Antipyretic

何かありましたら rpd1998★gmail.com まで

斬魔大聖デモンベイン

http://www.demonbane.com/special1/

荒唐無稽な娯楽作品。アッパーな空気と世界観で構築されており、描かれているのも愚直なまでの王道物語。ヒロインは空から落下して主人公と衝突するし、流れでロボットに乗せられてしまうし、美形の強敵はいるし、敵と共闘もすることもあるし、最後は細かいことはどうでもいいんだよと言わんばかりに愛の力で正義が勝つ。それは確かにご都合主義なんだけど、ここに詰まっているご都合主義は格好良かった。

驚いたのは日常シーンのテンションの高さ。当時のオタクの寒い会話のノリをそのまま反映させたよーな感じで、正直読んでいて辛いなあと思わないでもなかったけど慣れた。辛いと言えば「可能な限りの表現を全部ぶっ込んでみました」的なクドすぎるテキストにはのっけから「うわー」と声に出てしまうほどだったけど、クドい文章には耐性が出来ていたのでやはり慣れた。アニメや特撮などのパロ要素も同様に。いくら文章がクドかろーがパロネタ満載だろーが、話自体は王道でわかりやすかったのでついていけないということはない。クトゥルフ神話ががっつり絡んでいるらしいが、ナイアルラトホテップとルルイエ異本くらいしかわからん私が楽しめたくらいなので知らなくても大丈夫なんじゃないでしょーか。といってもプレイ中に旧神と旧支配者の概略くらいは調べたけども。

攻略人数は三人と少ないが、個別ルートに突入するのが早いしシナリオも長い。ただ、ヒロインを変えただけの同じ展開になる割合も多く、そこはスキップも効かないしちょっと鬱陶しく感じる。一応敵の出現するタイミングや倒し方が異なったりはするものの、基本が一緒だとやはり退屈に感じる。ライカルートだけは独自の展開へと進んで行くが、アルルートと瑠璃ルートは展開をほぼ共有する。それでもフルコンプ出来たのは、アルルートだからこその結末と展開が美味しかったし、瑠璃ルートじゃないと得られない真相が凄まじかったからだろうなあ。単純に言えばどちらも面白かった。ループ設定は色々ややこしくなりがちだが、そこを破綻させず広げた風呂敷を畳みきったのもすごい。

残念なのは敵の存在感が弱かった点。その代わりと言っちゃなんだけど、私にしては珍しく九郎とアルに萌えた。基本的に敵にハマることが多いので本当に久しぶりの体験なんだけど、今回は王道作品だけに主人公にハマれたのが気持ち良かった。テリオンは十分に魅力的だし悪くはないけど、中盤の動きがないせいか物足りない。最初から最後までパッとしなかったアンチクロスとは違い、序盤はインパクトがあったしラストはさすがの貫録を見せてくれたのでそれなりに満足はしたが、もーちょい暴れてほしかったなあ。

Niθ 氏の絵も購入動機の一つなんだけど、驚いたのがヤバいくらいの CG 枚数。序盤から出し惜しみせず次から次へと CG が表示される。圧巻。わざわざ主人公ピンでの CG が用意されているあたりは Nitro+ の通常運転だけど、私が製作者ならここの CG は必要ないと判断するだろう場面にまで男性キャラの CG が用意されているのが凄かった。ただ CG の殆どは戦闘シーンにあり、夜戦が多いせいで画面が暗くどういう絵なのかわからない時があったのは残念。おかげでデモンベインの姿がクリアした今でも把握出来ていない。

それと戦闘シーンが多いのに演出は弱い。どーんと CG が表示されるだけでは物足りなく感じるんだけど、まーでも当時はこれくらいが普通か。あの時代ですでに派手な演出を取り入れまくっていた『Fate』がおかしいんだな多分。ただ、アニメーションは本当に微妙だった。後半には何故かさっぱりなくなってたけど前半にもいらんかったな。

音声については、パートボイスってのは事前に聞いて知ってたんだけど、想像以上に少なかった。むしろ中盤はほぼないといっていいので、突然キャラクタの声が聞こえてくると驚く。戦闘シーンは声がつくと一気に盛り上がるんだから、アニメーション制作に割いたリソースを声のほうに注ぎ込んでほしかったなあ。

