Antipyretic

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http://www.nitroplus.co.jp/pc/lineup/into_15/

拓巳と将軍の関係、真犯人の正体、複数の人間の妄想が入り乱れて徐々に複雑になっていく様など面白い要素はあったのに、楽しめたのは中盤までだった。それまでの猟奇サスペンス的な展開は夢中になって読んだほどに面白かったんだけどなー。拓巳との恋愛が描かれるのも梨深だけで他のヒロインは敢えて切ったんだろうけど、だとしても彼女たちがギガロマニアックスである設定はもーちょい活かし様があったんでは。

エロは中学生がドキドキしながら読める程度のもので R15 指定は妥当だと思うが、グロも相応に。画像は七海の手首のシーンを除いてそこまでえぐいものはないけど、ニュージェネ事件を追体験させられる描写ちょっとえぐい。妊娠男とノータリンが特に。

2ch を再現したかのような@ちゃんねるのリアリティは相当で、拓巳のオタクとしての特性とニュージェネ事件への世間の反応をわかりやすく演出するのに貢献しているし、作品世界にもハマっていた。グリムの正体が判明した時の衝撃が大きかったのも、@ちゃんねらーな発言からは葉月を連想しにくかったせいもあるし。

システムは最悪。ポジティブな妄想をするかネガティブ妄想をするかで分岐する妄想トリガーが選択肢の役割を果たしているが、普通に読んでると気づきにくいしスキップすると妄想トリガーを使うシーンで止まらない。妄想の選択肢がきたらスキップ止めるソフトを使わせていただいたおかげでコンプ出来たけど、スキップがそもそも遅いのがアレ。

そして最大の不満は、序盤のサスペンスのよーな展開を楽しんでいたところにディソードが登場して萎えてしまった件。これは単に私の好みの問題だけど、こういう厨二要素は入れてほしくなかった。いや厨二は好きだし妄想が現実になる設定も面白かったけど、奇妙な事件の謎を追う展開に没入していたので安っぽい方向に行ってしまったようで落胆してしまったというか。先述したように、拓巳以外のギガロマニアックスがディソードを持つ意味が薄かったのもマイナス。ギガロマニアックスがディソードを手に共闘する展開があるのかと思ったら特にないし、最後のクライマックスではピンチに陥った拓巳の無事を祈るだけで終了。その大剣は飾りか。これならディソードを手にすることが出来るのは拓巳だけで良かったんじゃないか。それで作品は成立するし違和感もなくなるんだから。

絵は正直苦手な部類に入る。癖のない絵柄かと思いきやそーでもないよなあ。逆に音楽というか歌はさすがにクオリティが高かった。

妄想に着目したのは面白かったけど、粗が多く好みから外れたのが惜しい。賛否両論と毀誉褒貶が入り乱れてそーな主人公のキャラクタはけっこー気に入ったんだけどな。

西條拓巳 (CV:吉野裕行)

オタクぶりもここまで徹底してるといっそ清々しい。でもなんだかんだでイケメンだし美少女との接点も増えていくし、梨深とは互いに特別な存在になっていく。終盤までは七海のために勇気を出せなかったり、ピンチに陥るたびに梨深に頼ったり、そのくせ助けに来てくれないと一方的に梨深を責めたりと意気地のない男の子でしかないけれど、覚醒してからの拓巳はちゃんと格好良かった。終盤の戦いはディソードを持つ女子が六人もいて拓巳と一緒に戦わず、彼女たちが祈るだけで終わったことにポカーンとなったけど、これは情けない拓巳の見せ場を作るための展開だと考えるとアリと言えなくも……いやないか。もうちょっと上手い展開はいくらでもあったと思うし、やっぱり腑に落ちない。それでなくても拓巳はキモさが際立っているから一人で他キャラクタの存在感を食っている。要するに美味しいところも悪いところも全部拓巳が持っていく。でも私は序盤の情けなくてイライラさせられる拓巳のほーが好きだなあ。基本的にどこかで尖った個性のある子はそれがどんな個性であろうと好きになることが多いんだけど、拓巳も終わってみれば一番好きなキャラクタになった。ヘタレも極めると一周回って好きになれるらしい。

あと忘れちゃいけないのが中の人の怪演。「ふひひ」ってリアルで聞くとこんな感じなんだろーなあ。拓巳役は吉野氏じゃないとダメだろう。

咲畑梨深 (CV:喜多村英梨)

