Antipyretic

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クロウカシス 七憑キノ贄

http://www.gungnir.co.jp/innocentgrey/products/pro_caucasus/cc_index.html

中身がスッカスカだった。短いから ED は一気に全部埋めたけど、その短さが仇になっている。何しろ作中時間は四日間でそのうち主人公が動けるのは実質二日半、その間に事件が起きて捜査して、女性キャラクタ全員分のエロシーンも入れなきゃならない。こんなもん破綻するに決まっている。代わりに分岐が多く結末も18個あるが、おかげで回収作業になってしまったし面白い ED が揃っているわけでもなく。

それと私がイノグレに求めているのは良質のミステリではなくサスペンスと狂気の描写なんだけど、どちらも期待外れだった。サスペンスとして楽しむには事件の起こし方や伏線の張り方が雑だし、凄惨な死体を見てもみんな毎回反応が淡白なので肩透かしを食らう。そして智士は、根拠があるわけでもないのに犯人のターゲットから外れていることを前提に進んでいくから緊張感もない。一方、狂気に関しては事件を引き起こした原因にはなっているものの今回の事件の犯人に復讐心はあっても狂気はない。狂気の描写が薄いというよりも描写の必要がなかった。狂っている人は脇役で、それも過去の物語でしかない。そして殆どの謎が恒星の手記で解明出来るのも萎えるし、『七憑の呪い』がどうでもいい扱いだったのも残念。終盤まで存在を忘れてたくらいだもんなあ。

自由行動や捜査パートも微妙。私は最初から攻略に頼ったが、聞き込みや捜査は殆ど意味がないことに驚いた。それでも一応何度か聞き込みをしてみたこともあるが、どれも実のないやり取りばかりで味気ない。これでは事件どころかキャラクタにも迫れない。だからキャラクタの掘り下げは薄いし、智士と各ヒロインの関係変化も唐突で、エロシーンも無理やり詰め込んでいるようにしか見えない。当然犯人の心情描写も浅いから、意外な人が犯人だったのに「でっていう」という感想しかない。ルートによっては復讐を完遂させないままで終わるのも、想子の中の復讐心に軽い印象を与えてしまう。その代わり自由行動ではヒロインの好感度を上げられるが、会うだけで上がるから吹いた。「何か用?」と言われてそのまま無視して自室に戻っても問題ないのはむしろ新しかったかもしれない。

絵は美しかった。あと六曜 ED は少し面白かった。でもそれだけ。疲れた。

古林智士

「そうですか」か「これからどうするんですか?」ばっか言ってる主人公。行動指針すら自分で決められないらしい。あとヤリチン。エロシーンで「あなたを守りたいんです」と言い出すのはもはや様式美。あるヒロインを抱いた後に「俺が守ります」と言ったその口で、数時間後には別の女性にやっぱり「守ります」と告げてセックスしている。恋愛描写も皆無。一日で数人とセックスすることもあるのは一周回って面白かった。そして昨日今日会ったばかりの大学生を「守ります」と言われただけで受け入れる女性陣もおかしい。特に詩音、藍、あかねは好きな人がいるのに突然智士とセックスするからなあ……。他の女性はともかくこの三人は入れるべきではなかったのでは。ちなみに殆ど和姦だが、詩音 BAD ED だけはいきなりキレて詩音に暴力を振るい、レイプまでするから仰天。

ところで智士は普通の大学生だけど、想子が事件解明に向けて動くことがないため智士が一応探偵役を務めている……けどそれも「智士は部外者だから」という理由だけで館の住人から無条件で信頼される仕様でピンと来ない。一番有能なのは紅緒なんだから、智士をワトソン役にして紅緒を探偵役に据えたら良かったんじゃないか。

切原想子 (CV:葉村夏緒)

活躍しそうに見えて実際には何もしない。何かしてくれるような雰囲気はあるけど雰囲気だけ。むしろ智士のほうがやる気はある(セックスではなく事件に対して)。非常時に冷静な判断はするけどその場を落ち着かせるだけで進展のある判断は一切せず、そこは完全に智士任せ。イニシアチブを執れる才能はあるだろうに、それを丸ごと智士に投げてしまうのが妙で違和感は序盤からあった。理由は想子が犯人だったからだけど、私が犯人の正体に気付いたのは紅緒が演奏室で襲われるシーンだった。違和感はあったのにそれまで想子が犯人だとは想像もしていなかったから、そこらへんは巧妙に誤魔化されていたんだなと思った。ちなみに一番好きな結末は断然 TRUE 失敗 ED。想子が犯人だとは気付いているのに証拠が掴めないままで告発できず焦れる智士を前に、いけしゃあしゃあと東京に帰る想子さんが最高に良かった。これは悔しい。

逆に TRUE ED は微妙。終盤の追い詰められた想子からは想子の悲壮な過去が伝わってこなかったし、智士の説得も安っぽい言葉を並べ立てているだけなので盛り上がらない。詩音との抱擁シーンも遠い目で眺めるしかなかった。

ところで想子さんはコーラが好きだけど、てっきりあの大量のコーラには重要な意味があるんだと思っていたので(犯人だとわかってからは中身はコーラじゃないんだろうなとも思っていた)特に意味はなかったようでズコーてなった。