システムは可もなく不可もなく。オリジナル版は評判が良くないみたいだけど、私がプレイしたのは改良されているらしい廉価版なのでこれといって不満はなかった。

というわけでたいへん楽しかった。実を言うとロボットやクトゥルフにはさほど惹かれないのでこれまで興味もなくずっとスルーしてたんだけど、興味のない題材であっても問答無用で私を引き摺りこむパワーを『デモンベイン』は持っていて、そういう作品を優れたエンタテイメントと称するのかなと実感した。

大十字九郎 (CV:ヘルシー太郎)

「やれることやらないと後味悪ィから」という理由だけで邪神と戦い続けるお人好しの主人公、という図はありがちではあるけれど、九郎はものすごく好きになれた。普段の私なら間違いなくテリオンに惹かれるはずだから、珍しい事態で我ながら面白かった。これはテリオンの描写が物足りなかったせいもあるんだろうけど、一番の理由は九郎がありがちなキャラ設定なりに濃い描写が多かったからか。主人公ということを差し引いてもエロゲにしてはピンでの CG は多いし、アルとのやり取りやバカバカしくて楽しいエロシーン、アルルートでのロリコン宣言、瑠璃ルートで判明する覇道鋼造としての凄まじい生き様など印象に残る場面が多い。何よりフランスパンと形容されるほど大きいと聞いていた男性器が、本当に凄まじく物凄くて凄かった。まあ要するにちんこ DEKEEEEEEEEEEEEE!!!! ヒロイン三人のうち二人が普通の人間ではないのは、このビッグという言葉すら生ぬるいマグナムを受け入れなければならないからなのか、とすら思った。

不満はインスマウスでの女装 CG がなかった点。あれだけ膨大な CG があるのに何故女装絵がないのか、と思ったら CS 版では見れると聞いて泣いた。でもライナーノーツでポニテ姿を披露してくれたり、他にもマギウス・スタイルとかマント姿とか主人公にしては色んな恰好を見れたのは美味しかった。最初にマギウス・スタイルを見た時はダサいなーと思ったけど、CG によってはかっこよく見える時もあったしなんだかんだで好きっぽい。

アル・アジフ (CV:朝宮咲)

ラブシーンでニヤニヤしっぱなしだった。ここまでニヤニヤニヤニヤして顔が蕩けるのは久しぶりだった。それくらい九郎とアルには萌えた。女子キャラクタ単体の好みで言うならエルザが一番なんだけど、千年近く生きて来たくせに泣き虫で寂しがり屋で嫉妬深くて誰よりも「女の子」していたのはアルだった。一方で戦友として九郎を励ますアルも頼りになったし、九郎の隣にはやはりアルがいてこそ。基本的に相棒萌えというやつに弱いので、私が九郎とアルにハマるのは必然だったんだろう。だからこそアルルートのラストでテリオンとの頂上決戦まで昇り詰めてナイアの策略を打ち破り、戦友としての務めを果たした後に残った恋する少女の重い選択がぐっと来た。九郎を元の世界に返して一人で時空を彷徨うか、九郎を手放せずに永遠の庭を二人で彷徨うか。最後の最後でヒロイン視点の選択肢が入るのは唐突にも思えるが、お人好しな九郎は二人で永遠に彷徨うことをすでに決めているし、そうなると結末がアルの意志に委ねられるのも納得出来た。

私としてはアルの出した結論も結末も、二人で永遠に彷徨う選択をしたルートが気に入った。アルが自分の幸せを選んでも誰も責めない。だからアルは永遠の幸せを手に入れたと同時に、永遠の罪悪感に苛まれることになる。幸せを感じれば感じるほどにアルの中の罪悪感は蓄積されていく。これがもうたまらない。

それでもアルは九郎を欲した。そうして少女が選んだ選択の末に旧神になるってことは二人が永遠に戦い続けるってことでもあり、戦友としての絆も永遠になるのがとてもいい。九郎を元の世界に帰す結末は九郎に人としての幸せを返してやれるが、九郎が人間でアルが魔導書である限り別れは必定。しかしこちらは永遠に戦い続けるが、永遠に一緒にいられる。戦友としての二人があってこそ恋人になった二人だと思うので、やっぱり旧神 ED がハッピーエンドだと思うな。ただあの格好には突っ込みたい。特に九郎の股間周辺。

