちも考えてない。良くも悪くも最初から最後までレティシアしか見えてない。でもそこが物語としては面白かったのがまた皮肉というか……。

ところでアズライトが三話で菫青、五話でデュイの姿になってるのがよくわからない。そもそも死ぬことがないので転生は出来ないし擬態しているんだろうけど、デアボリカにはそんなことが出来てしまうらしい。ライラ先生がデアボリカについて説明する時に「彼らの外見は、彼らの意志が、その様になりたいという気持ちで作られたと言われています」と言ってたんでそのあたりかな。ちなみに三話の菫青とデューンの関係は萌えた。ごつい女と攻め攻めしいショタの組み合わせはなかなかに美味しい。そういえば菫青は私の苦手な俺女だったのでそこはキツかったが、アズライトが擬態していたことを思えばなんとか受け入れられなくもない……ような? ただアズライトは自分と正反対の人間を擬態しようとして菫青になっていたらしいけど、乙女なところは共通しているのが面白かった。しかし菫青がデューンにティエラとのセックスを命じる場面は不自然だったなあ。嫉妬とかいろんな感情がごちゃ混ぜになり、デューンへのあてつけの意味もあったんだろうな、てのはわからなくもないけど突然でついていけない部分が大きかった。ただレティシアの項目で触れるが、レティシアの異常なところは出ていたのでそういう意味では必要なシーンだったのかな、とクリアした今になって思えるようになった。

レティシア

『家計』もそうだったけど、古い作品はメインヒロインだろうとなんだろうと処女であることに拘泥してないのが素晴らしい。レティシアは幼い頃から肉便器扱いだったようで、そこは悲惨で可哀想だとは思いつつもいつものアリスソフトだなあとも。しかしレティシアにはアズライト同様、特に好きなキャラクタにはならなかった。アズライトもそうだけど「いい人」で説明がほぼ終わるような人物にはそれほど入れ込めない。

逆にレティシアの転生体は、五話のレティシアは一話のレティシアそのままなので除外するとして、二話のジゼル、三話のデューンはどちらも面白かった。ジゼルは乱暴な言葉遣いをするので好みから外れるが、レティシアの記憶を影響を受けないので一人のキャラクタとして地に足がついている印象を受けたし、自分を通して前世のレティシアを見ているアズライトに怒るシーンも良かった。それとアズライトとジゼルは気の弱い男と気の強い娘ということで、互いの凹凸がぴったりハマって一番お似合いのように思えた。デューンレティシアが男に転生していたという変化球が効いた。でもやっぱり一番印象的だったのは菫青の命令とはいえ拒否もせずティエラとセックスをする場面。ティエラは私の苦手なタイプの娘だったけど、さすがに父親と客の前で好きな男の子とセックスさせられるのは悲惨すぎる。そもそもこの展開についていけずポカーンとしながら展開を追ってたんだけど、レティシアはすべてを知った上で実行に移していたのだと気付いた瞬間、レティシアへの印象が覆った。レティシアもアズライトに恋する女の子だからティエラの気持ちには気づいていたはずで、ああいう形でのセックスがどれだけティエラにとって辛いことなのかもわかっている。それでも実行した。つまり他の女の子の恋心を踏み躙れるほどにアズライトを求めた。一話ではあれほど純真無垢だったレティシアが、ジゼルとしての人生を経て恋のためにここまで怖い女になっていたのかと思うと恐ろしい。

セックスシーンと言えば、五話のアズライトとレティシアがようやく身も心も結ばれる時の演出は面白かった。テキストは一切なく絵が自動的に表示されていくだけなんだけど、これは特別感が出ていて良かったんじゃないでしょーか。アズライトとレティシアの二人にはそれほど入れ込めなかったが、それまで随分長い間互いを思っていたのにキスしかしていなかったのは萌えた。二人だけのささやかな結婚式も可愛かったなあ。

そして最後は記憶をすべて取り戻して薹霊になったことで、色々変わってしまった自分を受け入れてくれるかどうかで怯えていたアズライトに告げた台詞にぐっと来た。

「それって、今まであたしが知らなかったアズライトがいるって事でしょ?」

「それだったら…宝探しみたいだね」

可愛いしアズライトへの愛情も伝わってきて、ぶっちゃけ世界設定とか薹霊云々とかは心底からどーでもいいけど最後の最後でこういう台詞が聞けたのは良かったなあと。

火炎王 (CV:橋口浩二)

プロローグではテキスト表示もなく CG が次々と流れて火炎王が延々喋ってるんだけど、音声はここだけなのに迫力もないしキャラクタに合ってなくていきなり脱力させられた。

恐らく重要なキャラクタなんだろうけど、言動がブレていて結局何がしたかったのかわからん。二話三話あたりはアズライトを虐めるべく暗躍してるしえぐいこともやってんだけど、最終的には「実はいいお兄さん」みたいな扱いになってたのもちょっとなあ……。

