Antipyretic

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媚肉の香り ネトリネトラレヤリヤラレ

http://www.getchu.com/soft.phtml?id=523205

いい女と、「男にとって都合の」いい女を演じる女。この二人の女を堪能出来るサスペンス系エロゲ。特に後者は悪人として徹底していたのが良かった。変に改心させるような展開は一切なく、最初から最後まで彼女は自分のことしか考えていない。そこが素晴らしい。

描かれるのは殆ど日常の一コマばかりなんだけど、それでもダレることがなかったのは合間に「この家はおかしい」と思わせる違和感が入って来るからで、そこは院内のサスペンスを描いた『野々村病院』に通じる空気があった。

そして作品内容と原画の親和性も高い。いわゆる萌え絵ではないけど魅力のある絵柄で、お馴染みのエルフ塗りも恐ろしく綺麗。胸や局部などのアップも女子の私が見惚れるほどで、単に「エロゲだから」という理由だけで局部のアップを入れたのではなく、きちんとシナリオに組み込んであったのもポイント高い。絵のクオリティを維持したまま動くエロシーンのアニメーションも、動き自体は単調だけど細やかに動く。特に香織さんの騎乗位は「鬼気迫るセックス」が表現されていて圧倒された。腰のうねりが生々しかった。しかも殆どのエロシーンで手抜きなく動かしてくれる気合いの入りっぷり。

文章は結構独特。一気に書けばいいのに読点を入れるタイミングでいちいち区切って書いて来るが、この手の書き方は苦手なのでそこは地味にキツかった。「っ…」の乱用ぶりも目につく。シナリオはほぼ一本道の構成になっており、途中下車するように各ヒロインとの結末や BAD ED に到達するタイプ。ちなみに BAD ED は汎用かと思うほど似たよーな結末も多いが、拓也が刑務所にぶちこまれる ED にちゃんと意味があったのは良かった。エロシーンも単に喘ぐだけではなく、最中に会話することで互いの関係が変化したりと読ませるものになっている。久しぶりにエロシーンをほぼ全部読んだ。逆に印象に残ってないのは音楽だが、SE の使い方は細かい。無音ていいよね。シーンが引き締まる。

更に通常の ADV とは違って 3D ダンジョン RPG のよーに邸内を移動するパートが入ったり部屋を調べたりするパートもあり、そこらへんは懐かしいミステリゲームっぽい雰囲気なんだけど、拓也は探偵ではないので推理したり事件を調べて電撃的解決に導いたりはしない。それと移動パートで三澤邸という閉鎖的空間で生活している感覚を得られるのはいいんだけど、廊下などで曲がらなきゃならない時に行き過ぎてしまったりすることが多くそこは少し鬱陶しかった。しかも移動パートは結構頻繁に入るしなー。

総括としては、評判のいいタイトルだったし期待通りではあったけど期待以上の作品にはならなかった。元々サスペンスは好きだし、気に入ったかどうかで問われるとイエスと答えるけど物足りなさもある。理由は終盤の真相暴露への突入が強引に感じた点、あっさり終わって呆気なかった点、黒幕の描写が物足りなかった点にある。いいシーンは多かったし面白かったのは間違いないんだけど、もーちょい派手な何かが欲しかった。評判を聞いてちょっと期待しすぎたらしい。ちなみに寝取り寝取られ要素は一応あるんだけど、サスペンス要素が強いせいかあまりそういう印象はなかった。

南拓也

「~だもん」とか「~しちゃう」をナチュラルに言ってしまえる主人公。エロシーンでも「出ちゃう」を連呼するのはヒロインではなく拓也のほうだった。基本的に大人しくヘタレ気味で、責められるシチュエーションが多かったせいか。かと思えば居候の身分で初日から彼女を連れ込んでセックスするなど(誘ったのは由紀だけど)結構ぶっ飛んだこともやってるけど。でもあれほど香織さんに興奮剤を飲まされても鋼の精神で堪えるあたりは強いと言えるのかもしれない。香織さんは胸や足や下着をチラチラ見せては内心で「ほらほら私でオナニーしなさいよ」と自信満々だったが、拓也は自慰が苦手だったこともあって結局一度もしなかったし、そう考えると拓也は何気にすごい主人公なのかもしれない。そいや拓也がすぐ勃起するのはエロゲにありがちな展開だなーと軽く流していたが、香織さんの意図があったことを知った時は感心したもんだ。

ちなみに CG を見るたびに「目くらい描きゃいいのに」と中盤までは思っていたが、目なし主人公を2008年の時点でも律儀にやり続けていたエルフが、なんというかそれでこそエルフって気がして来てこれはこれでアリかも、と思えるようになった。それでもやっぱり顔はきちんと描いてくれたほーが嬉しいんだけども。

進藤由紀 (CV:非公開)