一方、九郎を返す結末は、最初は何故アルがいるのかがわからなかったんだけど、あれからアルが彷徨った挙句にたまたま辿り着いた先が、九郎のいる世界の九郎がアルとデモンベインによって強制的に返された時間より過去の時代で、そこで出会った覇道鋼造を助けて覇道財閥とアーカムシティを築き上げて九郎と再会出来るまでずっと待っていた、ということなんだろうか(書いててあまりのややこしさにうんざりした)。アルがたまたま九郎のいる世界と時代に到達出来たのはご都合主義かもしれないけど、だからこそ『デモンベイン』だなあという終わり方でこちらもすごくいいなあ。ロリコンが宇宙を救ったんだからロリコンそばにロリっ娘がいなきゃおかしいだろう。

いきなり結末の話から入ってしまったけど、アルが九郎を庇ってやられてしまい、デモンベインを動かせない中でそれでもいろんな人の協力を得てなんとかブラックロッジの襲撃を食い止める展開とか、そこからアルが復活する場面とか、人間である九郎を巻き込むまいと一人で最終決戦に向かおうとするアルを九郎がキレながら追いかける展開とか、とにかく王道ネタが大量に詰まっていて王道好きとしては楽しかった。

それと書かにゃならんのはエロシーンか。アルが九郎のあの凄まじいサイズのマグナムを受け入れなきゃならないからそりゃもうたいへんで、でもこんなにアホウで笑えて萌えて楽しいエロシーンは久し振りだった。とにかく九郎のちんこが大きすぎて、なんというかフィストファックなんてまだ可愛いレベルだったんだなあとかわけのわからないことを考えていたくらいだ。というか九郎とアルに萌えていた私にとっても待望のエロシーンだったのに、九郎のモザイクフランスパンに苦戦しているアルが見ていられず、序盤は「がんばれ……がんばれ……」と必死に応援していたけどあんまりにもあんまりなんでとうとう「やめたげてよお!」と思うまでになり、「二人のエロシーンが見たいけど苦しそうなのでやっぱりアカンけど見たい」という葛藤に苛まれる羽目になった。この時ほど「初めてのセックスなのにすぐに気持ち良くなれるエロゲのお約束」の発動を求めたことはなかった。しかしそんないらん心配をする私をよそに、アルが「敵をいつまでもいたぶり続けるなど、それが男の、戦士のやることか! 慈悲があるなら一思いにトドメを刺せぃ!」と一喝したので惚れ直した。そして要望通り、一思いに刺した後の九郎の「ブチ抜いた」の一言で吹き出した。これはひどい(褒め言葉)。その後は九郎が魔術で媚薬を精製したことでやっと普通のエロシーンになってくれたが、しかしこの二人は今後も媚薬に頼らざるを得ないのでは……。そして「コクピットでするんかい」と突っ込んだ第二ラウンドもいい意味で酷かった。ここで「ニトクリスの鏡」を使って鏡プレイを実行する九郎はたいへん楽しそうだった。そうして九郎がアホなことばっかやってるせいで、セックス中にアルが思わず笑い出すのがもうじんわり来た。アルがほんっとーに幸せそうで楽しそうで、アホなシーンなのに見ている私も幸せになれた。この後互いに気持ちよくさせようと妙な戦いに発展したり、アルのお漏らしから絶技開眼へとオチがついたのも含めて楽しかった。

覇道瑠璃 (CV:赤白杏奈)

姫さんには中盤までイライラさせられた。司令にしては身勝手な行動が多く、九郎にいちいち突っかかって来るわ足を引っ張るわで好きになれそうもなかった。しかしそこはアルに糾弾されるし、後半には反省してきちんと謝罪もする。その上で更に成長してくれたので最終的には可愛いなあと思えるまでになった。瑠璃ルートは瑠璃の成長物語でもある。特に倒れた九郎の代わりに姫さんがデモンベインを操縦することになる展開は予想外で面白かったなあ。アルは九郎のパートナーとして、ライカさんはメタトロンとして戦闘でも活躍する中で、瑠璃は財閥の総帥ではあるけどただの人間で、その象徴としてのヒロイン像を貫徹させるんだろうと思っていたから驚いた。これは今まで安全圏にいて吠えるだけだった瑠璃が九郎の戦いを目の前で見せられるだけでなく、実際に体験することで九郎の強さを知って成長していく要素になっているが、それよりも嫉妬を交えつつもお荷物にしかなっていない瑠璃を詰ったアルとの共闘を経て、一人の男を同時に愛した女同士の和解へと繋がっていくのがたまらない。だから瑠璃ルートは九郎と瑠璃の恋愛や瑠璃の成長物語よりも、瑠璃とアルの戦友としての絆が印象的だった。最後の最後で九郎たちが大勝利を遂げられたのも、二人の女の子が力を合わせたからに他ならない。