メインヒロインなんだけど本格的に登場するのは三章とけっこう遅い。だからかあんまり印象に残ってないんだよなあこの子。「ビシィッ!」は痛いと思うけど、他の女子がもっと痛いので普通に感じられるようになっていくのは良かったのかなんなのか。

拓巳を守っているのかと思いきや梨深が本当に助けたかったのは本物の拓巳のほうだったけど、彼女の本物の拓巳への気持ちは恋ではなく助けられた恩返しのつもりだったんだろうか。恋をしたのは妄想の拓巳に対してで、だからこそ二人の拓巳の間で苦悩した。

印象に残ったのは交差点で将軍と初めて会って動揺する拓巳を梨深が助けるシーンと、あとはやっぱり結末。B ルートが好きだけど、明るい結末ではないのに妙な清々しさが漂っているのが好みだった。それにしても最初はハッピーエンド固定ってのは珍しい。

蒼井セナ (CV:生天目仁美)

クーデレというよりはツンデレ。拓巳にギガロマニアックスの力についてヒントを伝えるという意味では重要なキャラだったけど、それだけで終わってしまったのが勿体ない。

一見凛々しいけど壮絶な過去を持つだけに弱点を突かれるとあっさり崩れていく脆さもあるし、何気に見ていて一番危なっかしいのはセナかもしれない。

楠優愛 (CV:たかはし智秋)

問い詰める時の五段活用が妙に怖い眼鏡っ娘。優愛が拓巳に疑惑を抱いたのは、『将軍』がチャットで出てくるなどして余計なことをしたからのよーな……。

双子の妹の美愛については、何故そんな面倒なことをしてまで優愛のために生きてきたのかが語られないのでピンと来なかった。

折原梢 (CV:辻あゆみ)

喋りに萎えた。一人称「こずぴぃ」だけでも辛いのに「しゃん」づけで人の名を呼び、語尾の「なのら」でウザいジェットストリームアタック完成。きつい。この子がクラスの男子には好意的に見られていて、逆に女子には嫌われているってのはわかりやすい。

ちなみに一番壊れていた子だったけど、他のキャラクタに比べると過去はそれほどインパクトのあるような内容でもなかったので印象は薄い。

岸本あやせ (CV:榊原ゆい)

厨二というよりは電波。拓巳にディソードの存在を教えたという意味ではセナ同様重要なキャラだったと言えるかもしれないけど、やはりセナ同様それだけで終わるのが……。

終盤のサードメルトの後、崩壊した渋谷の街を駆け抜ける拓巳が、あやせの歌声に気づくシーンはささやかながらもいいエピソードだったなあ。

西條七海 (CV:宮崎羽衣)

本物の拓巳の妹である七海は妄想の拓巳にとっては複雑な存在だけど、それでも七海を助けようとする拓巳と、拓巳にプレゼントされたバングルを大事にする七海を見てきた私には、二人は確かに兄妹だったのだと思える。邪険にされつつも懸命に拓巳に構ってくる七海は可愛かったなあ。女子では一番好きなキャラクタ。

最後に右手が復活していたのはリアルブートによるものだろうけど、リアルブートさせたのは誰だったのか。本物と妄想の二人の拓巳、と考えると一番しっくり来るけども。

『将軍』 (CV:代永翼)

事情は理解したし彼も被害者だけど、それでも身勝手な人だなあ、という感想を抱く。しかし彼は死期が迫っていたとは言え己の命を犠牲にして世界を救ったも同然なので、あまり強く文句を言えない。『将軍』に文句を言えるのは妄想で作られた拓巳だけか。

三住大輔 (CV:小野大輔)

最初から馴れ馴れしいので何か裏があるのかと思ったら、結局何もなかった。拓巳がエスパー少年として報道された翌日は拓巳を避けたけど、後日おずおずと拓巳に話しかけてくたあたり悪人ではないんだろうなあ。彼女がいるのに色んな女の子に手を出そうとするところは改めたほうがいいとは思うけど。良くも悪くも常人の感覚を持っているキャラ。

判安二 (CV:一条和矢)

ゲロカエルん店員の「バンバン」連呼、電車での子供の「バーン! バーン!」はなんか地味にダメージを食らった……何故か私が。

諏訪護 (CV:保村真) & 葉月志乃 (CV:青木紀子)

犯人はヤス!(言いたかった) 葉月のセルフオペは結構エグかった。しかし二人の凶行の理由が「宗教」だったのは残念。

野呂瀬玄一 (CV:三宅健太)

一応ラスボスになるんだろうけど、このラスボスに魅力がなくしょぼいのも作品に満足出来なかった理由の一つじゃないでしょーか。