拓也が三澤邸に住み込みでカテキョのバイトをやるということで、三澤家とは何の関係もないと思われていた由紀は出番が減りそうだな、と思ってたらそんなこともなかった。というかむしろ黒幕とはグルだったんだから驚いた。黒幕が香織さんであることは結構序盤に読めたんだけど、由紀が拓也に向ける愛が嘘だとは思えず、由紀のことだけは最後まで読めなかったなあ。スカートの件とかしょーもないことで拓也と喧嘩したり無視したり、かと思えば普通に会話してきたり謝罪してきたり縋ってきたりで不安定だなとは思ってたのに何故気付かなかったのか。香織さんとは異母姉妹ってのも驚いたけど、この件については特に掘り下げもなくただの設定ぽい。しかしタンポンの紐まで描いているエロゲは初めて見たのでそういうところにも「さすがエルフだ(何がさすがなのかはさておき)」と感心してたんだけど、まさかそれも香織さんの指示だとは思わなかった。

ただ偽りの関係とはいえ、拓也と由紀の互いを知り尽くしたナチュラルな恋人関係は見ていて心地よかった。付き合い始めの初々しさやがっつくような部分がなく、気心が知れている者同士の絶妙な距離感。二人の間のささやかなルールとか、信頼しているから必要以上の嫉妬を剥き出しにすることもなかったりとか。この空気が絶妙で素晴らしかった。

ちなみにサブタイトルの「ネトリネトラレヤリヤラレ」は香織視点のことだと思うが、主人公視点での寝取られは由紀が松太郎に犯されるシーンと終盤の輪姦シーンくらいか。拓也にすら一切許さなかったアナルまで開発されてしまうあたりはエグくて良かった。

唯一の不満は由紀が持ち込んできた店のメイド服が可愛くなかった点。乙葉ちゃんも由紀から借りて着てたけど、やっぱり服が微妙でアレ。せっかく二人とも可愛いのになあ。

三澤乙葉 (CV:非公開)

ゲーム開始直後のシーンが乙葉の太股のズームアップで、この時点で「エルフのゲームをやっている」という感覚が得られてそこは謎の感動が湧き起こった。

ただ乙葉は可愛いんだけど、基本的に勉強しているシーン以外の出番がないので印象が薄い。ビジュアルはメインヒロイン級なんだけどなあ。エロシーンも由紀と喧嘩中だからといって教え子とやってしまう拓也にげんなりしたし、拓也の睡眠時間を削ってまでセックスをねだる乙葉を鬱陶しく感じてしまった。まあその点は本人も気にしていたらしく、翌日拓也が眠れるようにしてくれたけども。しかし拓也も乙葉も、拓也には由紀という恋人がいるのに罪悪感が特に描写されておらず、厚顔無恥だなという印象を受けた。この時には由紀はもう三澤家でバイトをさせられていたからしょっちゅう顔を合わせることになるし、メイド服の件でも協力してくれたのにそれを裏切るようなことをして平然としていたように見えたのがちょっとな。おまけに乙葉 ED は「松太郎殺しという罪を犯した拓也を励まして支え、出所後に二人で寄り添って生きていく」という「媚肉の香織」で由紀が望んでいた未来そのままだったのがもう何とも言えない気持ちにさせてくれる。乙葉は健気で可愛いけど、私は可哀想な由紀のほうに肩入れしたくなってしまった。

しかし輪姦 ED は無関係の乙葉まで巻き込まれていたのが可哀想だった。彼女には何の罪もなかったのになあ。しかし由紀、乙葉、香織さんの三人で並んで次々と犯されるシーンは『マスカレード』を思い出した。絵面的に。

三澤香織 (CV:非公開)

胸チラだのパンチラだのがもう怒涛のように繰り出されるのでわざとやってんじゃないのか、と思ってたらやっぱりそうだった。というわけで結構早くに黒幕の正体を察することが出来た。香織さんはちょーっとあざとすぎた。あのあざとさが可愛いんだけども。

ちなみに私が一番好きな結末は香織さん ED で、拓也と結婚はせず養子縁組にしたあたりで香織さんの金への執着が見えてゾクッと来た。更に香織さんに甘やかされて拓也が太ってしまうのも衝撃。拓也にかけた保険金が欲しいがために、幸せ太りさせた上で殺してしまう香織さんには恐れ入った。おまけに拓也は最後まで香織さんを疑うことなく、しかも腹上死だったんだから拓也視点ではハッピーエンドなんだよなあ。香織さんも大金が手に入ってハッピーだろう。恐ろしい。でもこの恐ろしさが最高。たまらんわ。

そんな香織さんが最高だからこそ、本性を露わにした香織さんをあまり堪能出来なかったのが悔やまれる。といっても一通りクリアすると香織さん視点の物語「媚肉の香織」が読めるようになるし、心の中でオマンコオマンコ連呼してる香織さんは可愛かったし、ほらほら早く私を犯しなさいよとノリノリな香織さんも可愛かったし、誘惑しても落ちない拓也にイライラして(狙ったペニスは1本も逃さなかったのに)とギリギリしてる香織さんも可愛かったし、「死ぬほど私を好きになれ…」と呪いのように願う香織さんも可愛かったし、拓也に惹かれつつあるのにプライドが高いから自分では認めたくない香織さんも可愛かったし、いろいろ悪巧みするけど毎回詰めが甘いあたりも可愛かったし、沙耶をレズビアンだと決めつける根拠がめちゃくちゃなあたりも可愛かったし、目的が「松太郎を殺させること」から「自分をレイプさせること」に変わって来る香織さんも可愛かったし、些細なことで欲情して股を濡らす淫乱ぶりには吹いたしでそれはもう面白かったんだけど、素の香織さんの絵がほとんどなかったので私の怒りが有頂天に云々。邪悪な顔をしている香織さんを見れるのがたった一枚の CG で、しかも横顔だけっていうのが物足りない。