そして同じくらい印象に残るのが嫉妬に翻弄されていたアルの姿。嫉妬はやり過ぎると鬱陶しく感じるので、アルルートでエンネアと生活している時のアルの嫉妬は好きじゃないんだけど、瑠璃ルートでは九郎が瑠璃に惚れているのでアルの嫉妬が切なく際立つ。そこを突かれてナイアに抉られるシーンもたまらない。

「妾は九郎に好意を抱いている……慕っておるさ愛しておるさときめいておるさ。成程、成程。確かにあんな小娘に横取りにされるのは、酷く不快だ……だがな!」

「汝の云うやり方! まるで小娘から逃げるようで、なおの事、不快だ!」

「妾は、正々堂々、真正面から、あの小娘を排除してやる! 覇道瑠璃! 此れが最強の魔導書たる妾『アル・アジフ』の宣戦布告だ!」

それでもこう言い切って瑠璃に宣戦布告をするアルは本当に格好良かった。そして最後には二人を認め、笑顔で去っていく姿がもう最高。いい女だなあアルは。

もう一人重要なのが覇道鋼造。すべての真相を知らされた絶望と、それでも瑠璃を守るために這い上がる手段として覇道鋼造に成り代わった九郎の覚悟が凄まじい。愛した少女を守るには、少女が産まれる頃には老いてしまう自分にはもう難しい。その代わり覇道鋼造としての自分にしか出来ないことがある。瑠璃のことは未来の自分に託さなければならないし託すしかない。だから最後まで祖父役を演じ続ける壮絶さに圧倒された。

最大の不満は瑠璃の緑の縞パン縞パンは一種の様式美だとわかっちゃいるが、それでもめっちゃ萎えた。やけに太いストライプだったのが更にダサくしていた。こんな安っぽい下着を大財閥の総帥が身につけているのかと思うと泣ける。更に姫さんだけパンチラがやたら多いからダメージは倍増する。やめてください。それと最後に必殺技をかました時の姫さんの燃えの欠片もないしょっぱい「レムリア・インパクトー」にも萎えたなあ。それにしても必殺技を放つのにわざわざ姫さんにナアカル・コードを送信してもらわなきゃならないのは面倒すぎる。最終決戦前にやっと自由に放てるようになるが、そんなことが出来るならもっと早くそうしていただきたかった。

ライカ・クルセイド (CV:本山美奈)

ライカさんは結構はっちゃけた人でそこは好きなんだけど、ビジュアルがいまいちツボに来なかった……んだけど、メタトロンモードのライカさんが可愛かったのは喜んでいいのかどうか。それとアルと瑠璃の時は決戦前夜にエロシーンが差し込まれていたのに、ライカさんとのエロシーンは結構速かったことに驚いていたんだけど、これも後々凌辱されてしまうから「初めては主人公が奪わなければならない」ことを考えてあんなに早かったのかな、とか邪推してしまって切なくなった。そもそも BAD ED でもないのに凌辱されてしまうのが……。これにはユーザもさぞ反発してることだろう、と感想を見て回ったけどそんな感想は一つも見かけなかったことが更に泣けた。相手が触手だからセーフなのか?