七月紅緒 (CV:あじ秋刀魚)

序盤の猫被っていた時の口調のほうが好きだったなあ……。あの喋り方のままで奔放な性格だったらツボったかもしれない。でも紅緒は可愛いと思ったし、事件にはあまり関係ない人物なので特に書くこともないけど、それは紅緒がそれだけまともな人物であることの証左でもある。中の人の声も相変わらず良かった。あじ子は声が合ってるかどうかとか演技がどうとか以前にただただ声が良すぎる。結末も六曜 ED 以外では紅緒 ED が一番楽しめた。この手の館を舞台にした作品で炎上をやってくれるのはやはり美味しい。

それにしてもラヴはイケメンだなー。智士なんかより遙かにずっと紅緒の王子様だった。

七月詩音 (CV:優稀澪)

パッケージにいるヒロインがゲーム開始前から他の男との子を孕んでいるのは珍しい。おまけに強姦されたわけでもなく辻村とは愛し合った末に妊娠したっぽいのがまた……。まあでも Happy ED では辻村と幸せな生活を送れているみたいだしいいんじゃないですか。実は叔父と姪なので近親相姦になるが、どちらも七月家の呪われた血を引いているわけでもないことを考えると業の深さを思い知らされる。

ちなみに智士とのセックスシーンはないほうが良かったと今でも思っているけど、詩音が何故智士を受け入れたのかは想像することが出来る。ヒントは藍との行為を一方的に受け入れている点で、要するに彼女は自分に優しくしてくれる人が欲しかったんじゃないかなあと。詩音は辻村を愛しているし辻村もまた詩音を愛しているのかもしれないが、辻村一人だけいればいいと思えるほど詩音は強くもなかったんだろうと。ずっと塔に閉じ込められて生活していたんだから、彼女が温もりを求めてしまうのもわからないではなく。ところで最低の告白をするけど、まだ腹の目立たない時期の妊娠しているヒロインを犯すというシチュエーションが結構美味しいことに気づいてしまった。倒錯的でいいっすね。

全体的に色が薄いからか、詩音だけ立ち絵の塗りが雑に見えるのは残念。

七月藍 (CV:秋城柚月)

詩音が好きなら何故智士とセックスしたんだろうなあこの人は。詩音はまだわからないでもないけど藍は謎。男とセックスするなら一度やってみたかったことがある、と言ってパイズリを披露してくれたので男が嫌いなわけじゃないんだろうけど。

七月摩夜 (CV:柚木かなめ)

元凶。過去に色々やらかしてるけど出番が少ないので空気。一応わかりやすい狂気を持っている人だと思うけどそれも底が浅い。ところで恒星の手記では吸血鬼のような存在だと書かれていたが、どっちかっつーとエリザベート・バートリィが近いかな。

燈山あかね (CV:高井戸雫)

行方不明の姉を探して館に入り込んだ娘、とありがちな設定。この子も御巫が好きなのにどーして智士に股を開いちゃうんですかねえ……。あと真っ赤な下着が可愛くない。あかねは可愛いのになあ。気になったのは六曜との関係だけど、ただのメイドでしかないあかねには七月の縁戚である六曜に逆らえないから性奴隷にされてただけ?

水守なるみ (CV:かわしまりの)

泥棒っつー設定は新しいかも。実質的には鍵開け要員で隠された遺産探しのきっかけ要員だったけど、事件解決 ED 後日談のなるみさんの和装姿は良かった。この人とのエロシーンはどれも唐突だったけど、特に厨房の爆発で火傷を負った直後のシーンは爆笑した。いきなりすぎてもう笑うしかない。あの状況でよくやるな……。

御巫博士 (CV:瀬路啓維)

イノグレにしては兄妹が見当たらないけどどこかにいるんだろう、と思ったら案の定。というわけで紅緒と藍の異母兄でした。それも爛れた関係ではなく健全な兄妹。貴重。

六曜勇 (CV:蘭丸)

初っ端から死ぬので最初は印象も何もなかったが、六曜 ED でのゲスっぷりに笑った。アナルセックスばっかしてらっしゃるのも吹いた。あの格好付けた六曜 CG もなんかじわじわくる。でも惨劇が起きないこの短い結末が一番好きな ED になったから自分でも好みがよくわからない。六曜 ED 自体が好みというよりも、六曜が伸し上がっていく中でやがて詩音に復讐されるだろうストーリーに興味が湧いた、てのが正しいんだけども。つまり六曜 ED のその後が見たかった。詩音がすでに孕んでいることを知った時の激怒ぶりとか見物だと思うんだけどなあ。六曜にとっては相当の屈辱になるだろうし。

辻村星次 (CV:馬並硬太)

詩音が姪であることを知っていて手を出したんだからこの人もだいぶアレ。ちなみにプレイ前は辻村が犯人なのかなあと根拠もなく思っていた。

高嶺仁 (CV:野☆球)

「殺人犯と一緒にいるのはごめんだ! 俺は勝手にさせてもらう!」要員なのにどのルートでも生存しているのは何気にすごい。まあそれも作中では空気だったが故の生存だったけども。非常時だからといって弁護士の勝手な判断で遺書の内容を知り合ったばかりの他人に喋ってしまうのはどーかと思うが、おかげで犯人を突き止められたので複雑。