でも拓也への自覚のない恋心が見れたのは良かった。そこは香織さんの視点でなければ描写出来なかっただろうし、沙耶はあれだけお人好しな男に出会ったことがなかったからこそ拓也に惹かれ、香織はあれだけ思い通りにならない男に出会ったことがなかったからこそ拓也に惹かれた、という二人の女の対比もいい。あと香織さんは壮絶な人生を送ってきたらしいが、そこは軽く説明されるだけで掘り下げがなかったのも好印象。香織さんに同情したくなるような可哀想なエピソードはいらん。徹頭徹尾、三澤香織という女を悪女として描いてくれたことが素晴らしい。クズなビッチは最高だ。沙耶ルートでは最後は死刑が確定したが、拓也に恋をしたのに男を利用する生き方しかしてこなかったから男はそういうものだという価値観が凝り固まってしまっているのと、香織さん自身のプライドが高すぎて恋をしていることを認めることも出来ず、結局死ぬまで拓也への恋を自覚しないままだったのも良かった。そう考えると哀れな女とも言え……なくもないような?

ところで「媚肉の香織」は実は乙女ゲーのプレイヤーの視点なんじゃないか。拓也を落とすにはここでポイントを稼いでおこうとかこういう返事すれば喜ぶだろうとかこういうことをすれば犯してくれるだろうとか、ベクトルは思いっきり暗黒方面ではあるものの落とすために色々考えてやってるあたりは乙女ゲーと言えなくもないのでは。え、違う?

しかし香織さんが律子や松太郎を角材で殴り殺すのは謎。なんで角材? あれってけっこう派手じゃないですか? 調達だってしなきゃならんのだし。

叶律子 (CV:非公開)

律子はもうちょっと柔らかく忠告していれば拓也も素直に受け入れたんじゃないかなあ。息子の下着泥棒の件で香織さんに千円札をつっ返すシーンは笑った。

叶沙耶 (CV:非公開)

メインヒロインなのに中盤まではあまり出番がなく、最初は印象に残らない同居人でしかなかった。ただプールの付き添いあたりから徐々に出番が増え、乙葉の看病をするシーンを機に一気に魅力が膨れ上がる。キスシーンもすごく綺麗だったし、その時のやり取りも印象に残った。二度目の月夜の下の窓辺での語らいも良かったなあ。言ってることとやってることが逆、てのはツンデレのお約束だけど、沙耶はツンとデレが分かれているのではなく、ツンしかないけどツンこそがデレそのものだという珍しいタイプのツンデレだったのも良かった。終盤のピンチに駆けつけるシーンもかっこよかったし、本当にいい女だった。ただ沙耶は心理描写が殆どなく表情にも出ないタイプだから何を思っているかが分かりづらく、だからこそいい女に見えたのかなあとも。沙耶の内面描写がほとんどないのは意図してのものなんだろうし、沙耶が拓也に惹かれたきっかけもこちらで勝手に想像するしかないが、そういうミステリアスな部分が沙耶をいい女に仕立て上げているというか。まあ見えるだけじゃなく本当に中身もいい女なんだろうし、そう思わせてくれるさじ加減は絶妙だったんじゃないでしょーか。香織さんをどう思っていたのかは気になるし「媚肉の沙耶」も読んでみたかったが、やっぱりこれはなくて良かったとも思える。

最後は妊娠した沙耶とのセックスで終わるが、腹ボテセックスをあまり見たいとは思わない私が珍しくこのエロシーンは気に入った。拓也も沙耶の体を気遣って動くし、沙耶も医師に相談した上で拓也を求めており、家族愛に満ち溢れたいいエロシーンだった。あーあとは亀の水槽を洗うのを手伝うシーンも絵の良さも相俟って強烈に印象に残ってます。

叶隆司 (CV:非公開)

隆司に犯される乙葉、という図は絶対にあると思っていたのでなくて驚いた。多分悪い子ではないんだろう。終盤の輪姦パーティも昭彦の発案ぽい気がするし。

沢木昭彦 (CV:非公開)

スリード要員だったのかもしれないが、私は序盤から香織さんを疑っていたので昭彦は度外視していた。真実暴露要員でもあるが、これはちょっと唐突で微妙。そして昭彦に犯される香織さん、という図もあるだろうと思ってたのでこちらもなくて驚いた。

三澤松太郎 (CV:非公開)

由紀のパンチラへの執着にはドン引きしたが、根っこはスケベなだけの子供なのかもしれない。気持ち悪いおっさんであることに変わりはないけども。しかし殺されるほどのことはしてないはずなので、そう思うと不憫。ほとんどの結末では殺されてるし……。