ライカさんルートは主人公そっちのけでメタトロンサンダルフォン姉弟喧嘩が延々描かれていたけど、愛憎は好きなので結構楽しんだ。ティベリウスに乗っ取られて哭いているデモンベインを九郎が取り戻すシーンは燃えたし、イレギュラが発生するシナリオとはいえ設定や他のルートとの破綻もなく纏まっていた。ムーンチャイルド計画についてきちんと説明されたのも大きい。ライカさんも正義のヒーローとしての役と、敵に攫われてしまうヒロインとしての役をこなしているあたりは結構美味しいんじゃないか。他のルートでもメタトロンとして九郎とは違う場所でさりげなく活躍しているのよなライカさん。

ウィンフィールド

最初に抱いた印象とは裏腹に、九郎と瑠璃をくっつけるべく暗躍したりノリノリで九郎に女装させようとしたり、更に九郎が自分の主人になる妄想をして顔を赤らめたりで意外になんでもアリな人で面白かった。ボクシングにはあまり惹かれないけど、魔術は一切使用せず純粋に戦闘技術を高めただけなのにアンチクロスと渡り合えるところも美味しい。真剣白歯取りを披露してくれた時は吹いたけども。瑠璃ルートでティトゥスにリベンジを果たす場面もかっこよかった。しかし髪型のあまりの変わりようにも驚いたが、安静にしてなきゃならない体で九郎に縋るシーンで妙な空気の漂う CG が用意されていたことのほうがもっと驚いた。というかウィンフィールドの無駄に色っぽい表情の吹いた。

マスターテリオン (CV:氷河流)

「さあ、踊ろうではないか。あの忌まわしきフルートが奏でる、狂った輪舞曲の調べに乗って。ヒロインは貴公だ――アル・アジフ

テリオンは序盤のこの厨二全開な台詞で期待が高まってたんだけど、九郎に一度ちょっかいをかけただけで中盤は出番らしい出番もなく、やっと来たかと思えば乱交パーティをしているだけだったので「あれ?」。いやまー初期の九郎を相手にしている時は生身の体でデモンベインを吹っ飛ばすギャグっぷりを披露してくれるほどテリオンが強すぎるし、そんなテリオンが本気を出せば物語も終わってしまう。何よりテリオンにやる気がないのは突き詰めればナイアのせいなので、そこは同情したし納得もした。それに九郎はループのたびに記憶をリセットされているのにテリオンはされない。絡繰を全部知った上で、それでもどうすることも出来ずに踊らされるしかない苦痛。おまけに九郎は何も知らずに堂々と正義を名乗れるから、テリオンが九郎を憎むのもわかる。彼は悪役ではあるが、悪役であることを強いられている悪役なので厳密にいえば被害者でもある。というわけでエセルドレーダに期待していたのにテリオンが動かないせいで思ったより彼女の出番がなく、そこはテリオンに対してもどかしい気持ちもあったんだけど、テリオンの葛藤や苦痛が語られてくると同情してしまった。だからこそ最後にテリオンに救いが与えられたことには安堵もした。美しいものを美しいと思える余裕も心からの笑みを浮かべる余裕も、そばにいた少女への愛にすら気付けなかったテリオンの境遇を思うと泣ける。

しかし思ったより動いてくれなかったことを残念には思ったけど、いざ動いたらラスボスらしく派手に暴れ回ってくれた。高笑いキャラクタはやっぱり最高です。踊ったり歌いだしたりしたのも驚いたが、核ミサイルを分解してしまうシーンも強烈。

テリオンに一つ文句を言うとすれば、アンチクロスの人数の多さ。あれはもう四人くらいで良かったんじゃないでしょーか。多いから描写が分散されてアンチクロス一人一人の印象が薄くなってしまったと思うんだよな。あーいやテリオンが七人分の席を用意したわけでもないのか。あとエロシーンでテリオンの顔が黒く塗りつぶされていたのが怖かった。おかげで九郎に負けないくらいのビッグマグナムが意識の外に追いやられた。

エセルドレーダ (CV:朝宮咲)

ビジュアルは好みだったが、思ったより出番が少なかったのが残念。彼女が活躍出来ないのはテリオンが動かないからであって彼女のせいではないが、テリオンが動かないことにも理由があるし納得もしているので、それがなんとも歯痒い。ハンティング・ホラーに組み込まれて暗躍もしているし、そういう意味ではライカルートが一番活躍していたと言える。終盤には復活するし、テリオンが不在な分エセルドレーダが頑張ってくれていた。

テリオンに一途で、テリオンがアルを褒めると嫉妬するあたりは可愛いし必死にテリオンを守ろうとする姿にはぐっと来た。アルルートのラストではなんだかんだで一番美味しい形で幸せをもぎ取れたんじゃないか。永遠にテリオンのそばにいられるんだから。

ウェスト (CV:Prof.紫龍)