性器が長いのは吹いた。1m はあるんじゃないか。それもう入らないのでは、と思ったらやっぱりそうらしい。人間形態になっても長さはそのまんまなんですか。アリアがアズライトにフェラをお見舞いしてたけど、その時は普通のサイズに見えたんだけどなあ。と、どうでもいいことで埋めるくらいには火炎王に関しては強烈な印象はない。ポテンシャルは感じ取れるだけに勿体ない。もーちょい掘り下げてくれればな。

印象的だったのは終盤のファトラとのやり取り。

「どうして…俺の周りの女は、最後になったら…俺にお願いってすんだろうなぁ……」

これはちょっとしんみり来た。というかこういうシーンをもっと増やしてほしかった。

ファトラ

火炎王との関係は面白そうだった。しかし描写が少ないので「面白かった」とまでは言えないのが惜しい。ロードデアボリカたちのまとめ役なので出番はそこそこにあるが、ファトラ自身が掘り下げられるわけでもないのが何とも……。

彭祖

刻風とヤってただけ。おじーちゃんだけど実は強いみたいなキャラは好きなんだけどな。

ゴルドー

要するに「アズライト←火炎王←ゴルドー」という三角関係みたいな状態だったらしいことに気付いたのは終盤も終盤だった。でもそのゴルドーが火炎王に殺されるのはなんとも味わい深い。まあその後復活するんだけども。

月姫

アズライトとの因縁が面白い設定になっている桜姫に対し、月姫のほうは自分を凶にした火炎王とも問題なくやれてるみたいだし特に強烈な背景がないので印象は薄い。

桜姫

一番好きなキャラクタは、と問われたら桜姫。一番感情移入できたし、それだけに悲惨さが伝わってきて一番面白かった。掘り下げが少なかったのが残念だが、それでもアズライトとの因縁はわかりやすいので桜姫への感情移入は難しくなかった。五話途中であっさり退場するし、アズライトにとっては通過点みたいな扱いだったのは不満だけど、ロードデアボリカ達が控えているからしょうがないか。ロードデアボリカ関連できっちり描写があればそうした扱いにも納得出来たんだろうけど、桜姫のようにわかりやすい設定がないからロードデアボリカ達よりも桜姫とのエピソードのほうが見たかった。

しかしそれでも四話の桜姫が登場してからの展開は壮絶で圧倒された。まだ人間だった時の桜姫が死んだ時と桔梗が死んだ時とでだぶらせてアズライトのトラウマを抉るような演出に始まり、偶然その場を目撃した桜姫が、自分を勝手に凶にしておいて捨てて逃げたくせにまたアリアを凶にしたアズライトを見て激高するのは当然だし、更にその凶アリアに目の前で妹を殺され、絶望と憎悪を露わにするもアズライトの命令でそのマグマのような思いを吐き出すことも出来ずに帰らされるのが相当にえぐい。この子はどこまでアズライトの欺瞞に満ちた優しさと弱さに振り回されるのか。五話では月姫の首とひとつになった二つ首の化物としてレティシアを殺そうとするところで逆にアズライトに殺されてしまうが、ここでようやく桜姫は初めて穏やかな気持ちになれたんだろう。もうとっくに死んでいる月姫に(ちゃんと……私を殺してくれた……)と語りかけるシーンは遣る瀬無い。

見た目も一番好きだったなあ。桜姫という名前もいい。

アリア

アリアは人間だった頃から魅力的なキャラクタだったので、四話は概ね楽しかったし殺されて凶になる展開は予想がついたものの衝撃もあった。凶アリアになってからも可愛かったし、一人で館に残る孤独な様子とか終盤のレティシアとの対話とかぐっと来る場面も多かったんだけど、街や人々の消滅云々についていけず置き去りにされていたのでアリアへの印象もそこに巻き込まれてしまった。消えかかる瞬間とか盛り上がっているのに「また意味不明な消滅現象が起きるのか」と冷めた目で見てしまうことになったのが……アリアのキャラクタ自体は好きなので不運というかもったいなかったというか。

八房

特に出番らしい出番もないので印象は薄いけど、かつての主人だった刻風との最期のエピソードはずるい。でも凶としての主はファトラだけ、と決めているあたりもいい。

刻風

最初の印象は「TADA 部長が好きそうなキャラ」。ランスシリーズのマリアみたいなキャラクタデザインだし、いじめられやすい体質っぽいところも似ている。しかし作中の活躍らしい活躍はなく、じーさんとセックスしていただけだった。

ジュモルチエル

三話のラスボスだったけど特にエピソードもないので影が薄い。ところで彼女の立ち絵を見て初めて気づいたんだけど、凶になるとノーパンにならなきゃならんのか。

薹霊

デアボリカ』が一気につまらなくなった原因。ただ、最後の問答で初めて知れたこともあったのでそういう意味では助けられたとも言える。ゴルドーの真意