有能なバカ。アホではあるが、科学だけで魔術で動くデモンベインに対抗できるロボを作るんだからガチの天才。自分なりの矜持を持っており、テリオンを裏切ったアンチクロスのやり方に反発して真っ向からアウグストゥスを糾弾するシーンはかっこいい。

「天才とは常に孤高! 何物にも媚びぬのである!」

この台詞も、エルザを自分の命令に忠実なロボットとして作らなかったことからも口だけではないのだとわかる。自我を持つロボットを作ったのは科学を追求した結果で、こういう性的な意味ではない変態キャラクタは最高だなあ。前半のお約束やられ役としての仕事と、ブラックロッジから造反して九郎の味方についてからの仕事ぶりからいっても何気にドクター・ウェストが一番活躍してるんじゃないか『デモベ』って。インスマウスで慰安旅行に来ているあたりもいい。部下を大事にしていることがわかるし、そんな彼だからこそアンチクロスのやり方が気に入らなかったんだろう。破壊ロボで街は散々破壊しているんだけど、ウェストのキャラ補正なのか人は殺してないぽいところもまた良い。

一番輝いていたのは、やっぱり動かなくなったデモンベインを動かせるようにしてしまうシーンだろう。アルを失ってもめげない九郎と、そんな九郎をサポートしてくれるウェストの共闘という意味でも熱いんだけど、共通ルートでの偽デモンベインのエピソードが伏線として活かされていることに震えた。ライカルートでも『ナコト写本』を組み込んだハンティング・ホラーを作ってくれるが、あれも凄い発明かと思いきや基本的に特攻しか出来ないあたりに破壊ロボを作っていたウェストらしさが出ていて笑った。

エルザ (CV:神村ひな)

女子キャラの中では一番好きなキャラクタ。九郎に夢中なんだけど、なんだかんだで博士を見捨てないあたりが可愛い。敵対している時も味方になってくれる時もエルザのキャラクタはブレないままで、そこもまた最高だった。攻略は出来ないんだけど、なんだかんだでエルザの居場所はウェストの隣であってほしいので攻略出来ないところも好印象。あとエルザの術式魔砲「我、埋葬にあたわず」はそのネーミングセンスにやられた。

アウグストゥス

『村正』で出て来た地球皇帝の元ネタがこの男だとは知らずに不意打ちを食らった。まさかここで知ることになろうとは……。

ティベリウス

アンチクロスの中では輝いていた部類に入る。性器がやたらグロかったことが一番印象に残っていて、それがまたある意味ティベリウスらしいなあとも。

カリグラ

一番印象に残っていないアンチクロスメンバー。九郎どころかクラウディウスを輝かせるための踏み台にしかならなかったのがなあ……。そして自分を踏み台にしていったクラウディウスも輝いていたのかと問われたら微妙なあたりがまた。

クラウディウス

やっぱり印象に残っていない。せいぜい剣玉とかベーゴマを使っての攻撃が珍しいなあとか、カリグラを殺されてキレたのが意外だったとかそんな感じ。

ウェスパシアヌス

こういう似非紳士系は好み。頭良さそーに見えてやっぱり「バカな!」要員ではあったけど、踊らされているなりに頑張ってくれていた。四回殺さないと完全に倒したことにはならないのに、ライカルート以外では一撃で消滅させられていたあたりは哀れを誘うが、いちいち四度倒す描写を入れられても鬱陶しいだけなのでこれでいいのかもしれない。ムーンチャイルド計画の責任者としての役割もあったし、恐怖の対象であるテリオンを超えるためにこれまでの時間をすべて捧げて来たんだろうに、アルルートで自分がテリオンに踊らされていた(厳密に言うとテリオンも踊らされている駒の一つに過ぎないが)ことを知らされて絶望するシーンなんかは妙に印象に残っていたりする。

ティトゥス

魔術師っつーより武人だが、武人として輝いていたのかと問われたら微妙なよーな。ウィンフィールドの見せ場のために用意されていたキャラクタとしか言いようがない。

ネロ (CV:成瀬未亜)

アルルートをやるまでは特に印象に残らなかったけど、アルルートで一気に輝き出した。アルルートなのにアルを食いかねない勢いでネロの魅力的が溢れていた。自分が邪神に弄ばれるだけの存在であることを自覚していながら、九郎と一週間エンネアとして過ごしていた時のネロの心境を思うと切ない。そんな中で九郎から勇気を得て、呪いから逃れようと密かに決意していたのだと思うと……そしてテリオンが産まれる直前の九郎とのキスを含めたやり取りも、一瞬のことだからこそぐっと来た。あとはライカルートでの最期の恐怖に駆られて泣き叫ぶシーンも、中の人の熱演もあって印象的。このライカルートでの、例え邪神に弄ばれる運命であっても死にたくないという当たり前の本音を吐露して泣いていたネロのシーンがあったからこそ、アルルートでトラペゾヘドロンによって解放された瞬間に自分を殺そうとしたネロの決意がどれほど悲愴なものだったのかがわかるので、アルルートの前にライカルートをやったのは正解だった。

ネロが絡繰を知っているのは彼女もまたマスターテリオンだからなんだろうけど、アルの旧神 ED で元気そうにしているのはよくわからなかった。

リューガ・クルセイド (CV:鴇原翔)

リューガの思考回路は哀れで恐ろしい。彼にとってはライカの存在がすべてで、施設からライカを連れ出そうとしていたのも白い部屋から出してやりたかったというのもあるんだろうけど、それ以上にライカが実験によって違う何かに変えられることを察し、それを恐れたからじゃなかったか。だからライカがメタトロンに変わってしまった時、リューガは自分の知らないライカを前にどうすることも出来ず、壊すという手段に到達せざるを得なかった。リューガのこの一途な憎悪は、ナイアの想定していたシナリオの中でイレギュラを発生させるほどで、だからこそライカルートだけは違う展開を綴っていく。

ただ、ライカルートは楽しめたものの、中の人が中の人だし終盤はリューガがほぼ叫びっぱなしでそこは辟易した。燃え要素のある作品に声は必須だと思うが、叫びがあまりにも続くと辛くなるな、ということも学習した。ただ声を抜きにすれば先述したようにメタトロンサンダルフォンの物語は面白かった。特に最後、リューガが姉からの優しい救いを「貴方の優しさで、己を穢すな」と拒むシーンはいい。最後まで敢えて救われない道を選んで全うしたのが泣ける。その後、ナイアが干渉しない正常な世界に存在することを拒否しているあたりにもリューガの徹底した哀しい拒絶が感じられて切なくなった。

ナイア (CV:篠崎双葉)

クトゥルフについては門外漢な私でも、最初に名前を聞いたときは「ナイアルラトホテップぽい名前だしストレートに考えたらこの女がラスボスになるんだろうけど、さすがにそこまで単純ではないんだろうな」と思っていたらそのまさかだったので驚いた。テリオンが「捻りのない名前だ」と言っていた時に薄々そんな気配はしてたけど、まーでもこのストレートさが『デモベ』だなという感じがしなくもない。

つーわけで黒幕なんだけど、クリアした今になってみれば結構ドジっ子、という印象も結構ある。ネロに人間の力を舐めるなとか言っていたが、ナイアも舐めていたことでブーメラン発言になっているあたりなんて人間ではないはずのナイアさんの人間っぽい面を垣間見た気がして面白い。でも一度失敗したとはいえ本人が消えたわけではないし諦めてもいないようなので、ダメージはそんなに大きくなさそーなのがなんとも。

ところでナイアさんといえば、九郎のロリコン宣言は強烈だったなあ。

「どうも俺、やっぱりロリコンだったみたいでさ。あいつの綺麗な躰知っちまったら……てめぇなんざ汚な過ぎて抱く気にもならねえんだよ! ババア!」

これはさすがに人間を弄び過ぎていたナイアへの発言としては溜飲を下げつつも、女子としてはナイアに同情もした。いやまーナイアは性別どうこうで測れない存在だろうからお門違いな同情って気がしなくもないけど。そいやナイアはいわゆる私の苦手な僕っ娘だけど、性別を超越した存在であることは序盤から漂っていたせいか特に気にならなかった。

それはそうとナイアが一番輝いていたのはアルルートの BAD ED だと思うんだけど、特に九郎の目の前でふたなりになったナイアがアルを楽しそうにレイプしていたのが印象的。すんげえノリノリだったもんなああれ。しかしナイアとテリオンとエセルドレーダに「お兄ちゃん」と呼ばれる悪夢はシュールで笑った。